伸びて広がる! 狸の八畳敷「豆狸」/日本の妖怪

文=宮本幸枝

豪華な座敷の正体とは

「豆狸(まめだぬき)」は、おもに酒蔵に棲み、小さな悪戯をする狸の妖怪である。『絵本百物語(えほんひゃくものがたり)』に登場する豆狸は、子犬くらいの大きさでたいそう賢いといわれた。

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江戸時代、元禄のころ、魯山(ろざん)という俳諧師が行脚に出た際、日向国(ひゅうがのくに/現在の宮崎県)高千穂というところで、風雅な人物に出会った。その人は魯山を家に泊まるように誘い、さまざまなもてなしの後に、ふたりで連句を巻くことになった。通された座敷が八畳だったので、魯山はそれにちなんだ発句を詠み、相手も気の効いた句をつないでいった。

しかし、夢中になっていた魯山がうっかり座敷に煙草の火を落としてしまう。すると突然、魯山はひっくり返って地面に投げ出され、気づくと家がすっかり消えて、あたりは野原となっていた。

不思議に思い、里の人にそのことを話すと、「それは豆狸のしわざだ」という。魯山が出会ったのは豆狸が化けたもので、座敷だと思っていたのは、豆狸の伸ばした陰嚢(いんのう)だったのだ。

この伝説にあるように、狸の陰嚢は「八畳敷(はちじょうじき)」といわれ、非常に大きく、またよく伸びるといわれていた。なぜ八畳もの広さを持つといわれるようになったかについては諸説ある。

その中の代表的なものが、金細工に関するものだ。江戸時代、金を薄く伸ばして金箔を作る際に、狸の陰嚢に金を包んで叩くとよく広がった。そこから狸の陰嚢はどこまでも伸びて広がるという俗説が生まれたといわれている。

 

(「日本の妖怪FILE」より掲載)

文=宮本幸枝

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