魔術道士たちの表徴「五芒星」/秘教シンボル事典

文=松田アフラ

人間自身を模した魔道の星

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五芒星のうえに魔術シンボルを加えた図。エリファス・レヴィによるもの。

 

「グノーシス教徒の間で〈煌めく星〉と呼ばれる『五芒星』は、叡智の独裁的偉力の表徴である。要するに魔術道士たちの星であり、〈言〉の具体化した表徴である」--19世紀最大の魔術師、エリファス・レヴィは、『高等魔術の教理と祭儀』において五芒星についてこのように述べている。「五芒星は諸元素に対する精神の支配を表現しており……この印で武装し、適当な準備を整えるならば、諸君の魂の眼に喩えられる能力を介して無限を見極め、天使の軍団と悪魔の隊列を己れに仕えさせることが可能である」

そしてこの言葉の通り、レヴィは1854年7月24日、ロンドンで行なった降霊実験において、この「五芒星」の力を借りて古代の哲学者ティアナのアポロニウスの霊を召喚することに成功した。

「五芒星」とは、一筆書きで描いた五つの角を持つ星形である。現在知られている最初期の使用例としては古代メソポタミアのウル第1王朝の楔形文字による文書がある。またエジプト人はこれを冥界の子宮の象徴としていた。5という数字を神聖視した古代ギリシアのピュタゴラス教団は、この五芒星を肉体と精神の調和を示す聖なる象徴と考えた。

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レオナルド・ダ・ヴィンチの素描「ウィトルウィウス的人体」。古代ローマの建築家ウィトルウィウスの記述に基づき、芸術・信仰と科学・医学の融合をシンボル化した。

 

いずれにせよ、五芒星はその図案そのものが両手両脚を広げて立つ人間の姿そのものであり、隠秘学的象徴を封印したとされるレオナルドの有名な素描「ウィトルウィウス的人体」は、まさしく五芒星の形に手脚を広げた人間の姿を描いている。すなわち五芒星は大宇宙に対する小宇宙たる人間の模型なのだ。

一筆書きで表される星形であることから、五芒星は主として中世ヨーロッパにおいては悪霊に対する防御の印とされた。ゲーテの『ファウスト』第1部でも、五芒星は悪魔を封じ込めるために用いられている。だが奇妙なことに、遙か極東の日本でもまったく同じものが陰陽師・阿倍野晴明に由来する「晴明桔梗」として、やはり魔除けのシンボルとして知られている。

また、以上のような上向きの五芒星が人間を表すのに対して、これを逆転させると五芒星は悪魔の角と耳、それに顎髭の形になり、一転して「悪魔、すなわち知力の顚覆、無秩序あるいは狂気」を表す象徴ともなる。これが同じ魔術的図形でも、上下対称である六芒星との違いだ。

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逆向きの五芒星は悪魔のシンボルとなる。

 

(ムー2015年10月号より)

文=松田アフラ

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