ムー民の恐怖体験30余年分を怪談師・吉田悠軌が選定・解説! 「ムー実話怪談『恐』選集」

文=吉田悠軌

おそるべき厚みに触れて

 

あなたは月刊「ムー」を読んだことはあるだろうか。たとえそれが10年前、20年前でも、あるいはつい昨日だったにせよ、絶対にこの連載が目に入っていたはずだ。劇画タッチのイラストに、読者投稿による「ミステリー体験談」=怪談を載せたページである。

「ムー」という雑誌の世間一般的イメージは、UFOやUMA、超古代文明などのオカルト・トピックスになるだろうが、その中で「怪談の投稿」は少し毛色が異なっているようにも見える。しかしこのページこそが、誌上最古クラスの長寿連載でもあるのだ。

1979年10月の「ムー」創刊から2年2か月後、1982年1月号よりはじまった「あなたの怪奇ミステリー体験」(当初タイトルは「わたしのミステリー体験」)。この長い歴史は、驚くべきことにたったひとりのライター「T氏」の手によって紡がれている。

35年以上にわたって読者からの「ミステリー体験談」を選んでいった彼は、「怪談界」全体を見渡しても現役・最長老と呼んでさしつかえないだろう。

怪談の帝王・稲川淳二が「生き人形」を発表したのが1986年。初の怪談アルバム(カセットテープ)「秋の夜長のこわ〜いお話」発売が1987年。

そして90年代を過ぎたあたりから、『新耳袋』『「超」怖い話』の書き手たちによって「実話怪談」ムーブメントが巻き起こっていく。そこから影響を受けた実話怪談チルドレンたちが2000年代半ばよりポツポツと現れはじめ、2010年代に入ると芸人やアイドルたちの一芸としても「実話怪談」は広く受け入れられていく……。

そんな現代怪談史よりも前に始まり、いまだ継続しているのが「あなたの怪奇ミステリー体験」なのだ。

ホラー小説などの創作作品とは別の、リアルな怪異体験談を「実話怪談」と呼ぶようになる以前から、ムー編集部とT氏のもとに集まっていった「ミステリー体験談」の数々。それら膨大な投稿の採用作品をチェックし、私が特にいま紹介したい怪談を選抜したのが本書である。

時代ごとに変わる怪談のカラーを眺めるのもよし、あるいはどの世代でも変わらない「恐怖の核」を読み取るもよし。またはT氏がどのような基準で選んだのかに思いを馳せてみたり……。

もちろん「ミステリー本・怪談本」として純粋に楽しんでもらいたくもあるが、せっかく長大な時間をかけて集められた体験談なのだから、普通の実話怪談集とはまた別の視点で注目してみてはいかがだろうか。巻末には選者からの読みどころも添えたので、読後にお楽しみいただければ幸いだ。

さらに、怪談界の知られざる最長老、T氏へのインタビューも収録させてもらっている。あまり表に出る人物ではないが、本書刊行にあたり特別に出演してもらった次第だ。貴重な証言をぜひともチェックしていただきたい。

 

20180719kd
(「ムー実話怪談『恐』選集」より)
(「ムー実話怪談『恐』選集」より)
(「ムー実話怪談『恐』選集」より)
(「ムー実話怪談『恐』選集」より)
(「ムー実話怪談『恐』選集」より)

文=吉田悠軌

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価格:900円+税
発行:学研プラス
発売:2018/07/31

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