国産大豆肉の“日本感”とは? 代替肉最前線3/グルメの錬金術師

文=久野友萬

大豆由来のソーセージ

日本のオリジナルな代替肉はどういう状況なのか? グリーンカルチャー株式会社は2019年夏からオリジナル商品として、大豆由来のソーセージを発売予定だ。代替肉のソーセージは、ベジタリアンブッチャーにしても台湾素食にしてもすでにある。だからそういう意味では珍しくはないが、なんといっても国産だ。

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国産初の大豆からできたソーセージ

 

長年、大豆ミートは日本では肉の増量剤として使われてきた。加工食品の代表のようなソーセージにも、当然使われてきたが、代替肉とは扱いが違う。100パーセント大豆ミートのソーセージは日本では作られていない。ソーセージを食べたことがあるからといって、ソーセージを作れるかどうかは別の話である。

代表取締役の金田郷史氏は生粋のベジタリアン。

「会社を作ったのは2011年です。僕は18才からベジタリアンなんですよ。留学先のアメリカでは普通にベジタリアンフードが売られていましたが、日本に帰ってくると買える状況じゃなかった。この状況を何とかしたいと思い、起業したんです」

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グリーンカルチャー株式会社 代表取締役 金田郷史氏。

 

当初はベジタリアンやビーガンのための通販会社だったが、欧米での代替肉ブームを受け、チキンナゲットを開発、販売し、代替肉市場に進出する。

「代替肉、総称ではプラントベースフードと呼びますが、なぜ欧米で火がついたかと言うと宗教や文化の縛りを受けない食べ物だからなんですね。宗教の戒律で豚肉や牛肉が食べられない、動物愛護や環境保護の観点から肉を食べない、そういう人でも受け入れられる」

さらにプラントベースフードは加工食品が主流であり、ハムやベーコンのように誰でも簡単に調理できる。誰でも手軽に食べられる新しい肉なのだ。

「日本で話題になり始めたのが2016年ごろですね。2017年に内閣府の職員食堂にベジタリアンメニューが入ったり、テレビで取り上げられるようになりました。2018年になるとベジタリアンやビーガン以外の方も面白そうだなと購入され始めたのです」

同時に大豆ミートの生産量が激増する。大豆ミートを加工してプラントベースフードが作られる。プラントベースフードの市場が伸び始めたことで、大豆ミートの生産量も増え始めたのだ。

 

「生産が追いつかず、新しく工場の建設が始まっているそうです」

調査機関が行ったプラントベースフードに関する意識調査でも、意識的に肉や魚を減らしているという人はおよそ16パーセント。さらにその中の2割の人たちは、毎日肉製品を減らしているという。思ったよりずっと多い。

「女性は美容、男性は健康目的で肉類を減らす傾向があります。特に男性は年齢が高めの人が多い。メーカー側もメタボや糖尿病など健康が気になった男性を巻き込んでいこうという戦略で、プラントベースフードは価格が若干高めなんです。スーパーで売られているレトルトのハンバーグが120円なら、国内メーカーの出している代替肉のハンバーグは300円ぐらいします」

 

健康・高齢者以外に、ベジタリアン向けのメニューが増えているのは、インバウンド向けの目的もある。海外からの観光客にベジタリアンや宗教上の理由で牛豚がダメな人がいるからだ。

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チキンナゲットは同社初の代替肉製品。オリジナル商品が100種類前後あり、他にベジタリアンブッチャーの製品なども広く扱っている。
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肉のミンチの代わりに大豆ミートのミンチの入ったギョウザ。
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大豆からできたから揚げ。

 

グリーンカルチャーではさまざまなプラントベースフードを取り扱っているが、やはり壁は味だ。

「代替肉のパテを食べた大体の方が、マル○ンハンバーグの味がするっていうんですよね。われわれはマル○ンの壁と呼んでいます」

大豆ミート自体には、当たり前だが肉の味はない。そこで香辛料や調味料を加え、味を肉に近づける。あるいは肉料理を分析し、それと合致するように成分を調整していく。その味が加工食品の域を越えない。海外でも、肉と比べた比較ではまだ肉には及ばない。

「インポッシブルミートなんかはマル〇ンの壁を越えて、肉に近づけようとしていますよね。それとは別に、それはそういうものとして選んで食べればいいという意見もあり、肉にどこまでも近づけることが本当に望まれているのか、業界でも議論されています」

 

ひとりあたりの平均では、アメリカ人は日本人のおよそ3倍も肉を食べる。だからこそインポッシブルミートのように本物そっくり(血の混じった肉汁まで再現している)な代替肉が登場し、注目もされているわけだ。しかし日本人はアメリカ人ほどには肉に固執していない。

「だから私どもは肉に近づけるという面だけにこだわらず、日本らしさがあるかどうかを重要視しています。ハンバーグひとつとっても、アメリカのハンバーグはとにかくワイルドでスパイシーですが、日本のハンバーグは市販のものでもどこか家庭の味がある。日本らしい味付けで素朴においしいもの。私たちはそちらに寄せています。それを海外に持っていくとウケるんですね」

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ケーシングといい、原料を専用の皮に入れて加熱する。
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見た目も味もまるで日本のソーセージ。肉を使っていないとは信じがたい。

 

国産のプラントベースソーセージを試食する。

「ソーセージの材料は大豆ミートです。そこに味をつけてスライム状に練ったものを人工の皮に入れて加熱し、皮をはがすと出来上がりです」

肉を使わずにソーセージの食感を再現することは難しいが、そこにこだわり、肉のソーセージと変わらない食感を実現した。

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ソーセージの原料は大豆ミートに香辛料などを練り込んだもの。肉らしく見えるように着色してある。

 

生地は目が細かく、まさにウイ〇ー。よくホテルの朝食バイキングで山盛りで出てくる、あのソーセージの味。噛み切る時の感触が肉のソーセージとはどこか違うが、そういうソーセージといわれれば納得するレベルだろう。欧米のようなスパイシー路線ではなく、どこか素朴で、日本感という同社のコンセプトが反映されている気がした。これなら家庭でも普通に受け入れられるだろう。

「われわれはプラントベースフードを普及させ、一般の人にも食べていただけることを目標にしています。同時に当社の製品を国内だけにとどめるのではなく、漸次増加している海外への輸出にも力を入れていきたいですね」

文=久野友萬

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