伝説のオノゴロ島「隠岐」の謎を解く!

文=飛鳥昭雄+三神たける

名づけられなかった島

日本には名前がない島がある。今世紀に入り、日本政府は国家安全保障上の観点から、国土の岩礁にまで名称をつけた。が、そこに盲点があった。隠岐である。島根県に属する隠岐諸島のうち「島後」には土地の固有名詞がない。

平成の市町村合併にともない、島後はあらためて「隠岐の島町」と称すことになるのだが、このとき島民でさえ、その多くが本来の名前がないことに気づかなかった。隠岐には「島前」と「島後」という諸島が存在するが、これは本来、山陰道に対する「道前」と「道後」であって、島の固有名詞ではない。

島前は大きく「中ノ島」と「西ノ島」、そして「知夫里島」から成り、それぞれ地名として認識されているが、島後にはない。あくまでも地方名があるだけだったのだ。

偶然だろうか。たまたま盲点だったのか。否、意図的である。日本国に属する島々のなかで、あえて島後には名前をつけなかった。なぜか……。

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夢枕獏原作の小説で、のちに岡野玲子の漫画にもなった『陰陽師』には、この世で一番短い呪は何かという問いについて、主人公の安倍晴明が、こう答えている。

「名だよ」

「ものの根本的な在様を縛るというのは名だぞ」

要は、名前がなければ、呪いようがない。あらゆる呪術、祟りの対象となりえない。存在するが、存在しない存在になる。逆説的ではあるが、名づけられないことによって、島後は封印されてきた。世界中のだれにも気づかれることなく……。

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西ノ島にある国賀海岸の摩天崖と呼ばれる断崖絶壁。

 

隠岐は「天照大神」を祀る伊勢神宮の最奥宮だった!

日本建国以来、隠岐は封印されてきた。それも終わりが近づいてきたようである。平成も残りわずかとなった2018年、ついに封印を解く指令が飛鳥昭雄に下った。島の初めに仕掛けし「呪」を秘密の儀式によって開封すべし、と。

これに先立ち、飛鳥は本土における由緒ある神社、すなわち諏訪大社、熱田神宮、伊雑宮、そして籠神社において密儀を執行してきた。といっても、儀式そのものは一般の正式参拝とさほど変わらない。唯一異なる点といえば、拝礼だろう。一般的に、神社の拝礼は二礼二拍一礼だが、開封の拝礼は三礼三拍一礼によって行われた。

三礼三拍からわかるように、拝する神は3人。『古事記』の冒頭に登場する造化三神、すなわち天之御中主神と高御産巣日神と神産巣日神である。明治以降の神道では簡略して二礼二拍一礼で統一されてしまったが、本来は違う。古神道では、今でも三礼三拍一礼をもって正式参拝とするところもあるが、意味するところは同じ。究極的に、神道は造化三神を拝することをもって奥義とする。

密命を帯びた飛鳥昭雄は最後の儀式を執行するために2018年9月、島後に降り立った。伊丹空港発の飛行機のタラップを降りながら、あらためて「彼ら」の言葉をかみしめた。そう、もう後戻りはできない。

組織からコンタクトがあったのは深夜だった。相手の男には名前がない。戸籍もない。皇室の方々と同様、国民でもない。およそ日本が建国された時代より、裏から国を呪的に動かしてきた。

「八咫烏」である。彼らは裏の陰陽道、すなわち「迦波羅」の使い手で、古来「漢波羅」と呼ばれてきた。漢波羅秘密組織「八咫烏」は約70人によって構成され、幹部12人から成る「大烏」がおり、なかでも上位3人は特別に「金鵄」という称号をもつ。金鵄は3人でひとりの「裏天皇」として君臨する。

 

裏天皇からの密命を帯びた伝令役の八咫烏、通称「烏天狗」は飛鳥昭雄に、こう伝えてきた。

「おぬしは四隅をとった後、すみやかに隠岐に出向き、用意された者の指示に従い、島前の一社で天之逆手、島後の三社では天之順手をもって韻を踏まねばならない。これは絶対に外へ洩れることがないよう、当日までひた隠し、伏せておくように」

四隅とは先に儀式を行った4つの神社で、天之順手とは最初に掌を上に、天之逆手とは逆に下に向けて鶴の舞をした後、三礼三拍一礼を行う儀式である。

隠岐の島前と島後は陰陽、表裏一体。それぞれの神社で密儀を行うことにより、最終的に開くのは、神道の最高神「天あま照てらす大おおみ神かみ」が祀られる伊勢神宮である。そう、ここ隠岐は伊勢神宮の最終奥宮なのだ。

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(ムー2019年3月号 総力特集より抜粋)

文=飛鳥昭雄+三神たける

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