見ただけで恐ろしいことが起こる「輪入道」/日本の妖怪

文=宮本幸枝

何気ない好奇心が災いを呼ぶ

「輪入道(わにゅうどう)」「片輪車(かたわぐるま)」は、その姿を見ただけで命を奪われることもあるという不吉な妖怪である。

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昔、京都の東洞院(ひがしのとういん)通りで、車輪の化け物が現れるという噂があった。ある好奇心旺盛な女がこれを見たいと思い、格子戸から外をのぞいていると、夜半すぎにごろごろと牛車の車輪ひとつだけが転がってくるのが見えた。

よく見ると、車輪の真ん中に人の顔があり、引きちぎれた人間の脚をぶら下げている。その顔は、驚きすくんでいる女に気づくと「われを見るより汝の子を見よ」といった。

女は慌てて家の中に戻り、自分の子どもが寝ているところに駆け寄ると、なんと子どもの片脚がちぎれてなくなっていた。あの車輪がぶら下げていたのは、自分の子どもの脚だったのである。女は嘆き悲しんだが、子どもの脚はもうもとには戻らなかったという。

また、近江国(おうみのくに/現在の滋賀県)のある村に、夜な夜な火に包まれた片方しか車輪のない車が現れ、村を徘徊していた。車には女が乗っており、これを見るだけでなく、噂をするだけでも祟りがあるといって、人々から恐れられていた。

ある女がこっそり戸を開けてのぞいていたところ、車輪の化け物は京都と同様に「われを見るより汝の子を見よ」という。はっと気づいた女が家の中を振り返ると、そこにいたはずの子どもがいなくなっていた。

しかし翌日、女が子どもを失った悔恨の情を歌に綴り家の戸に貼りつけておくと、子どもは無事戻ってきたという。以後、この村には片輪車は現れなかったと伝えられる。

 

(「日本の妖怪FILE」より掲載)

文=宮本幸枝

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