忘れ去られたものたちを発掘する「妖怪補遺々々」のすすめ

文=黒史郎

妖怪補遺々々

 

ヤケで表紙が茶色く変色し、書名も擦れて読み取れない。

触れるだけで崩れそうなその郷土誌を紙袋の中から、そっと取り出す。

 

うん、実にいい感じの古さだ。

古書特有の、この甘いような苦いような匂いもいい。

 

飴色のライトの光に染まるホテルの部屋で、私は旅先の古書店で見つけた本を開き、まず目次から目を通す。

「村の構成」「農業」「交通」「年中行事」「葬礼」――。

「信仰と俗信」に目が留まる。

あるといいな、この章に。

はやる気持ちを抑えながら、慎重に頁をめくる。

めくる、眼球を動かす、探す。そしてまためくり、眼球を動かして、探す。

私の知らないモノと出会えますように。そう願いながら。

 

河童、一つ目小僧、小豆洗い、砂かけばばあ、ろくろ首。

 

これらの名前をまったく聞いたことがないという人は少ないでしょう。彼ら彼女らは妖怪界のスター。書籍、映像作品、ゲームなど、あらゆるメディアでその姿や名前を見ることができます。でも、そんな有名妖怪たちの陰に、ほとんど存在を知られていない無名妖怪たちがいるのをご存じでしょうか。

河童や小豆洗いたちとともに民衆の間で語り継がれ、恐れられていたはずなのに、いつのまにか人々の記憶から忘れ去られてしまった、そんな可哀想なものたちがいるのです。

妖怪の関連書籍は現在、把握が難しいほどの数が刊行されています。「事典」と名のつく大著も多数あります。それらを数冊読むだけで1000以上の妖怪を知ることができるでしょう。

でも、私たちの知らない妖怪は、その数を大きく上回るはずです。むしろ今、私たちの知っている妖怪は全体のほんの一部といってもいいでしょう。

さまざまな理由で、人々の記憶からこぼれ落ちてしまった妖怪たち。

そんな彼らを全国市町村の民俗誌、民話集、地域雑誌などから発掘し、日の目を見せてあげること。そして、発見する喜びを読者の皆様にお伝えしていくことが、この本の目的なのです。

 

20190125ykh

 

(「ムー民俗奇譚 妖怪補遺々々」より抜粋)

文=黒史郎

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2019/01/22

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