確率論では説明できないデータがある! 統計学のパラドックス

文=嵩夜ゆう イラストレーション=ネモト円筆

重大事故発生確率と、ある顔料の関係

自動車や船舶、飛行機など、乗り物の事故は途絶えることがない。だが、ある顔料を使用している乗り物だけが、突出して重大事故に見舞われていることは、あまり知られてはいない。

もちろん、色が人の精神状態に影響を与えることはよく知られている。

たとえば、特別に調合されたピンク色には精神を穏おだやかにする効果がある。そのためアメリカ合衆国の一部の刑務所では壁をそのピンク色に塗り替え、再犯率を下げようとしている。これは実際に、ある一定の実績をあげることに成功しているのだ。

また、ほかには特別な波長の赤が、食欲などの本能的な欲求に結びついていることも知られている。

しかし、本稿で述べているのは、このような調合された色ではなく、一種類の顔料なのだ。つまり、さまざまな色を作りだすための一成分にすぎない。したがって、その顔料が使われているかどうかを見た目で判断できる人は、その道のプロであったとしても、ごくごく少人数だろう。ましてや一般人の場合、判別することなどおおよそ不可能といえる。

つまり、その顔料の色が人に心理学的影響を与える可能性は、ほぼゼロなのである。にもかかわらず、なぜかその顔料を使った乗り物は、悲劇的な事故に見舞われる確率が異様に高い。

この問題は企業の頭を悩ませつづけ、なかには、理由や科学的見地ははっきりしないまま、その顔料の使用を中止した企業さえあるという話だ。

 

投資に使われる数式のパラドックス

フィボナッチ数列という名前を、耳にしたことがあるだろうか。

1202年にレオナルド・フィボナッチが創出した数列で、当初は万物のすべてがこの数列によって構成されている、とまでいわれたものだ。あの数学の天才オイラーも研究をしたほどだが、実際には多くの自然界のものがあてはまらないことが証明され、今では否定的な見方が多い。ところがいまだにこの数列と、数列が生みだす曲線を使用しつづけている分野がある。

株価予測である。

どのように使用されているのかを簡単に説明すると、ある地政学的リスクが発生したとき、株価や為かわ替せレートは完全にそれまでとはまったく違う動きを見せる。この場合に、似たような事例のグラフとともに使用されるのがフィボナッチ数列なのだ。

無論、予測では他にもさまざまなデータが用いられるわけだが、この数列でできあがる曲線に近い値動きを示した際、その後の値動きは明らかに、この数列で生成される複数の図形のいずれかと近似した動きを示す。

ただし、この値動きに対して、フィボナッチ数列をもって説明するアナリストや専門家は皆無である。が、実際にはこの数列も指標のひとつとして折り込み、予測を行い、利益を上げているというのが実態なのだ。

ならば、なぜそうなるのかというと、相変わらず根本的な疑問は解決されていない。が、こうしている間もなお、800年も前に発表された数列が生きつづけ、投資のプロフェッショナルたちの間で使用されつづけていることだけは間違いないのである。

月刊ムー2018年5月号
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(ムー2018年5月号 特集「統計学のパラドックス」より抜粋)

文=嵩夜ゆう
イラストレーション=ネモト円筆

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