永遠なる回転運動「スワスティカ」/秘教シンボル事典

文=松田アフラ

回転運動による安定、調和、幸福

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ハーケンクロイツにワイマール共和国から引き継いだ鷲のシンボルを組み合わせた印章「アドラー」。

 

スワスティカ(卍、卐)といえば、一般に日本では寺を示す地図記号、ヨーロッパではナチスのハーケンクロイツ(鉤十字、斜め向きの卐)が連想されるが、実際にはこのシンボルは人類の開闢にまで遡る極めて古いものであり、紀元前1万年に遡ると考えられるマンモスの牙に彫刻された作例が出土している。

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紀元前1万年前の遺物。マンモスの牙に鉤十字が彫られている。

 

この形は軸を中心に回転する運動を象徴化したもので、世界軸(アクシス・ムンディ)を中心とする地球の回転、あるいは北極星を中心とする天球の回転を意味していた。「スワスティカ」という言葉自体はサンスクリット語で「幸あれ」の意味で、吉兆、幸運を表す。

この記号は古代インドから小アジア、ギリシア、日本、果ては北アメリカに到るまで、ほとんど全世界に普遍的に分布している。初期キリスト教徒はこれをキリストの象徴として用いたし、古代北欧人ではトールの槌と同一視された。

このように元来は普遍的な記号であったスワスティカだが、19世紀になると、主として新興の比較民族学の方面からアーリア人の太陽の象徴と見做され、その遍在はアーリア人の移民と影響力の伝播を裏づけるものだとする学説が生まれた。ことに19世紀末以後のドイツでは、この象徴が「ゲルマン精神」を称揚し美化する風潮と結びつき、民族主義的な結社のシンボルとして用いられることとなった。これが後のナチスによるハーケンクロイツの採用に繋がる。

一方、かのブラヴァツキー夫人も、スワスティカを地球の自転を初めとする「調和を保ち、宇宙を安定した永遠の運動の状態に置く」求心的・遠心的な力の象徴であるとして、自らの〈神智学協会〉の印章にこれを採り入れた。神智学の運動がその後の人類の思想史に及ぼした隠然たる影響の大きさは今さらいうまでもないだろう。

当然ながら、神智学協会とナチスとの間には直接的な繋がりはない。だがナチスや神智学協会の事例は、人類の意識の根源にまで遡るような古いシンボルが魔術的意図と知識に基づいて使用されるとき、それが人類の意識の深層にいかに大いなる力を発揮するかを如実に物語っている。

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神智学協会の印章に調和と永続性のシンボルとして鉤十字が採用された。

 

(ムー2015年3月号より)

文=松田アフラ

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