国家転覆を狙う妖狐「九尾の狐」/日本の妖怪

文=宮本幸枝

死してなお凶々しい瘴気を放つ

「九尾の狐(きゅうびのきつね)」は、その名が示すとおり9本の尾を持つ狐のことで、「酒呑童子(しゅてんどうじ) 」と並び最強の悪妖怪のひとつとして数えられている。「玉藻前(たまものまえ)」という名前の美女に化け、日本を滅ぼそうと企てる妖狐として、さまざまな物語に描かれた。

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葛飾北斎『三国妖狐伝 第一斑足王ごてんのだん』 。

 

インドや中国で、美女に化けて時の権力者に近づいては国を滅亡に導いてきた九尾の狐は、8世紀ごろ唐から日本に渡ってきた。その後、美少女に化けて「玉藻前」という名前で鳥羽天皇に仕え、寵愛を受けるようになる。

しかし玉藻前が仕えてからというもの、鳥羽天皇は病がちになり、医者にもその原因がわからなかった。そこで、陰陽師である安倍泰成が占ったところ、鳥羽天皇の病は玉藻前の妖力によるものと判明。正体を暴かれた玉藻前は、狐の本性を現し、東国・那須野へと逃亡する。

朝廷は討伐軍を編成し、九尾の狐退治に向かう。安倍泰成の祈禱によるサポートのかいもあって、ようやく人々を恐れさせた妖狐は絶命した。しかし、その怨念は自らの屍を、毒ガスを吹き出す大きな石へと変化させた。その後、かなづちの別名“げんのう”の由来となった会津の玄翁(げんのう)和尚が、杖で石を叩き割ると、ようやく九尾の狐は成仏し、災いをなすこともなくなったという。この石こそが、今も残る「殺生石」であるといわれている。

(「日本の妖怪FILE」より掲載)

文=宮本幸枝

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