
オーパーツの基礎知識! アンティキティラの歯車
文=並木伸一郎
引き揚げられた沈没船から発見された青銅製の遺物
発見場所=ギリシア、アンティキティラ島沖
- 復元サイズ=縦33センチ、横17センチ、厚さ9センチ
- 材質=青銅
- 製作年代=紀元前80年ごろ
- 推定製作目的=天体観測儀
現存するオーパーツの中で、最もハイクオリティと称されるのが「アンティキティラの歯車」である。
1900年、ギリシアのアンティキティラ島沖で引き揚げられた沈没船から4つの青銅製の塊が発見された。塊は最大のもので縦17センチ、横15センチほどの大きさで、腐食した表面には大小さまざまな歯車状の物体が確認できた。最も大きい歯車は、直径12.7センチ。それらの一部には、古代ギリシア文字で暦に関する記述や星座の名前が刻まれていた。
これらの文字から、この遺物が紀元前80年以上前に古代ギリシア文明によって作られた産物だということが判明した。また発見された場所にちなみ「アンティキティラの歯車」と呼ばれるようになった。
復元された遺物は古代の天体観測儀だった!!
発見されてから70年後の1970年、当時、アメリカのイエール大学で科学史を研究していたデレク・デ・ソーラ・プライス教授が「歯車を調べれば隠された史実が明らかになるかもしれない」と、分析を開始した。
X線で精査すると、遺物は大小40以上もの歯車で構成されていることがわかった。
また、翌1971年、わずか1年の間にプライス教授は、見事にアンティキティラの歯車のメカニズムを完全に復元することに成功したのである。それにより、アンティキティラの歯車が驚くべきメカニズムをもった遺物であることが判明した。
なんと、目盛りを動かすことで、太陽や月、惑星の運行までを算出できる天体観測儀だったのである。実際に月の軌道を計算してみたところ、誤差はわずか100分の1。まさしく古代の精密なコンピューターといっても過言ではない。
だが、アンティキティラの歯車には、大きな謎がある。それは、天文学者ニコラウス・コペルニクスが提唱した「地動説」である。
「地動説」とは、「宇宙の中心は太陽であり、地球は他の惑星とともに太陽の周りを自転しながら公転している」というものだ。
いったいなにが謎なのかというと、コペルニクスが地動説を提唱したのは16世紀。つまり、紀元前80年には、アンティキティラの歯車が体現した技術は存在しないはずなのである。
さらに、アンティキティラの歯車を復元したプライス教授が復元当初から気付いていたことだが、この装置には「差動歯車機構」が使われていたのだ。これは1575年にドイツで開発・実用化されたもので、歯車の組み合わせによって回転数や回転速度が変わるシステムが用いられた天文時計のことである。これも、アンティキティラの製造年代と合わない。
では、いったいアンティキティラの歯車はどこから来たのか? 一説では古代ギリシアの数学者アルキメデスが製作したとも、ギリシア以前の超文明アトランティスの遺物だともいわれているが、現時点では不明のままである。
文=並木伸一郎
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