どちらさま? 隣は何をする人ぞ/黒史郎の妖怪補遺々々

文・絵=黒史郎

妖怪補遺々々(ようかいほいほい)

ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々」! 連載第41回は、どこからか現れる正体不明のモノを補遺々々します。

 

どこから来た、だれなのか

私たちは身の安全と財産を守るため、個人情報をできるかぎり漏らさぬように暮らしています。

それでも完璧などありません。むしろ、パソコンやスマホに大切な情報を詰め込んでいる私たちは、知識や技術を持つ者がその気になれば、いとも簡単に、丸裸にされてしまいます。

――どこから来た、だれなのか。

この現代社会では、その素性をヴェールに包んで隠し通すことのできる者は、それほど多くありません――と、この記事を書いているまさに今、このようなネットニュースが流れてきました。

「30年ともに暮らした妻が、どこのだれなのかがわからない」

どうやら、現代でもそのようなことが起こりうるようです。

次にご紹介する3例は宮城県に伝わる、いっさいがヴェールに包まれたものたちの話です。

 

【童子林の童子】

宮城県黒川郡粕川村(現・大郷町)の前沢田と後沢田の境のあたりに丘があります。

そこではときどき、どこからか5、6歳の可愛い子供がやってきて、村の子供たちと遊んでおりました。

この子供、かけっこ、木登り、相撲、何をやらせても年上の子供に負けません。

まったく身元の知れぬ子供であるらしく、気がつくといなくなっていたといいます。

そんな不思議な子供の来るその丘は、童子林と呼ばれていたそうです。

 

【辻に立つ童女】

仙台市青葉区堤通と北五番丁(同区柏木のあたりか)の横丁で、14、5歳の少女が辻番所(警備のために設けられた所)の前に立っているのを、よく見られたといいます。

正徳2年(1712年)の正月24日の夜。

ある者がその辻を通りかかったとき、小盆を持った少女が佇んでいるのを見ました。

とても暗い夜でしたが、目の白い部分と黒い部分がはっきりと光って見え、それがとても気味悪いのです。

持っていた杖で打ちつけようとしましたが……いや、もしかすると宿守(家の番)の娘なのではないかと躊躇しているうちに、少女は姿を消してしまったそうです。

やはり、怪しのものだったのでしょう。

 

【道塞ぐ姥】

台町一番丁から二番丁へ抜ける横丁通りの西裏のあたりには、大きな皀莢木(さいかち)が生えていました。

夜になるとその木の下に、白髪の老婆が現れ、横丁を塞いで立っていたといいます。

ある武家の仲間(奉公人)がこれに遭い、慌てて逃げたという話が伝わっています。

このお婆さんの目的はわかりません。生あるものなのかそうでないのか、それさえもわからないのです。

 

【お花女】

正体はわかりませんが、名前だけはわかるものもあります。

青葉区宮町にあります、清浄光院万日堂の東に、北へ割れた道があります。この道は六道の辻へと通じる道で、その道の土手には穴があり、このあたりで不思議なふたりの姿がときどき見られたというのです。

あるときは男が立ち現れ、

「支度はよきか、お花、お花」と呼びました。

あるときには、その呼びかけに応える声もあり、華やかに着飾った27、8の美しい女性が穴から現れ、ふたり連れだってどこかへと行くのを見た人もいました。

また、この美女が塀笠(びんかい)の上に立って笑いかけてくることもあったそうです。

おそらく正体は狸か狐で、道の穴は「お花」の住処なのではないでしょうか。

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文・絵=黒史郎

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