僕が演じる主人公は人間とは違う存在なんです 松坂桃李さん(後編)

構成=河上 拓 写真=木村哲夫 取材=須永貴子

僕が演じる主人公は人間とは違う存在なんです

 

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――さすが、とてもお詳しいですね! 松坂さんが映画『不能犯』で演じた宇相吹正は、まさにアメリカの都市伝説によく出てくるような、無気味な謎の男ですね。
松坂 そういう存在だと思います。監督や原作者の方もおっしゃっているんですが、宇相吹正は、人間とは違う不明確な存在というか……。この役をやることが決まって原作を読んだとき、子供の頃にアニメで見た『笑ウせぇるすまん』の後味を思い出したんです。

 

――喪黒福造が「ドーン!!!」と相手に指さす技に匹敵するのが、宇相吹のマインドコントロールですよね。そんな宇相吹を演じる上で心がけたことはありましたか?
松坂 本当にいるのか、いないのか、その人にしか見えていないのか、実体として不明確な感じになるような所作を心がけました。たとえば歩き方でいえば、普通に歩くでもなく、ゆっくりすぎるわけでもなく、スーッと静かに現れる感じですね。

 

――宇相吹の周りだけ光のトーンがちょっと暗くなっていたり、演出面でも、宇相吹の非実在性が強調されていた気がしました。
松坂 宇相吹は革靴を履いているんですけど、コツコツコツという足音が編集で消されているんです。あと、「宇相吹なめ」のカットがない。1対1でお芝居をするシーンで、宇相吹側から相手を写すとき、宇相吹の肩を画面に入れないんです。つまり、宇相吹は存在しない(のではないか)という意味合いでの撮り方だと思います。監督は、たとえば貞子を撮るときも「貞子なめ」のカットは撮らないそうです。そういうものの積み重ねで生っぽさ、人間っぽさが消えていくんでしょうね。

 

――なるほど。ちなみに松坂さんは、宇相吹のように人の思い込みを利用し、マインドコントロールによって相手を死に追いやることは可能だと思いますか?
松坂 映画のような極端なことは難しいとしても、できなくはないっていうか……。ちょっと違うんですけど、僕は大学時代、経営心理学を学んでいたんです。たとえばスーパーマーケットで流すBGMのテンポが、お客さんの買い物の仕方に影響を与えていたりする。早い曲だと店を出るスピードが速まったり、逆にゆったりした曲だと、滞在時間が伸びて、買う予定じゃなかったものを買ってくれたりするんです。だから、意識がいつのまにか何かにコントロールされて肉体や行動が影響を受けるってことは、あると思いますね。

 

 

201802hunohan

『不能犯』
2月1日(木)全国ロードショー
配給 : ショウゲート
出演:松坂桃李、沢尻エリカ 他
都会で次々と発生する変死事件。走査線上に浮かび上がったのは、事件現場に必ず姿を現す黒いスーツに身を包んだ謎の男・宇相吹(松坂桃李)。「見つめるだけで相手を死に至らしめる」〈不能犯〉の宇相吹を、彼のマインドコントロールが唯一通用しない多田刑事(沢尻エリカ)が追い詰めていく。
©宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会

 

衣装=Tシャツ¥13,000/フィルメランジェ、スリッポン¥45,000/ニードルズ(ネペンテス)、他スタイリスト私物。
衣装=Tシャツ¥13,000/フィルメランジェ、スリッポン¥45,000/ニードルズ(ネペンテス)、他スタイリスト私物。

 

◆松坂桃李(まつざか とおり)◆

俳優。1988年、神奈川県生まれ。2009年「侍戦隊シンケンジャー」でデビュー。現在はNHK連続テレビ小説「わろてんか」に出演中の他、1月19日公開の『パディントン2』では声優を務める。

 

 

(「ムー」2018年2月号より抜粋)

構成=河上 拓 写真=木村哲夫 取材=須永貴子

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