UFOアブダクション・ケース/ヒル夫妻の失われた2時間の記憶 FIle.2

文=並木伸一郎

神経症をもたらした空白の2時間の記憶

1961年9月19日の深夜、ベティ・ヒルとバーニー・ヒルの夫妻がカナダで休暇を終えたその帰り道、国道を車で走行中にUFOと遭遇した。直後、急な脱力感を覚え、そのまま意識を失ってしまった――

ふたりが、ふとわれに返ると、夫バーニーは何事もなかったかのように、車のハンドルを握っていた。妻ベティは助手席で前方の光景を眺めていた。車は単調な音を立てて、ハイウェイを南下している。ただ、光る物体に遭遇して逃げ出したことは覚えていた。バーニーは、”あのままずっと走り続けてきたんだ。何もおかしなことはなかった”と心の中でつぶやいたが、何か腑に落ちないものがあった。それは妻ベティも同様に、だ。

ベティが何気なく道路上の標識に目をやると、「アシュランド」と書いてあった。そこは、光る物体と遭遇した地点から約56キロも南の町なのだ。そのときベティは「ずいぶん走ってきたものね」ぐらいにしか思っていなかった。

家に到着した夫妻は、荷物の整理をしているとき、不可解なことに気づく。長い距離を歩いていたわけでもないのにバーニーの靴底がすり減っており、ベティの服もだれかと争ったかのように引き裂かれていた。また、トランクにはキラキラ光る謎の”シミ”が飛び散っていた。

さらに、自宅までの到着予定時間が2時間も遅れていたのだ。ふたりは、そのわけを考えてみたが、どういうわけか記憶が曖昧で何も思い出せなかったのだ。

毎晩、悪夢に悩まされるヒル夫妻

この事件以来、夫妻は毎晩、悪夢にうなされるようになり、精神的にすっかりまいってしまった。当初は、疲れからくるものだろうと考えていたが、日に日に悪化の一途をたどるばかり。

そこで、ベティはこの原因が、”失われた空白の2時間にある”と考え、その謎を解くべく、UFO研究団体NICAPに連絡したのだ。

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(UFO研究団体NICAPのロゴ)

派遣された調査員は、夫妻の証言を事実だと認めたが、肝心の神経症を治療する手立てはなかった。そして事件から2年後の1963年、ほとんど慢性化した神経症の治療の望みを、ボストンの有名な精神科医ベンジャミン・サイモンに依頼したのであった。

Dr Benjamin Simon

(ヒル夫妻の治療にあたった精神科医ベンジャミン・サイモン)

夫妻に用いられた治療は「催眠治療(逆行催眠)」だ。簡潔にいえば、無意識の底に沈んでいる失われた記憶の”時”をさかのぼって回復させる方法である。

ちなみに、UFO遭遇者に用いられたケースはヒル夫妻が初めてである。

夫妻が記憶をさかのぼったとき、驚くべき事実が明らかになるのだが……。

文=並木伸一郎

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