30日間、食べることをやめてみた 「不食」の人・榎木孝明

文=文月ゆう

不食で心身はどう変わるのか?

Enoki_2

2015年5月から6月にかけて、俳優の榎木孝明氏は30日間の不食に挑んだ。榎木氏によれば、不食はひとつの実験だったという。その記録が克明に綴られた『30日間、食べることやめてみました』(マキノ出版)には、こうある。

「食べなければ私たちは本当に死んでしまうのか。それは、私たちの固定観念にすぎないのではないか。文字どおり食べることをやめたとき、人の心と体に何が起こるのか。それを知ろうというのが、私のこのたびの試みです」

フェイスブックで情報を開示しながらの不食生活。安全を期して、心臓外科医である南淵明宏医師が勤めるクリニックに寝泊まりし、定期的に診察を受けた。開始と同時にフェイスブックのアクセス数が飛躍的に増えていき、最終的には26万件超に達したという。

この大胆な実験は、大方の予想を裏切り、問題なく終了した。いや、それどころか、榎木氏の体調はいつもより爽快でさえあったようだ。朝からよく動いても疲労感がなく(20日目)、古武術の稽古で体が軽くなったことを実感し、普段よりスピーディーに動けた(22日目)。お世話になっている気功師には、健康と精神のレベルが向上しているといわれた(24日目)。持病の膝痛は軽減し、十数年来の腰痛も、不食中は影を潜めていた--。

また、空腹の辛さを感じたことはなかったそうだ。そもそも不食は、「我慢とは無縁の行為」だと、榎木氏はいう。

 

食べなくても体力は落ちなかった

enokihon

実は、榎木氏が不食を体験したのは、これが初めてではない。榎木氏は20代のころからインドやチベットの山間部を幾度となくひとりで訪れ、すんなりと食事にありつけないような状況下で、数週間から1か月ほど、山を歩きまわっていたというのだ。

帰国時に体重を測定すると、たいてい10キロほどダウンしている。とはいえ、なじみの整体師にチェックしてもらうと「どこも悪くないよ」といわれる。榎木氏の自覚としても、むしろ東京で仕事をしているときのほうが肉体的には辛いという。そんな体験をくり返すうちに、食べないことが健康につながるのではないかという思いが芽生えてきたそうだ。

明確な目的をもって不食に臨んだこともある。2006年のことだが、役づくりのために2週間で約15キロ体重を落としたのだ。このときは、固形物をいっさい食べず、ジュース類のみで過ごした。その期間中も、普段以上に元気いっぱい。食べないことで体力が落ちるとは限らないと、しみじみ実感したそうだ。

参考までに、30日間の不食によって減った体重は10キロ。摂取カロリーでいえば、2006年より少ないはずだから、15キロ以上減ってもおかしくはない。この違いはどこから生まれたのか?

「意識の差だと思います。役づくりのために減量したときは、やせることが目的でしたから、それを意識しました。しかし今回の不食実験は、目的が違います。おそらく、自分の適正体重まで減ったら、そこでとまるだろうと予想していました」

意識の差が違いを生む。意識が変われば、現実が変わる。それが榎木氏の考えだ。これは、不食を理解する重要なポイントでもあるようだ。

 

(ムー2016年6月号より抜粋)

文=文月ゆう

  • 1

関連商品

ムー2016年6月号

ムー2016年6月号

価格:800円
発行:学研プラス
発売日:2016/05/09
総力特集「不食」が解き明かす人体の神秘と進化の謎

この記事と同じトピックを探す

関連記事

編集部おすすめ

アクセスランキング

  • デイリー
  • ウィークリー
  • トータル