「オールド・ハグ」/外国人の実話怪談 episode09

文=MASK校長

老婆がのこした、やけどのような跡

< アメリカ・カリフォルニア州 > メアリーさん(仮名)・アメリカ人女性20代

「鬼婆(おにばば)」が出てくる昔話を聞いたことがあるだろうか。山奥で道に迷った若者の男が一軒家を見付け、助かったとばかりにその家の主をたずねるとやさしそうな老婆が出てきて快く泊めてくれる。夜寝ていると、老婆が寝ているはずの別室からシャーッ‥‥シャーッ‥という包丁を研ぐ音が聞こえてくる。何をしているのかとこっそり覗いてみると、そこには鬼の形相をした老婆がいたというような話である。

筆者がメアリー(仮名)から聞いた話は何に近い話かと先に聞かれたら「鬼婆」と答えてしまうだろう。しかしよく分からない部分も多く、いくつもの謎が残るエピソードである。

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これはメアリーが姉と一緒に住んでいたときの話だ。メアリーの姉には霊感があるらしく、さまざまな不思議な体験をするたびにメアリーに話していた。ある日、メアリーはいつにも増して怯えた表情の姉を目にする。どうしたのか聞くと、姉は窓の外に 『An old hag』 を見たのだという。

オールド・ハグだって? なんだろうと思い筆者はキーワードで検索してみたが、怪しげな画像がいろいろ出てきたのである。要するに魔女とか鬼婆とかそんなようなものだと思う。

メアリーは常日頃から姉の心霊体験を聞いてはいたが、その「オールド・ハグ(醜い老婆)」の話を姉から聞いた時はあまりにとっぴな内容で信じなかったらしい。超常現象の類の話では自分が体験していないことはなかなか理解し難いものだ。ましてや、その内容がとっぴであればあるほど疑ってしまう。これは霊感がある者同士でもそうなのである。

「気持ちの悪い老婆が窓から覗いてたって…老婆に見えたなら、幽霊じゃないんじゃないの?」

あの老婆は人間じゃなかったと姉はいうのだが、メアリーにはそれが信じられなかった。しかし後日、メアリー自身にもとても奇妙な事が起こるのだった…。

姉が窓の外に老婆を見てから数日後の夜、メアリーはなかなか寝付けずにいた。同居している姉の部屋に行く。姉の名を呼びながら姉の部屋へ近づいていく。

メアリーはその日の夜について「いつも通りだった」という。

この「いつも通りだった」という表現をしたのは前触れらしき兆候が無かったといいたかったのかもしれないが、しかしその一方で、常に誰かの視線を感じていたとも語っている。視線は姉だと思っていたらしい。いずれにせよ視線がいつになく気になっていたということは、筆者の感覚で言えばそれが若干の前触れや兆候のようにも感じる。

メアリーは姉の部屋に着いた。しかしそこに姉の姿はなかった。その代わりに姉の赤ちゃんがベッドに寝ていたそうだ。

姉はどこに行ったのだろう?

仕方なくメアリーは再び自分の部屋に戻る。ベッドに横になり寝ようとするが、やはりなかなか寝付けない。すると窓ガラスに何かが当たる音が聞こえてくる。

 

コツン…コツ、コツ……コン、コン……

「窓に何か当たってる。外の木が風で揺れて窓に触れているのかな……?」

少し風がある夜だった。窓に何かが当たる音は続く。

コンコン……コッ……コンコンッ……コツ、コツ…

 

その音はしばらく続き、メアリーはついにイライラして何の音か確認しようとベッドから出ようとする。

ベッドから出ようと起き上がった瞬間だった。窓の方から、老婆のようなかすれ声まじりの、大きな大きな笑い声がしたそうである。窓ガラスに木か何かが当たって鳴っていた音だと思っていたメアリーは一瞬で凍りついた。その奇妙な笑い声の主はメアリーの注意を引こうと窓をずっと叩いていたのである。

メアリーはベッドからまさに出ようとしていたが、出るに出られず再びベッドで横になりゆっくり窓の方を見た。すると何かがサッと横切るのが見えたそうである。

たしかに何かがいた。

あまりの怖さにベッドでうずくまっていると彼女はそのまま眠りに落ちてしまうのだった。

その夜、彼女は悪夢を見る。顔の歪んだ気持ちの悪い老婆が彼女の身体の上に直に座り、笑いながら見下ろしている。やがて夜明けが訪れ、夢はそこで途絶えた。目が覚めて安堵の息も漏らすメアリー。昨日の悪夢は一体何だったのか。とにかく夢で良かった。

しかしそう思ったのもつかの間であった。彼女の体にはある異変が起こっていたのである。ベッドで身体を起こしたメアリーは腹部に痛みを感じた。見ると、焼け跡のようなアザが出来ていたという。

 

「朝起きると焼け跡のようなものが私のおなかにあったの。老婆が夢の中で座っていたところだった」

(原文:When I woke up in the morning, I found that I had what looked like a burn mark on my stomach from where she sat on me. )

 

以来、メアリーはその部屋で二度と寝ることはなかった。

メアリーから聞いたこのエピソードは、まるで「エルム街の悪夢」で登場するフレディのような恐ろしさを感じさせる内容である。フレディは現実世界と夢世界を連動して行き来し、彼が夢の中で与えたダメージは夢が覚めても残るという話である。

現実で見かけた霊が夢の中にも登場する話は多々あるが、夢の中での結果を現実世界にも反映させるという心霊現象はなかなか信じ難い。これこそ、前ページで述べた「自分が経験していないことは理解し難い」なのである。

もしかすると彼女が眠っているときに悪霊かデーモンか何かのその老婆が乗っかり火傷を負わせ、さらに併行してそのような夢を見せたのかもしれない。しかし所詮仮説の域を出ないのである。

この世と似た世界。

そんな世界がいくつも併行して同時進行しており、何かの拍子で入り込んでしまった。

そんなことが実際に起こり得ると思う人はいるだろうか? メアリーのような話は実は他の方からも筆者の元に寄稿されている。それは本シリーズの最後のエピソードで紹介しようと思う。

文=MASK校長

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