魔女・叶ここの立春儀式「インボルク」で寿がれた日常の幸福

稲のクロスで春を迎える

 

レンギョウの花、ゴールドのドレス、蜂蜜とマンダリンオレンジのデザート。

 

レストラン・ロアラブッシュにて、魔女・叶ここが催した立春(インボルク)の宴に、春の訪れを示す黄色とオレンジ色が揃った。

 

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申し合わせることなくインボルクのテーマカラーが一致したのは、古代から人間が自然とともに歩んできたことによる必然といえるだろう。最初は「いい偶然ですね」などと思っていたのだが、宴が終わった後、これは必然だろうと思うことになった。

 

古代ケルトの儀式を現代の日本で行う魔女・叶ここさんについては、ムーPLUSでもハロウィン(サーウィン)クリスマス(ユール)の模様を通じて紹介してきた。

というか、最近はBSスカパー!で「魔女」として出演して話題である。

 

今回の、立春(インボルク)は、気候を感じられる日中に開催。東京は前週に大雪に見舞われたが、この日は快晴。

 

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ヤギのミルクから作られたシェーブルチーズなどインボルクを象徴する食事を楽しんだのち、参加者皆で、家のお守りの十字(ブリギッド・クロス)をイネで作る。

 

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日本だと柊や鰯を玄関先に飾る地域があるが、それと同じだそうだ。魔女・叶ここさんの儀式によってそのイネの十字に魔力が込められ、インボルクは幕を閉じた。

 

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……と、儀式についての紹介があっけなくて恐縮だが、祭壇を中心に東西南北の四大エレメントを招き、力を授かるという術式の基本は「ユール」でのものと同様で、「このような魔術が……!」と語ることを今回は略したい。

 

そもそも――。

 

なぜ叶ここさんは、現代日本で古代ケルトの風習、暦に基づく儀式を行っているのだろうか?

 

叶ここさんは占い師として活動し、幼少期より「見える」能力を備えていたが、数年前より、「魔女として」生きている。

今回のインボルクにしても、イベント、見せ物として催さなくても、叶さんは数年来、同様に立春を祝ってきているもの。

魔術を学び、様式を再現するという学究のためでもあるが、叶さんにとっては一年を通じてすべて「この時期に自然に営まれる」行為なのだという。

 

なので、「なぜ現代日本で魔女の儀式をやるのか?」は、空振りの問いかけとなる。どこであろうといつであろうと、儀式を行うのは魔女の日常だからだ。

もちろん、儀式を行わなければ魔女ではない、という意味ではないし、儀式、魔術の様式は時代を経て変化していく部分がある。

 

スペイン人の魔術師とフィリピン人の祈祷師の家系に生まれた叶ここさんではあるが、祖父の子孫に魔術を伝承したくないという意思を尊重した母の思いもあり、見えない世界のことは人にいってはいけないタブーの世界として教え込まれていた。

カトリックの親族や幼少期の英語教育の影響で、キリスト教のお祭り(ハロウィン、クリスマス、復活祭、サンタクルーサンなど)には接していた。
それらのキリスト教的なお祭り、祖父の魔術師という世界、そして日本の宗教や文化に触れていくほどに、それぞれの文化の違いに疑問が湧いてくるようになったそうだ。

大学でキリスト教を含む宗教学を学ぶ中、アニミズムの世界観と出会い、自然や宇宙の大いなる力こそ「神」と呼ばれるもののエネルギーであると感じた時、すべてが腑に落ちたという。
またキリスト教のお祭りに取り入れられている、現代魔女の根本となるケルト文化もペイガニズムであるとわかり、自らのルーツとリンクしていく。

魔女や魔術師は、あらゆる時代で多種多様な文化を吸収し、新しい魔術を想像していく。かの「黄金の夜明け団」も根本的なものは大切にした上で、よりストイックに他文化を吸収してきた。

日本、スペイン、フィリピンなど、多種多様なルーツを持つ叶ここさんにとって、「どれかひとつに絞らなくてよい。すべてはつながっている」という生き方を許されるのが魔術的な世界観である。
「多様性は宇宙の原理である。そして、本質はひとつである。多様性もすべてひとつの源から派生している」というように、魔術的カバラ思想とアニミズムの自然崇拝・多神教はこの世界を繋いでくれる思想だと捉えている。

叶さんは、自身の葛藤を踏まえ、古代ケルトやあらゆる世界の宗教や歴史を魔術で結ぶことで、変わりゆく世界の中での自分(人間)を位置づけているのかもしれない。

時代は移ろい、社会は変化し、生まれた人間は老いて死ぬ。
だが、太陽や月、星に示された暦は大きくは変わることがない。

「文化や宗教や言語の違いは多様性の在り方でしかなく、本来は同じ源泉から生まれてきたものだと感じるきっかけになったら嬉しい。世界や自分自身の中にある多様性を受け入れ、それらを愛せるきっかけづくりになるよう、これからも魔術を通して世界の優しい在り方を問いたい」

 

 

この日に行われた立春の祝いは、華やかで、いままさに寿いでいく季節を感じさせる、格別なものであった。魔女にとっては、一年を通じたささやかな出来事だったのだろうか?

 

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インボルク(立春)からオスタラ(春分)、そしてワルプルギスの夜(4月30日)へ。ちなみにワルプルギスの夜はメーデーの前日であり、一年ではサーウィン(ハロウィン=9月30日)と対である。暦は、巡る。

 

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