ゲーム界のオーパーツ「イルミナティ・カード」の謎

文=嵩夜ゆう

現実の争いをゲームの世界に再現

本誌読者なら、「イルミナティ・カード」という奇妙なカードが存在することを知っている方も多いのではないかと思う。だが、そもそもイルミナティ・カードとは何なのか。

これは1975年に発表された『イルミナティ』という小説を元に、1982年(一説には1984年とも)に発売された戦略カードゲームの一種である。

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筆者所有の「イルミナティ・カード」ゲームパッケージ。発売当時から、購入するときにどんなカードが入っているのかはわからない。

 

今でこそ成人がスマートフォンのゲームやカードゲームに興じる姿も珍しくはなくなったが、当時はまだ、欧米はもちろんゲーム大国の日本ですら、成人をターゲットにした戦略カードゲームの販売は異例中の異例だった。

なにしろゲームの歴史を変えたファミリーコンピューターの登場が1986年、カードゲームの代名詞ともなった「マジック:ザ・ギャザリング」の登場に至っては1993年である。そう考えると「イルミナティ・カード」の存在自体、一種のオーパーツといっても過言ではないかもしれない。

ゲームのシステムにしても、当時の世界観とはあまりにもマッチしていない。なぜならこれは、いわゆるトレーディングカードを使用したゲームだったからだ。具体的には、ブリスターパックと呼ばれるパックを、なかにどんなカードが入っているのかわからない状態で購入し、自分の戦術、戦略に合ったカードのみ、デッキと呼ばれる手持ち札として使用する。

当時のブリスターパックのカードはスポーツ選手などのトレーディングカードが中心であり、ゲームのカードとして何が入っているのかわからないという方式をとったのは、イルミナティ・カード以前には存在していない。

またこのゲームでは、プレイヤー同士が対等の条件で戦うというゲームの概念をも崩している。相手がどのようなカードを持っているのかわからないため、ゲームが始まるまで戦略の立てようがないからだ。

ポーカーであれブラックジャックであれ、古典的なカードゲームは事前に、どんなカードがそこにあるのかがわかっている。この予備情報があるからこそ、ゲームとして成り立つのだ。しかし、イルミナティというカードゲームは、それぞれのデッキのカードによって戦力差が圧倒的なまでに変わってしまうのである。とてもフェアなゲームとはいいがたい。

だが、現実の世界を見れば、完全にフェアな状態で行われた戦争など、どこにも存在しない。その意味においてイルミナティというカードゲームは、リアルな争いをカードゲームの形に落としこんだものといえるのである。

 

黒服の男たちによって闇に葬られた!?

通常、この手のゲームでは、同じ属性のカードで持ち札を構成するのが一般的だ。しかしイルミナティというカードゲームでは、そうではない。

一例を挙げれば、自身がテロリズムのカードで攻撃したい場合、デッキには必ず資本家と宗教家というまったく別の属性のカードがなければならない。また政治家のカードで攻撃しようと思った場合には、陰謀と資本家のカードが必要となるのだ。

これは現代社会ではきわめて納得のいく設定だが、1982年といえばまだ冷戦時代である。現代のような複雑な世界と政治体系が一般認知されるはるか前に、こうした基本ルールが設定されていたというのは、まさに驚くべきことだ。

そして、さらに奇妙なのはこのカードゲームの作者が事実上の匿名であり、イラストを担当したとされる人物も実在が疑わしいということだ。

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「イルミナティ・カード」の公式ギャランティー。多くのクレジットが書かれているが、実在するかどうかは疑わしい。

 

しかも――イルミナティ・カードは1995年に突然、製造と販売が中止され、短い歴史を終えることになる。その過程もきわめて不明瞭であり、情報が少なすぎるのである。

一般報道ではCIAにより、容疑も理由もはっきりしないまま捜査が行われたためだとされている。関係者やカード・コレクターの証言によると、黒いスーツを着た男たちが関連企業に一斉に入り、ほんの数時間ですべてを持ち去ったというのである。明らかに、FBI のようなまともな刑事警察機構が行う捜査方法ではない。

しかも奇妙なことに、イルミナティ・カードは今でも、投機目的で売買されているという現実がある。

もちろん、製造と販売が禁止されたもの、あるいはロット数が少ないものであれば、カードに限らずそれは物品投機の対象になるだろう。しかしそれは、あくまで合法的な物品に関しての話である。

イルミナティ・カードが政府による公式な捜査を受け、関係者の有罪判決が確定しているのであれば、民間人の所持は禁止されているはずなのだ。ところが現状では、いまも立派な投機の対象になっているのである。

つまり一連のイルミナティ・カードに関する捜査は、アメリカ連邦法に基づいたものではないということが想像されるのである。なんとも奇妙な話だが、なぜ、そのようなことになってしまったのだろうか。

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(ムー2019年7月号より抜粋)

文=嵩夜ゆう

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