光を固めてスター・ウォーズのライトセーバーを作れる!?

文=川口友万

ライトセーバーの実現性

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本日、5月4日は「スター・ウォーズ」の日。デス・スターを思わせる巨大構造物ダイソン環については別の記事を参照いただくとして、今回はシリーズを代表する「ライトセーバー」について考えてみよう。

映画『スター・ウォーズ』のライトセーバーは光でできた剣だ。映画の中でルーク・スカイウォーカーやダース・ベイダーは、ライトセーバーを金属の剣のように打ちつけあう。だが光をぶつけあおうとしても、互いに互いをすり抜けてしまう。そもそも剣の形にもならない。質量のある物で光をさえぎるか、または発光する物質を光らせることで光の見た目を形にすることはできるが、それでは蛍光灯を手に持っているのと変わらない。

だから従来の物理の常識からすればライトセーバーはあくまで空想の産物となる。

だが、2013年年9月25日に『ネイチャー』誌で発表された論文によって、光の剣は現実のものに近づいた。超低温下での原子の振る舞いを研究していたハーバード大学教授のミハエル・ルーキンとマサチューセッツ工科大学教授のヴルダン・ブルテックが、複数の光子に分子を形成させることに成功したと発表したのだ。

ルーキンらの実験条件下では、光が物質に変わる。誤解を恐れずに極端なことをいえば、そこに光の塊ができる。剣の形にして、ガンガン打ちつけ合うことができるライトセーバーが実現するかもしれないのだ!

ライトセーバーの正体

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そもそもライトセーバーは、「特殊なクリスタルから発生する光が磁場を帯び(実際には光は磁場の影響は受けない)、アーク放電を起こすように光を曲げる」という設定らしい。光自体は質量を持たないが、磁気を使って光を曲げている。磁石のN極とN極、S極とS極が反発するように、その磁気が反発することで、ライトセーバーは打ちあうことができるという。高出力のレーザーを磁気的に閉じ込めたのがライトセーバーというわけだ。レーザーを使って金属を加工するように、ライトセーバーは対象を焼き切るということだ。

また、ライトセーバーは「フォースによってクリスタルから放射される光が刀状に成形される」のだという説もある。ただ、フォース説を持ちだすとハン・ソロがジェダイの騎士でもないのにライトセーバーを使ったシーンの説明に困るので見なかったことにしよう。

媒体を通った光に質量が生じた

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今回の論文では「レーザーから放出された光子が特殊な媒体を通ることで結合し、ひとつの分子となる」もので、フォースによって刀を形成するライトセーバーとイメージは近い。特殊な媒体(フォース)のご加護で光子が質量を持つ状況を作り出すわけだ。

実際の現象は、ライトセーバーのように鉄壁も溶かす超高温ではなく、真逆の超低温下で起きた。実験の舞台は「ルビジウムの雲」だ。真空槽をルビジウム原子で満たし、レーザーを照射して絶対零度近くまで温度を下げる。冷却され、運動エネルギーが低下したルビジウム原子は、原子雲と呼ばれる原子が凝集した状態(ルビジウムの雲)になる。

ここで光に何が起きるのか? それを説明するために、光の基本的な性質をふたつ、知ってから先を読んでほしい。

まず、光は媒体によって速度が変化する。たとえば水の中では光の速度は真空中の4分の3までスピードが落ちる。光子のエネルギーが媒体の原子にエネルギーを奪われるためだ。このエネルギーは光子が媒体を出ると光子に再び吸収される。なので、水から出ると、光の速度は元に戻る。これは媒体がルビジウムの雲でも一緒だ。

次に、媒体にふたつの光子を進入させる場合には「リュードベリ励起封鎖」という物理現象がある。極低温の原子雲にふたつの光子を進入させても、同時に媒体を通り抜けることはできない。必ず一方は媒体の外へ弾きだされる。

ルビジウムの雲も極低温の原子雲である。なので、当然ふたつの光子を通過させようとしても、ひとつは弾かれると予想されたのだが……。驚いたことに光子はふたつともルビジウムの雲を通過したばかりか、雲を出たときにはひとつの分子のように合体していた。互いに影響しあわないはずのふたつの光子が非常に強く影響し合っていたのだ。

もしこれをふたつの光子ではなく、レーザービーム全部で行えれば、光が絡みあってライトセーバーが実現するかもしれない!

ただし、残念ながら、今のところはいつできるのか、本当にできるのかどうかもわからない。だが、別の分野への応用もありうる。光子が互いに干渉し、絡みあうなら、光子を量子コンピューターに利用できる。光コンピューターならぬ光子コンピューターも想像できる。

ともあれ、今回の発見をきっかけに、光子に対する考え方がパラダイムシフトを起こした。

想像を広げよう。

本来は質量を持たないものが物質化するということは、世間で幽霊と呼ばれるものは光子が結合したものかもしれない。光子の結合は極低温で発生するから、幽霊が現れると気温が低下する……? 想像することが科学の第一歩だ。

 

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「光あれ」で世界=物質ができたという古文書もある。光による創成はまた別の話だ。

 

文=川口友万

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