1999年7の月から20年――大予言者ノストラダムスの予言は、今も生きている!

文=松田アフラ

1999年に人類は滅亡しない!

1973年11月。たった一冊の本が、日本中を恐怖と絶望のどん底へと叩きこんだ。五島勉氏による『ノストラダムスの大予言 迫り来る1999年7の月、人類滅亡の日』である。

「人類の進歩と調和」を脳天気に掲げる万国博覧会(EXPO’70)を以て幕を開けたこの国の70年代は、73年を契機とする石油ショックや公害問題、小松左京のSF小説『日本沈没』などにより、すっかり終末モードに突入していた。そんな世相に止めを刺した、いわば「真打ち」こそ、1999年人類滅亡説をひっさげて登場した、ノストラダムスの『予言集』=『諸世紀』(以下、本記事では『百詩篇』とする)だったのである。

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ナンバリングされたノストラダムスの「予言詩」。左上の「Ⅹ-72」が、「1999の年、7の月……」の有名な一文だ。

 

同書はノストラダムスの『百詩篇』第10巻72番(以下、「X‐72」と表記)を、次のように紹介している――。

 

1999の年、7の月、

空から恐怖の大王が降ってくる。

アンゴルモアの大王を復活させるために、

その前後の期間、マルスは幸福の名のもとに支配に乗り出すだろう。

 

そしてここに登場する「恐怖の大王」を大量殺戮兵器による飽和絨毯攻撃、もしくは上空に溜りに溜った超汚染物質の降下と解釈し、これが1999年に人々の頭上に「降ってくる」ことで、人類は滅亡すると説いたのだ。当然ながら、予言の年である1999年からすでに20年を経た令和の時代を生きるわれわれは、1999年に人類は滅亡などしなかったということを知っている。

まずはひと安心である。だが、これははたして、ノストラダムスの予言が外れたということなのだろうか?

 

否、そうではない。

 

実は外れたように見えるのはあくまでも予言の「解釈」であって、彼の予言自体が外れたわけではないのだ。

そもそもノストラダムス自身は、1999年7月に人類が滅亡する、などということはひと言もいっていなかった。

そう主張したのは、あくまでも後世の「研究家」(の一部)にすぎなかったのだ。

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ノストラダムス博物館に展示されている、予言集『百詩篇』を執筆するノストラダムスのロウ人形。

 

生きているノストラダムスの予言

ノストラダムスといえば、もっぱら取り沙汰されるのは先の「X‐72」に代表される「予言詩」である。だが、予言好きな人の間では常識だが、『百詩篇』には詩のほかに2通の「書簡」が含まれている。1通は息子セザールに宛てたものであり、もう1通はノストラダムスが『百詩篇』を献本したフランス王アンリ2世に宛てたものだ。

この2通の書簡はきわめて重要である。まず何といっても「書簡」であるから、難解な韻いん文ぶんである「詩」と違って、明快でわかりやすい「散文」で書かれている。象徴的な「予言詩」はあれこれと解釈が必要になるが、散文である「書簡」なら、彼のいわんとすることも一目瞭然である。

その2通の書簡のうち、ノストラダムスの父親としての愛情あふれる「セザールへの手紙」には、次のようにはっきりと記されている。

「私はこれらの予言詩を少々曖昧な形で仕上げることを望んだが、それは現在から3797年までの絶えざる予言なのである」

この一節をごくごく素直に読むならば、ノストラダムスは「西暦3797年までの未来を予言詩として記した」としか解釈のしようがない。厳密には「3797年」という数字をどのように解釈するかという問題は残るが、1999年で人類が終わるというようなことはあり得ないとわかる。

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ノストラダムスの家の近くにあるエンペリ城の謁見の間。ノストラダムスはここで王妃カトリーヌに、1999年の恐怖の大王の正体を告げたとされている。

 

また、彼の「予言詩」には通常、内容の時期を示す具体的な年代はまったく含まれておらず、このことが彼の予言をさらに難解なものにしている(ノストラダムス自身、それを意図的に行っていると書簡に記している)。だが一方で、「アンリ2世への書簡」(日付は1558年6月27日)には、次のような一節があるのだ。

「この年の初めには、かつてアフリカで成された以上に大規模なキリスト教会に対する迫害があり、1792年まで続きますが、そのとき、時代を一新するようなことが起こるはずです」

あまりにもさらりと書かれているので、この一文が書かれたのが1558年だという事実をうっかり失念しそうになる。

だが、ノストラダムスはこの散文で、「大規模なキリスト教会に対する迫害」「時代を一新するようなこと」が1792年まで続く、とあっさり洩らしているのである。

これが「フランス革命」の正確な予言でなくて何であろう(1792年は王政廃止とフランス第一共和政樹立が宣言された年)。

ノストラダムスは自らの祖国を襲うこの災厄(彼にとって「革命」は災厄にほかならなかった)にことさら懸念と関心を抱き、多くの「予言詩」をそれに充て、細部に至るまで的中させている。彼の予知能力の正確さは、これひとつだけで十分証明できていよう。

そんなことから、かの分析心理学の泰斗であるカール・グスタフ・ユングはノストラダムスを大いに評価し、彼を黙示録のヨハネの衣鉢を継いでこの世に現れるべくして現れた本物の予言者と定義している。

「X‐72」が外れた(ように見える)という一事をもって、あたかもノストラダムスを「偽予言者」であるかのごとく断罪するのはあまりにも軽率にすぎる。

1999年7の月から20年目を迎えた今こそ、われわれは再度、ノストラダムスに注目すべきなのだ。

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(ムー2019年8月号より抜粋)

文=松田アフラ

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