正体は化石人類か!?  小人獣人UMAエブゴゴの謎

文=権藤正勝

フローレス島の獣人エブゴゴ

インドネシアの東に位置する小スンダ列島の島のひとつ、フローレス島。ここには“エブゴゴ”と呼ばれる毛深い小さな人々の伝説が遙か昔から伝えられている。エブゴゴは、オランダ人が入植しはじめた19世紀ごろまで頻繁に姿を現していたという。だが100年ぐらい前を境に、ほとんど目撃されることがなくなったらしい。

ホモ・フローレシエンシスの模型。
ホモ・フローレシエンシスの模型。

エブゴゴとは、現地の言葉で「食いしん坊のおばあちゃん」という意味だ。名前が示す通り、エブゴゴは雑食性で、なんでも生で食べてしまうらしい。全身を長い毛で覆われていて、突き出た耳と長い手と指を持っている。出っ張った太鼓腹と、成体でも身長は1メートル程度しかないことが特徴である。

また、エブゴゴは完全な二足歩行であるが、よろよろとした歩きかたをするらしい。メスは、極端に垂れ下がった乳房を持っているそうだ。おそらく、この歩きかたが高齢の人に見え、さらにメスの目撃が多かったため、エブゴゴ=食いしん坊のおばあちゃんと呼ばれたのだろう。

さらに驚くべきことに、エブゴゴは独自のぶつぶつと囁くような言葉を使い、人間の言葉をオウムのように真似て発音することができるという。

エブゴゴは時折、村人の作物を盗んでいたようだが、特に村人との間で大きな問題起こすことはなかったらしい。だがあるとき、エブゴゴが村人の赤ちゃんを食べる目的で誘拐したことで状況は一変した。

憤慨した村人に追われたエブゴゴは、誘拐した赤ちゃんを連れたまま火山の麓にある洞窟に追い詰められた。そこで村人が、エブゴゴに食べ物の干草と交換に赤ちゃんを返すように交渉したところ、条件を受け入れたという。交渉できたということは、エブゴゴは人の言葉が理解できるほど知能が高かったということだろう。

数日後、火をつけた干草の束が村人により洞窟に投げ入れられた。驚いたエブゴゴは、洞窟から飛び出し、一目散に西の方に逃げていったという。

この話には、少々内容の異なるものがいくつか存在するが、以上の話が地元で広く知られている伝説だそうだ。エブゴゴの伝説は、長い間、架空のものとされてきた。ところが、フローレス島での驚くべき発見によって、エブゴゴが単なる伝説上の存在ではない可能性が出てきたのだ。

 

洞窟で発見された小型の化石人骨

2003年9月、フローレス島の西部、海抜500メートルのリアン・ブア洞窟で人類史を塗り替える化石人骨が発掘された。これは、オーストラリアとインドネシアの合同調査団が発見したもので、さらに翌2004年に、その化石が新種の人類であることが発表されたのだ。

化石人類が発見されたリアン・ブア洞窟。
化石人類が発見されたリアン・ブア洞窟。

発見された骨は、1体分の女性と思われる全身骨格と、別の個体の歯や骨の断片で、合計で7体分におよぶという。また2005年には、同じ洞窟で2003年に発見された7体の個体のうちの1体の一部と思われる腕の骨と下顎骨が見つかっている。

当初、発見された女性が生きていたのは約1万8000年前で、最も新しい骨は約1万3000年前の物と鑑定された。が、その後、年代はもう少し古い可能性が出てきている。

発見者のひとりでオーストラリアの人類学者ピーター・ブラウン博士によると、マスタードの種を使って測定された脳容量は現代人の3分の1以下の380ミリリットルしかなく、大きさはグレープフルーツほどである。

さらに、特徴的なのは身長がわずか1メートルほどなのだ。当初、何らかの異常を持つ個体ではないかとも考えられたが、複数の個体が存在したことにより、現代人とは異なる独自の種である事実が確認された。

このヒト属の新しい種には「ホモ・フローレシエンシス」という学名がつけられた。トールキン原作の映画『ロード・オブ・ザ・リング』に登場した小人のホビット族にちなみ、「ホビット」の愛称で呼ばれている。

1メートルほどしかない身長もさることながら、驚きなのは380ミリリットルという脳の容量である。これはチンパンジーとほぼ同じ大きさである。ヒトの系統でいえば、類人猿から分かれた直後の猿人アウストラロピテクス類のうち、確認されている最も小さな脳の値と同じである。

ホビットは、小さな脳でしっかりとヒトとしての知能を備えていた。それは化石とともに発見された石器類や生活の痕跡がそれを裏づけている。

ホモ・フローレシエンシス(左)と現生人類(右)の頭骨の比較。
ホモ・フローレシエンシス(左)と現生人類(右)の頭骨の比較。

 

エブゴゴはホビットの生き残り

そのホビットだが、当初の分析では、約1万2000年前にフローレス島で起こった、大規模な火山爆発で絶滅したと考えられていた。しかし、絶滅時期はもっと古いとする説も出てきている。いずれにしろ、すでに絶滅したというのが学者による通説である。

――だが、発見されたホビットの特徴は、まさにフローレス島の伝説の獣人「エブゴゴ」と完全に一致する。

エブゴゴの伝説を知る者にとって、ホビットの発見はエブゴゴの存在を裏づける確たる証拠と思われたのだ。発見にかかわった学者の中にも、ホビットとエブゴゴの伝説の間には、何らかの繋がりがあるのではないかと考えている者もいる。

ホビットの絶滅年代は1万2000年前~4万年前まで、研究者により非常に幅があるが、確実なのは、一時期、現生人類とも共存していたという事実である。このことから、たとえホビットが絶滅したとしても、ホビットと遭遇した遠い祖先の記憶が、社会のなかにエブゴゴの伝説という形で残されたと考えるものも多い。

だが、エブゴゴ伝説が過去の記憶だとしたら、少なくとも1万年以上前の記憶である。だとすれば、あまりにもエブゴゴの描写が鮮明すぎないだろうか? 少なくとも最近まで、生き残っていたと考えるほうが自然である。

 

オラン・ペンデクとエブゴゴ

エブゴゴの伝説はフローレス島に限定されたものだが、インドネシアのスマトラ島には、獣人オラン・ペンデクの存在が囁かれている。

オラン・ペンデクの目撃スケッチ。
オラン・ペンデクの目撃スケッチ。

オラン・ペンデクとは、現地の言葉で「背の低い人」を意味する。オランウータン(森の人)とともに、古くから森に生息している動物とされていた。オラン・ペンデクの目撃例は、マルコ・ポーロによる記録まで遡れるという。1917年にオランダ人の博物学者エドワルド・ヤコブソンによって書かれたものが最初の記録とされるが、1923年にオランダ人のヴァン・ヘルワルデンが残した手記が詳しい。

目撃例を総合するとオラン・ペンデクは、身長1~1.5メートル、額は猿よりも高く、耳が突き出ているという。そして特徴的なのは、腹部が大きく樽のような体形をしているらしい。また、身長は低いが決して華奢な体格ではなく、頭部からはタテガミのような髪が伸び、全身を茶色かダークグレーの毛が覆っている。タテガミは褐色か渋い黄色をしていることもある。

出っ張ったお腹、低身長、全身を毛で覆われた二足歩行のヒトに似た生物、オラン・ペンデクとエブゴゴは、同種の生き物である可能性が非常に高いといえるだろう。そして、この場所で、これらの生物と特徴が一致する新種の人類「ホビット」の化石が発見されたのである。偶然の一致にしては、あまりにもできすぎている。

インドネシアに小さな獣人が存在する可能性は非常に高いことは、間違いない。学術調査も頻繁に行われるようになってきた。インドネシアから世紀の大発見の一報が伝わる日も、そう遠くはないだろう。

 

(「ムー」2017年3月号より抜粋)

文=権藤正勝

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