未来人ジョン・タイターは複数いる!? 分岐する世界線と世界大戦の危機

文=冨山詩曜

未来からやってきた男

2000年10 月のことだ。アメリカの超常現象関連チャットに「TimeTravel_0」というハンドル名の人物が現れた。

「名前はジョン・タイター。フロリダ

出身のタイム・トラベラーで、2036年から来た」

彼は、そう自己紹介を始めた。もちろんチャット参加者は、信じなかった。だがチャットを繰り返していくうちに、ジョン・タイターの言葉は次第に重みを増していったのだ。

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2000年10月14日のチャット画面。

20 世紀の終わり、「コンピューター2000年問題」(以下「2000年問題」)が話題になったことをご記憶だろうか。プログラミングの問題で、西暦2000年になった瞬間、世界中のコンピューターが誤作動したり、止まってしまったりするかもしれない、というあれだ。

「われわれの暮らすこの世界」では、幸いにもプログラムの事前修正がうまくいき、混乱はほとんどなかった。だが、ジョン・タイターの世界ではかなりの混乱が生じたという。

実は同様に、コンピューターの世界ではこれからも、「2038年問題」が控えている。Unix時間のシステムを使った古いコンピューターは、2038年になるとそれ以上、時を刻めなくなり、正常に動作しなくなるというのだ。そのためわれわれの世界では、現在着々と問題を回避する方法ができあがりつつある。

ところがジョン・タイターの世界では、期限が目前に迫りながら準備が不十分なのだという。しかも、危機を回避するためには、過去の一時期にしか存在しなかった特殊なコンピューターが必要だというのだ。

それが1975年に現れたコンピューターの「IBM5100」だ。

「IBM5100」は、一般に広まっているコンピューター言語より、さらに古い言語で組まれたプログラムまで解読できる「隠し機能」を持っている。ジョン・タイターが必要としたのは、まさにこの機能だった。

IBM社はこの「隠し機能」について、正式コメントを避けている。しかし、2004年に同社の元技術者ボブ・デュービッケがインタビューを受けた際、彼がこの機能の開発に関わっていて、IBMは他社がそれを使うのを恐れて隠したということを認めたのである。かくしてこのインタビューにより、ジョン・タイターの話の信憑性は増すことになったわけである。

ジョン・タイターはいくつかの近未来予言を残し、2001年3月になると、「予定の任務を完了した」という言葉を残して、ネットから消えたのだ。

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ジョン・タイターの話と資料を元に出願された、タイムマシンの特許書類。現代の技術では実現不可能な部分があるために却下された。

 

ふたりめのジョン・タイター

以上が一般的なジョン・タイター像である。だが、これだけではまだ不十分な情報といわざると得ない。書き込みはその数年後にも現れているし、なんと「ふたりめのジョン・タイター」も存在するからだ。

ジョン・タイターによれば、彼が来た時空とわれわれが生きている時空とでは、世界線が若干異なるのだという。逆にいえば、まったく同じ世界線へのタイムトラベルは、彼らの技術ではまだ不可能だというのだ。

ジョン・タイターのタイムマシンでは、あまり遠い過去に行ってしまうと、現在自分がいる世界線と行き先の世界線との差が大きくなりすぎる。そのため安全にタイムトラベルができるのは、60 年くらいだそうだ。

とても近い世界線では、同じような人たちが同じような生活をしているが、世界線が離れれば離れるほど、同じ人であっても違う人生を歩んでいるのである。

世界線が非常に近ければ、ほぼ同じ行動をする自分がいる。だから、別の世界線からわれわれの世界に来た別のジョン・タイターがいても不思議はない。いや、そのなかのひとり、あるいは複数が、同じ世界線にたまたま到着してしまう可能性だってある。

 

ジョン・タイターを捜す男

ジョン・タイターがふたりいるのではないか、という疑惑はかなり前からあった。彼の書き込みに、辻褄が合わないことがときどき見られたからだ。

たとえば、基本的な勉強は自宅で教えられていたという書き込みがある一方で、フロリダ大学で学んだという書き込みがあったり、合衆国で内乱が起こったときには身を潜めていたといったかと思うと、別のときには戦ったといったりしている。肝心の「IBM5100」に関してでさえ、あるときは「IBM5110」を取りにきた、と書いている。

これ以外にもいくつか整合性のとれない複数の発言があり、一部の人々はこれを、ジョン・タイターがふたりいる可能性を示すものとして考えていた。

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「IBM5100」は、IBMが市場に初めて投入したデスクトップコンピュータだ(写真=Sandstein)。

いや、それどころか、一般に知られているジョン・タイターとは異なる、もうひとりのタイターを捜しに、未来から来たと思われる人物さえいる。

2003年11 月9日のことだ。

「Curious Cosmos」というフォーラムに「timeline_39と」名乗る人物が書き込みを始めた。内容を訳すとこんな感じになる。

「ジョン、チャーリーだ。こんな形で連絡することになってすまない。でも、君とどうしてもコンタクトが取れず、疲れはてたんだ。それと、君がまだこの世界線にいることを、こんな形で公開して本当にすまない。緊急でなければ、君の生活を脅かす気はなかった」

その後、「timeline_39」は次第に自分の素性を明かしはじめた。彼は「チャーリー・ライオネス・へイネス」という名前で、2039年からジョン・タイターを捜しにきたという。そう、チャーリーの世界線では、ジョン・タイターは帰還していなかったのだ。

ジョン・タイターは2003年12 月23 日に、ウィスコンシン州バーネット郡でチャーリーに救出される。チャーリーはその際、地元の人たちに気づかれたと書いているが、調べてみるとその日、今まで見たことのないUFOが目撃されたという記録がウィスコンシン州バーネット郡にあった。

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ジョン・タイターが乗ってきたタイムマシンのシステム概要図(ⓒJohn Titor Foundation, Inc.)。

チャーリーは、救出されたジョン・タイターの精神状態がおかしくなっていたと述べている。そのため、救出後のジョン・タイターは、チャーリーの世界線で初めてかつ唯一の、タイムトラベルによる精神病と診断されることになった。2047年の時点で、彼はオーストラリア・ニューメルボルンの医療施設にいるという。

不完全なタイム・マシンを使った結果なのか、あるいは別のジョン・タイターと出会ってしまったからなのか、それはわからない。いや、そもそもチャーリーが連れ帰ったのは本当にジョン・タイター2だったのだろうか、という疑問もある。ジョン・タイター1だった可能性もあるし、あるいはふたりが出会ったことによって、お互いの精神が混線したということも考えられるのだ。

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(ムー2018年1月号特集「帰ってきたジョン・タイター」より抜粋)

文=冨山詩曜

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