超人を目指す呪法「悪偶」と「道法」の闇

文=松雪治彦

天才と修行者の違いとは?

 

ここに、ふたつの「超能力」がある。

守護神から特別な才能を与えられた天才を人形に変え、その能力をわが物とする「悪偶」の呪術と、厳格な修業で得た神通力や、様式に則った呪符などを用いて自然現象や他者を操る「道法」の仙術だ。

 

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どちらもテレビアニメ「悪偶 ‐天才人形‐」(以下、「悪偶」) に登場する「超能力」の描写である。この作品のテーマのひとつに「ニセモノの天才」があるが、悪偶は他者から才能を奪う禁断の呪法として描写され、行使する「裁縫師」はいわゆる悪役である。対して、裁縫者から悪偶を取り戻す「救済者」は、正当な術である道法を用いるヒーローとして活躍する。

人間が神のごとき能力を求めるのは古今東西の歴史が物語っているし、文明や科学の発展も同根の衝動からだ。近代化に続いて精神文明への回帰が叫ばれ、神智学、人智学として、神への近づき方が模索されてきたし、現代においては日本でも大手企業が超能力開発を研究し、冷戦下では米ソが軍事転用も含めて超能力者をスカウト、育成していたことは有名である。

 

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アニメ「悪偶」の原作は中国のネットコミックだが、中国でも超能力研究は盛んにおこなわれている。茹でられたエビを生き返らせる蘇生術で知られる孫儲林、気功で治療を行う厳新、念力から透視まで自在に行う張宝勝など、国家公認で活動する彼らは、「悪偶」世界における「神から才能を与えられた者」といえるだろう。

世界各国で天性の超能力者を研究し、能力を科学的に解明し、または訓練によって超能力を開花させる方法を確立しようとしていた事実は、「悪偶」世界そのままだといっていい。

 

超人願望がもたらす文明の進歩と限界

 

他者の才能を盗む「悪偶」は悪魔的な呪術であるが、救済者が用いる道法は、天賦の才を持たない者が超能力を得る手段ではある。

人間の身でありながら神の領域に近づこうとする行為は、現実世界でもバイオテクノロジーや人工知能の分野で見られる。技術的に可能であれば、実現させたい、手に入れたい。呪術でも科学技術でも、人類はいくつものバベルの塔を建ててきたし、それが文明を進歩させてきた。

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「悪偶」で描かれるふたつの超能力は、善と悪に分かれているように見えて、同根の業を描いているようでもある。

確かに、自らを擲なげうたず、他者の才能を簒奪する「悪偶」は、犠牲が尊いからこそ、効果は大きい。古来、生け贄を用いる秘術、呪術は数多いが、安易に行えば「呪詛返し」を受けることも必定である。「悪偶」の作中において、裁縫師が必罰の命運にあることはまさにそれだ。

超能力を求める人間として、「悪偶」による偽物の才能を手にするか、「道法」などによる理を踏まえた技術を身につけるか。天賦の才を羨んでしまう人間として、どちらに共感するか。「悪偶」は見る者を試す作品といえよう。

 

 

TVアニメ 「悪偶 -天才人形-」

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毎週月曜日深夜0時~TOKYO MX、サンテレ  ビ、KBS京都、BS11にて放送。GYAO、ニコニコ生放送、dアニメストアなどでも配信中。

http://aguu-anime.com/

©騰訊動漫

(「ムー」2018年10月号より抜粋)

文=松雪治彦

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