ロシア革命と妖精事件を霊界が結ぶ! 高橋洋×武田崇元『霊的ボリシェヴィキ』対談

文=川口友万 写真=福士順平

革命のために革命家の血を輸血!

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高橋 僕が最初に「霊的ボリシェヴィキ」という言葉から受けた印象は、異教の神々の復活だとかそういう背景は知らなくて、とことん唯物的な人たちと霊的なものが掛けあわされたらどうなるんだろうということと、さらにボリシェヴィキには目的に対して急進的に向かっていくというイメージがあって、そういう人たちが霊絡がらみで何かやらかしてしまうんだというぐらいの感じでした。でもそれは、めちゃ格好いいぞみたいなことで、入っていったわけです。

それで僕なりに調べていくと、ボリシェヴィキでレーニンの論敵だったボグダーノフという人がいて、革命後もボリシェヴィキ的な人間を作りだすためにいろんな研究をやって、人間を革命化するためには、革命化を達成した人間の血液を輸血すればいいなんていうことをいってると知ったのです。

つまり、とことん物質にこだわるんだけれども、物質的なものを通じ、何だかよくわからない霊的な何かを呼びだしてしまうみたいな構図なんですね。

そういうところから、あの世に触れたことがあるという、ある種の天分をもった人を集めて降霊実験を行うという、あの構造はかなり早くから僕のなかにはありました。

それでJホラーシアターで企画を立てたときは、オムニバス的な映像を考えていたんですが、インディペンデントになると予算がないから、語りでいこうと。体験をひたすら語る、つまり音声ですね。音声もいってみれば物質界の出来事ですから、物質です。その音の力によってただならぬ雰囲気になってしまうという、よく考えてみれば昔ながらの百物語と同じ、トラディショナルな構造に行き着いたわけです。

武田 語りでこれだけ異様に緊密な世界を作りきった監督の才と、キャストの力に驚きましたが、高橋監督的には「霊的ボリシェヴィキ」という言葉の衝撃から、何かに導かれるかのようにこの形態に行き着いたということですね。

ところで、ドゥーギンを参考にしたというのは……?

高橋 ドゥーギンは国家ボルシェヴィキ党という、「霊的ボリシェヴィキ」と同じくらい矛盾した感じに突っ走っていた時期がおもしろくて。その国家ボリシェヴィキ党の合い言葉が「ダースメルチ」─「そうだ、死だ‼」っていう意味なんですね。

武田 それがあの呪文に。

高橋 あの世を召喚する呪文に悩んで、僕は露文(ろぶん)出身なんで友人たちにエロイムエッサイムみたいな呪文ってロシアにないのか聞いたのですが、ないっていうんですね。で、これだってなったんです。

武田 最初からじゃないんだ。

高橋 レーニンとスターリンの肖像も現場での発想なんです。

武田 ええっ、そうなの? あの場面を見せたいがために、この映画を作ったんだと思ってたんだけど。

高橋 結果的にそうなんだけど、後づけ。党歌は脚本からあったんですが、肖像は現場で閃ひらめいたんです。

武田 スターリンというのはやはり、ドゥーギンなんかによるスターリン再評価が導線としてあった?

高橋 たぶん……。それで現場で思いついて2枚を並べたらどんどんスターリンが盛りあがって、なんで自分がスターリン肯定に向かうのかわからないんだけど、「スターリンの恐怖政治こそは……」ていうセリフもその場で出てきました。

武田 憑かれてるよね。スターリンによる古参ボリシェヴィキの粛正って、裏切りであると同時に生け贄でしょう。執行したのが元メンシェヴィキの検事総長ヴィシンスキー。非常に神話的な構造がそこにはあって、「ダースメルチ」にしても、そういうのがどんどん現場を侵犯していったというのが凄いね。

 

異界は平面に映ずる

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映画『霊的ボリシェヴィキ』より。

高橋 奇しくも2017年は、ロシア革命100周年であると同時に、コティングレー妖精事件の100周年だったそうです。

武田 霊能者の宮路がコティングレーの写真を見せて、自分が触れてしまった世界はあえていうとこういう感じだったという。

あれ、すごくリアリティがあるのですが、霊的なものが人間には平面的に映ずるという発想は、どこからなんですか?

高橋 『リング』で、呪いのビデオをどう表現するのかというのでリサーチしていたときに、幽霊が見えるという女性が「しいていえばCG」だといっていたんです。でもCGではピンと来ないというと、「色つきの砂絵」だと。つまり幽霊は動くときに、砂の粒子が一斉にざざざざざっと移動してるように見えるというんですね。

その後、Jホラーブームになって、いろんなホラー映画を霊能者に見てもらって、どれが自分が見てる霊に近いですかと尋ねる深夜番組があったんですが、全員が指し示したのが、黒沢清監督の『降霊』で窓に映っている霊だったんですね。どうやって撮ったかというと、人の写真を窓に貼っただけだったんです。

武田 まさにコティングレーだ。

高橋 僕は昔から、いちばん怖い心霊写真はコティングレーだって、いかにも作りものなんだけど、いちばん気味の悪いのはこれなんだといいつづけてきました。本当に人間が異界に触れる瞬間を捉えたらこうなんじゃないのという感触がずっとありました。

武田 「山の稜線のところを何かが這って」という語りも怖い。僕は記憶があるというか、そういうのを見たような気がする。この映画が怖いのは、実は俳優さんが語っているだけなんだけど、話したり回想したりしてるうちに、脳内で視覚化しちゃってる。だから、見た記憶というのも作られた記憶かもわからない……。

高橋 僕は神道霊学もボリシェヴィキもよくわからずにこの映画を作ったんですが、結局、行きついたのは異界の何かの召喚だったんですね。モスマンの話で、ネイティヴ・アメリカンたちの語りに、白人が入植する以前のウェストバージニア州あたりに「白い人」が住んでいたという話があって、『霊的ボリシェヴィキ』で呼びだそうとしたのはそういうものなんでしょうね。

妖精的な何か。いないはずのものがいるという、ゾッとした感覚ですね。

武田 この映画は、それをリアルに体感させてくれました。

 

(ムー2018年2月号より抜粋)

 

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映画『霊的ボリシェヴィキ』
Jホラーの巨匠、高橋洋監督の最新作。集音マイクが仕掛けられた奇妙な施設に集められた、かつて「あの世」に触れたことのある人々。強すぎる霊気によってデジタル機器は働かないこの部屋で、やがて静かにアナログのテープが回りはじめる。始まったのは、禁断の心霊実験だった‼
●2018年2月10日より、ユーロスペースほか全国順次公開。

文=川口友万
写真=福士順平

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