恐怖! オーストラリアに伝わる怪獣UMAバランジョルとバニップ

文=南山宏

絶滅生物の生き残りが人間を襲う!?

オーストラリア大陸の広大なアウトバック(内陸の半砂漠)地帯の一画を占める北部準州には、先住民アボリジニの時代から、彼らが“バランジョル”と呼ぶ伝説の巨大怪獣が棲息するといわれている。

太い首が支える大頭に鋭い鋸歯が並ぶ強力な大顎、役に立たなそうな貧弱な前足、対照的に太くて頑丈な後脚、長くて強力そうな尻尾と、目撃される姿は中生代白亜紀のティラノサウルスかメガラプトル、あるいは先行ジュラ紀のアロサウルスそのままだ。

アボリジニが残したバランジョルの線描画。
アボリジニが残したバランジョルの線描画。

紀元前のアボリジニも岩絵に残したこの伝説怪獣バランジョルは、時代をはるか下って、16世紀以降にヨーロッパから進出した白人植民者たちも、10年から数十年おきに目撃しつづけてきた。

1984年には、当地で爬虫類的な3本指の巨大な足痕が発見され、地元在住のベテラン古生物研究家レックス・ギルロイ氏が、証拠として石膏足型を採っている。

翌1985年には、4輪駆動車で観光旅行中のオーストラリア人家族が、ローパー川付近で2足歩行している“恐竜”を目撃して震え上がり、早々にUターンして退散した。一家の主グレッグ・アスキー氏はこう証言する。

「怪物はグレーがかった茶褐色で、見るからに恐竜の、それも恐竜図鑑なんかでよく見るティラノサウルスみたいな印象だったね」

しかし、同じオーストラリア大陸で大昔から恐れられてきた別の伝説怪獣で、やはりアボリジニの時代から目撃例が絶えない“バニップ”のほうは、その形状の基本的特徴が、恐竜図鑑の類いに登場する恐竜類にはどうもうまく当てはまらない。

頭は硬いクチバシの鳥型、あるいは大きな2本牙の生えた馬面ないしカバ面という両説がある。胴体はびっしりと鱗あるいは長毛に覆われていて、後ろ足で立って2足歩行する。乾期は地中の穴に身を潜め、雨期になると出現または増水する河川や湖沼から這いでてくるや、人間を襲って貪り喰うという。

バニップの想像図。
バニップの想像図。

だが、近寄りすぎた目撃者は食い殺されてしまうため、その姿を確実に知る者はいないというのだ。そのせいかバニップの姿は恐竜でもなく哺乳類でもないきわめて異様な姿をした怪獣と報じられる。まさに凶獣UMAと呼ぶにふさわしい。

ちなみにバニップは「ブウ」とか「バウ」とか響く吠え声が起原で、アボリジニ語では“悪魔”とか“悪霊”を意味するという。非常に獰猛な生き物で、獲物の人間に音もなく忍び寄るや、凄まじい咆哮を浴びせて立ち竦ませ、襲いかかって貪り喰らうとされる。

もっともそれとは真逆に、バニップは臆病な怪獣で人間を見かけるとすぐ隠れるという目撃談もある。この説をとる研究者は、オーストラリアに現存する草食性有袋類ウォンバットの祖先で、重量2トンと図体はでかいが性質は温和な、6000年前まで生存したディプロトドンが正体だと主張している。

ひょっとするとバニップとは、得体のしれない未知の巨獣に出くわしたとき、人が否応なく感じる強烈な恐怖心から膨れ上がった、妄想の産物にすぎない怪獣UMAの一例なのかもしれない。

 

(「ムー」2017年7月号より抜粋)

文=南山宏

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