火山噴火をもたらす神仕組みを解く!「スサノオ・ライン」と活断層

文=多田克己

黄泉国の伊邪那美と火山

伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)の2柱の創造神は、日本列島を創成し、万物の神々を誕生させた。

ところが、伊邪那美は火の神・迦具土(かぐつち)を産むと、女陰を焼いて死んでしまった。伊邪那岐は伊邪那美に会いたい思いを抑えることができず、死者が住む黄泉国(よもつくに)を訪れる。そこで醜い死者となった伊邪那美の姿を見て逃げ帰り、黄泉平良坂を大きな石で塞ぎ封印したという。

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伊邪那岐が大きな石で塞いで封印したとされる黄泉平良坂。
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島根県東出雲町の揖夜神社。

『古事記』によると、この世と死者の国の境である黄泉平良坂は、出雲国東部にある伊賦夜坂だとされる。現在の島根県東出雲町の揖夜神社周辺だ。

また、死んだ伊邪那岐が葬られたとされる比婆山久米神社が、安来市伯太町横屋にある。山陰道・安来ICから県道9号線を南下して約15分の、ひっそりと山間部に立つ神社である。

神道で死者の国は「黄泉」とされるが、黄泉とは硫黄泉のことだ。火山地帯に特有の、熱水とともに噴出した硫黄が結晶化するような温泉地でもある。

硫黄水素ガスは強い腐卵臭を漂わせ、屍体が放つ悪臭を連想させる。また強力な有毒ガスで、草木を枯らせ、鳥獣や虫の棲息を許さず、その殺風景な様子はまさに死者の国を彷彿とさせる。

山岳仏教でもそのような場所を「○○地獄」と呼称し、死者の霊が集まる聖地とされている。

出雲国の東部地方には活火山は存在しないが、じつに出雲国の4分の1ほどは火山に由来する火山岩層から成る。伊賦夜坂(黄泉平良坂)に比定される揖夜神社の境内は、下部中新統火山岩類・砕屑岩類、つまりは中新世(約1400万~500万年前)前期の火山岩層上にある。

また伊邪那岐を葬ったとされる比婆山久米神社の境内も、鮮新~更新統(約500万~1万年前)の火山岩層の上なのだ。

出雲国東部にある主要な山々が、じつは休火山であることはあまり知られていない。松江市内だけに限定しても多数ある。東から高尾山、大根島、嵩山、天狗山、八雲山などがそれだ。

天狗山は出雲国一ノ宮・熊野大社の御神体山である。さらにほぼ出雲国全域に相当する各地に、広瀬(安来市)、八雲及び玉造(松江市)、湯の川及び華蔵(出雲市)、湯村(雲南市)などの温泉が点在する。火山帯で地熱が高いからだ。

伊邪那美は伊邪那岐とともに、日本列島を形成する本州、四国、九州、さらに他の島々を産むが、火神・迦具土の出産による火傷がもとで死んでしまう。このとき瀕死の伊邪那美が垂れ流した糞は土神となり、尿は水神に、吐瀉物は金属の神となった。迦具土の誕生と伊邪那美の死の場面は、「火」がキーワードになっている。これは、火山噴火及び死火山地帯の豊饒を物語っているのではないだろうか。

火傷で伊邪那美を死なせた迦具土を、伊邪那岐は剣で斬り殺した。すると迦具土の亡骸から8柱の山の神が誕生した。火神の体から山の神が生まれたことからも、やはり火山にまつわる神話なのだろう。

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(「ムー」11月号特別企画「『スサノオ・ライン』と活断層」より抜粋)

文=多田克己

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