旅の土産に妖怪を/黒史郎の妖怪補遺々々

文・絵=黒史郎

妖怪補遺々々(ようかいほいほい)

ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々」! 連載第42回は、地方の民話・伝説を収録したお土産ものの本のなかから補遺々々します。

 

旅の土産に妖怪を

旅に行ったのなら、やっぱり寄りたい、お土産屋さん。

こういう場所でも、妖怪的なものを見つけることができます。

妖怪を題材に手作りされた民芸品は昔からありますが、最近でもストラップやキーホルダー、文具、ステッカーなど、より馴染みやすくキャラクター化され、グッズ化された妖怪たちがお店に並んでいるのを見かけます。

書籍コーナーでは、その土地の出身作家の本、写真集、ポストカードブックなどと一緒に、民話・伝説の本が置かれていることもあります。

今回は、お土産屋さんに売っている「小さな本」から見つけた妖怪です。

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地方のお土産物屋さんなどに売っている、民話・伝承を収めた昔話。黒氏はこういう本があると、ついつい購入してしまうとか(黒氏私物)。

 

人のよい化け物

永岡治『伊豆の昔ばなし』に収録されているお話です。

 

静岡県の沼津市と伊豆市の境にある達磨山。その中腹に広尾戸という所がありました。

ここには昔、【桜衛門(サクラエモン)】という化け物がいました。

この桜衛門、化け物といっても、悪事ははたらきません。それどころか、夜道で迷っている人がいれば道案内をしてあげますし、赤ん坊が泣いていれば、その子をあやしにわざわざ里まで下りてきます。

困っている人を見過ごせない、優しい心の持ち主だったのです。そんなお人好しな性格ですから、呼ばれたらすぐ助けにきてくれます。

 

修善寺のほうから来た村人が、達磨山を通ったとき。

「おーい」と、この化け物の名を呼ぶと、どこからともなく桜衛門が現れ、一緒に歩いてくれたといいます。

夜の峠越えは暗くて怖いもの。そんなときにだれかが同行してくれたら、どれほど心強いでしょうか。

こうして助けてもらった村人は、お礼におむすびを2、3個、家の前に置いておいたそうです。すると、桜衛門はそれを黙って食べて、山へ帰っていったといいます。

 

『伊豆の昔ばなし』には、白装束を着た人間の姿をしている桜衛門が描かれています。

 

謎のお爺さんの訪問

小原剛太郎『雪国夜話』に収録されている、「雪まき爺さん」というお話です。

 

木枯らしの吹く夕方のことです。

ある家族が家の炉端で食事をしていますと、

「おばんです」

そういって、貧しそうな身なりのお爺さんが訪ねてきました。

一晩、泊まらせてほしいといいます。

優しい家族は、この突然やってきたお爺さんを火にあたらせてあげます。そして、粥を与え、寝床に馬小屋の隅を貸してあげました。

この晩はとくに冷え込み、家族は身を寄せ合って眠りました。

 

翌朝。

その家の子供が、お爺さんを起こしに馬小屋へ行きました。

びっくりです。

馬小屋に、お爺さんの姿がないのです。

お爺さんの寝床には代わりに、白い綿のようなものが丸まって置かれています。

その白いものは庭へと続いており、畑へ、森へと広がっています。

あたり一面、銀世界でした。

 

翌晩、このお爺さんは隣村にも現れました。そして、どこかの家を訪ね、そこでひと晩、泊まっていきました。

すると、その村もたったひと晩で、真っ白になったのです。

こうして、おじいさんは南下していきながら、その行く先を真っ白にしていきました。

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文・絵=黒史郎

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