一陣の風に潜む鋭い刃「かまいたち」/日本の妖怪

文=宮本幸枝

傷があるのに血は出ない

突然、風がサッと吹いたかと思うと、鋭い刃物で切られたような傷口ができている。この奇妙な現象は「かまいたち」のしわざであるといわれた。かまいたちの伝承は、中部地方を中心に各地で伝えられている。

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岐阜県飛騨地方に伝わるかまいたちは、3人組の神であるといわれる。その役割分担は、最初の神が人を転ばせ、2番目の神が鋭い刃物で切りつける。そして、3番目の神が、傷薬をつけて去るのだという。突風が吹いた一瞬のうちに行われる3人の素早い連携プ

レーにより、傷口はあっても、痛みがなく血も出ないという、かまいたち独特の切り傷ができると考えられた。

このように、切ったあとでわざわざ薬をつけてくれる親切なかまいたちのほかにも、人の生き血を吸うものや、風すら吹かないもの、後日、切られたところが激しく痛んで死にいたるものなど、さまざまなケースがあるようだ。あるところでは、「暦を踏むとかま

いたちに遭う」という俗信があり、古くなった暦を黒焼きにしたものをかまいたちの傷の特効薬としていたらしい。

また、かまいたち現象は鬼神の刃にたまたま当たってしまったことによるものと考えられ、「構え太刀」が変化して「かまいたち」となったという伝承もある。

ところで、江戸時代の妖怪図鑑『画図百鬼夜行(がずひゃっきやこう)』で紹介されているかまいたちには、「窮奇(きゅうき)」という字があてられている。「窮奇」とは、中国の神話に登場する怪物の名前である。古代中国の地理書『山海経(せんがいきょう)』によると、窮奇はハリネズミのような毛を持つ牛の姿で、人を食う悪神であると伝えられている。

 

(「日本の妖怪FILE」より掲載)

文=宮本幸枝

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