人工生命の創造主  パラケルスス/世界の超人・怪人・奇人

文=並木伸一郎

パラケルスス 人工生命の創造主

 

ルネサンス初期、人工生命「ホムンクルス」を創造し、不老長寿の秘薬を合成した天才オカルティストがいた。偉大な医師であり、稀代の錬金術師でもあった彼は、自身でつけたパラケルススの通り名で知られた。

 

パラケルススが研究した錬金術は、万能の神の力を理論的に再現しようとする挑戦だった。
パラケルススが研究した錬金術は、万能の神の力を理論的に再現しようとする挑戦だった。

 

医師の道を歩みはじめた青年時代のパラケルススは自尊心が高く、アカデミズムや当時の医学界を率いていたガレノスに対して反逆的な態度を貫いた。「古代ローマ時代の名医ケルススを凌ぐ」という意味でパラケルススを自称するようになるのもこのころからだ。

 

ついにはアカデミズムから追放されたパラケルススは、放浪の身となる。だが自由の身になった彼は、東西ヨーロッパから中東まで遍歴し、各地で新しい知識を吸収しながら、医師として、そして錬金術師としての能力を高めていく。その最大の偉業は、やはり人工生命「ホムンクルス」の創造であろう。パラケルススの処方によれば、男性の精液をレトルトで密封し、生きた馬の子宮の中で40週間育むと、ヒトから生まれた子どもより、少し小さなホムンクルスが生まれるという。実際、彼は自らの精液を用いて、ホムンクルスを生み出すことに成功したというのだ。

 

錬金術師としての彼は、文字通り〝錬金〞を極めたといってもいいかもしれない。彼の思想には父から教授された自然主義が根底にありながらも、抜群の秀才による膨大な知識で上書きされている。そして、新プラトン主義の「四代元素」を系譜にひきながら、世界で起こるすべての現象はさらに根源的な三元素「硫黄」「水銀」「塩」によって生じると考えていた。この理論に則れば、銅や鉛もそこに含まれる三元素のバランスを変えて金や銀を変成できるという。彼はその触媒となる万能の物質「賢者の石」を所持していたともいわれている。

 

パラケルススの著書。魔術的な意匠を取り込み、最上部に自分自身の肖像を描いている。
パラケルススの著書。魔術的な意匠を取り込み、最上部に自分自身の肖像を描いている。

不老長寿の秘薬の合成にも成功したとの伝説も語り継がれているが、彼は1541年にザルツブルクで謎の死を遂げている。

 

(「世界の超人・怪人・奇人」より掲載)

文=並木伸一郎

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