生まれ変わりと過去世を結ぶ、記憶の謎

文=文月ゆう

「ニンニクをむきたい」という3歳

出生前記憶の研究で知られる池川明氏(産科医・池川クリニック院長)によると、子供が過去世の記憶を語りだすケースがある。

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そのひとつが「とも君」の例だ。

「ニンニクをむきたい」

ある晩、当時3歳11か月だったとも君が、突然そんなことをいいだした。驚いた母親がいろいろと尋ねると、それに答えて次のような内容を語った。

「とも君って呼ばれる前に、ニンニクをむいたことがある。そのときは、イギリスのお料理屋さんの子供だった。1988年8月9日に生まれて、ゲイリースって呼ばれていた。7階建ての建物に住んでいた。高い熱が出て、死んでしまった」

母親は首を傾げたが、もう遅い時間だったので、とりあえず寝かしつけることにした。翌日、ニンニクを用意すると、とも君は右ききなのに、なぜか左手を使って器用にむいていった。

「ニンニクをむいたことがあるの?」

「うん。前のとも君のとき、したことがある」

「前のとも君って?」

「8月9日生まれだったとも君」

これ以来、とも君は「前のとも君」の話をするようになった。

「前のとも君が死んだのは、1997年10月24日から25日の間。家は、駅から30秒くらいのところにあるお料理屋さん。向かいに特別な商店街があって、日本の醤油を売っていた」

とも君の話には、幼い子が知るはずのない内容が含まれていた。たとえば、ホームセンターで地球儀を見つけたときは、イギリスのエジンバラ付近を指差しながら「エディンビア」と、まるでネイティブのように発音して、「このへんに住んでいた」といった。

「2階建てのバスに乗った。お金は、円じゃなくてパウンド(ポンド)」とも語った。

また、家族のだれも知らない料理の話をした。

「イギリスのお母さんは、チリコンカーンという辛い食べ物をつくってくれた。レッドビーンズとキドニーが入っていた」

計算上、イギリスのとも君は9歳で亡くなったことになる。

「前のとも君はB型で、体が弱くて運動ができなかった。やりたいことがいっぱいあった」「どうしてイギリスのとも君のことを思いだすの?」

そう母親が尋ねると、とも君は「イギリスのお母さんに会いたい」といって涙を浮かべたという。

 

過去世の母親を捜してエジンバラへ

2005年に、ひとつの転機が訪れた。JR西日本で大きな脱線事故が発生したとき、家族と一緒にニュースを見ていたとも君は、イギリスでの出来事を話しはじめたのだ。

「イギリスでもサウスオールで事故があったよ。テレビで『事故です、事故です』といっていた。列車同士がぶつかって、火も出た。8人死んだ。前のとも君が死ぬ少し前」

これを聞いた父親がインターネットで調べてみると、1997年9月19日、サウスオールで電車と貨物列車が衝突・炎上する事故が発生し、7人が死亡、139名が重軽傷を負ったことがわかった。

それまで父親は、とも君の話を否定こそしないものの、なんとなく聞き流していた。

だが、この一件以来、本当かもしれないと考えるようになったという。

tomo2-1このことがきっかけとなり、父子ふたりでのエジンバラ旅行が実現した。とも君は、7歳6か月になっていた。

現地での1日目は、レストランを回った。イギリスのとも君の家は見つからなかったが、何軒かのレストランが、チリコンカーンを出すことがわかった。

2日目、とも君は早朝に目を覚ますと、こういった。

「今、お母さんを感じた! お母さんがいる!」

街へ飛びだし、それらしい場所を捜したが、成果は得られなかった。翌日も同じで、結局「お母さん」も家も見つからないまま、帰国の途についた。

しかし、実際にエジンバラへ行ったことで、とも君の中で何かが吹っきれたらしい。帰国後はだんだんと過去世を語ることが少なくなり、十数年が経過した現在では、過去世の記憶がまったくないという。

月刊ムー2018年5月号
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(ムー2018年5月号 総力特集「転生と臨死体験の謎」より抜粋)

文=文月ゆう

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