70年代「こどもオカルト」の源流をめぐって/昭和こどもオカルト回顧録

文=初見健一

僕らはいつオカルトに目覚めたのか?

70年代の「こどもオカルト」ブームの源流はどこにあったのか? ……という、非常に単純でありながら、同時にモヤモヤしたモンダイが以前から気になっている。

いや、そんなの資料をあたればすぐに答えは出るじゃないかと思う人も多いだろうし、僕も拙著『昭和オカルト大百科』ではブームの起点をはっきりと1973年と決めつけた。

この年に公開された映画『日本沈没』によって国民的終末ブームが勃発し、続いて終末気分を一気にオカルトの次元にまで高めた五島勉の超絶ベストセラー『ノストラダムスの大予言』の刊行が強力な起爆剤となった。翌年はもはや説明不要のユリ・ゲラー来日騒動、各地の映画館に長い長い行列ができた『エクソシスト』公開、今ではカルトなトンデモ映画とされているが、当時は邦画興行ランキング2位を記録する大ヒット作だった『ノストラダムスの大予言』公開などなど、その後の日本列島は「一億総オカルト愛好者」であるかのような状況に陥っていく……。

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『ぼくらの昭和オカルト大百科 70年代オカルトブーム再考』(初見健一・著 2012年 大空出版)。

 

この流れの認識については今も充分に妥当性があると考えているのだが、70年代「こどもオカルト」の源流がどこにあったか? ……という問いは、こうした大きな文化史的なモンダイではない。

要するに僕ら世代が、あるいは僕自身が、初めて「オカルト的なもの」を「おもしろい!」と思うようになったのはいつで、そこにどんなきっかけがあったのか? という、非常に個人史的な記憶のモンダイなのである。ここがモヤモヤしているのだ。

同世代の人に聞けば、多くが「そりゃあユリ・ゲラーの『スプーン曲げ』がきっかけだろ?」とこともなげに答えるのだが、果たして本当にそうだったのか?

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74年の「ユリ・ゲラー来日」によって子どもたちの間で「超能力ごっこ」が大流行。しかし、それ以前にも別種の「超能力ごっこ」が流行していた……(写真はイメージ)。

 

水木しげるを震源とする「妖怪ブーム」が起こったのは60年代だし、僕ら世代も大映の『妖怪百物語』や『妖怪大戦争』をテレビで見て夢中になった。もちろん各社の『妖怪図鑑』も読み漁っていたわけで、このあたりを70年代のブームの前段とすることも充分に可能だろう。

もっと視野を広げるなら、古い児童雑誌を紐解けば1950年代から周期的にオカルトネタは載っているし、さらには戦前だって同じようなもので、そうなると欧米の心霊科学勃興あたりまで遡ることになってしまい、いや、それ以前だって……ということになって、僕ら世代がどうのとか、個人史的な記憶がどうこうではなく、結局は「原始宗教の時代から人間はオカルト的なものが大好き!」で、そこには源流もなにもないんじゃ!ということで問い自体が無効化されてしまう……。

ほら、モヤモヤする!

 

ユリ・ゲラー以前のオカルト洗礼

あくまで自分個人の幼少期の記憶のモヤモヤに範囲を限定して、可能な限り過去へ過去へとたどってみると、おぼろげに見えてくるのは「催眠術」と「ダウジング」だ。

今となってはかなり盛り上がりに欠けるネタだし、僕自身、とっくに興味を失っているテーマではあるのだが、自分のオカルト的好奇心を逆にたどって行き着くのは、どうもこのふたつらしいのである。

もちろん「幽霊」「UFO」などはアニメや特撮ドラマのネタなどとしてすでに定番化していたが、それらはオカルトブームのはるか以前から子ども文化(だけではないが)に組み込まれていた常套手段的コンテンツだったと思う(「幽霊」はもちろん戦前から、「UFO」は主に1950年代から)。

この時点では、後にブーム化する「オカルト的なもの」とは、両コンテンツともにちょっと属性が違っていた。というか、おそらく70年代初頭までは、少なくとも子ども向けメディアにおいは、「幽霊」や「UFO」のネタは基本的には鑑賞するためのかなりフィクショナルな怪談・奇譚という形で扱われており、むきだしの「オカルト=心霊科学」情報としては提示されることは少なかったと思う。

おそらく園児から小学生へ以降するころで、このあたりの記憶はそれこそモヤモヤしているので、あくまで「気がする」レベルでしか捉えられないが、「ユリ・ゲラー体験」以前に「オカルト的なもの」に初めて触れ、開眼(というか、ただ「おもしろい!」と思っただけだけど)したきっかけが、僕の場合は「催眠術」と「ダウンジング」ではなかったか、という「気がする」のである。

「不思議なこと」が、この現実に、僕らの日常のなかに、すぐ目の前にも「あり得るのだ!」という確信……ではないが「予感」に、初めてワクワクした瞬間である。

そして幼少期の僕は以降の無数のブーム、「スプーン曲げ」も「コックリさん」も「心霊写真」も、すべてがその延長線上にあるもの……と考えていたように思う。

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『月刊ムー』1982年7月号より。同誌では当時から近年まで、定期的に「ダウジング」の話題が取り上げられている。

 

次回は、僕ら世代の「オカルトへの入り口」となった「催眠術」と「ダウンジング」のうち、特に「ごっこ遊び」として大流行した「ダウジング」を僕らはいかに知ったのか?といったあたりを回顧してみたい……といったことを書くと、おそらく同世代の同好の士は「そりゃあ、『ドラえもん』がきっかけだろ?」とこともなげに答えると思うのだが、これについても果たして本当にそうだったのか? ……といったあたりを考察してみたいのである。

 

文=初見健一

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