呼吸のみで生きられるブレサリアン 「不食」の人・秋山佳胤

文=文月ゆう

愛と不食の弁護士

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「ブレサリアン(breatharian)」と呼ばれる人々がいる。ブレス(breath)、つまり呼吸だけで生きる人々のことだ。「愛と不食の弁護士」として知られる秋山佳胤氏は、そのひとりである。

秋山氏が不食となった直接的なきっかけは、2006年に、オーストラリアのプラーナ研究者、ジャスムヒーン氏のワークショップに参加したことだ。知人からパンフレットをもらったとき、ジャスムヒーン氏の笑顔にひかれ、参加してみたくなったという。

ワークショップでは、ジャスムヒーン氏の言葉ひとつひとつに深くうなずいた。感動で胸がいっぱいになり、食事をすることも忘れるほど。その感覚が継続し、5日間の開催期間中は、何も食べずに過ごした。

これを機に、秋山氏は徐々に食事の量と質を減らしていった。3回を2回に、2回を1回にし、1回ごとの量を減らすのと並行して、肉や乳製品を控える、玄米菜食ベースにする、野菜と果物中心、果物だけ、フルーツジュースだけと、段階的に質を変えていったのだ。

2年後の2008年、ジャスムヒーン氏が再来日。ワークショップに参加し、Oリングテストで自分の体にプラーナ摂取率を尋ねると、「100パーセント」という答えが返ってきた。その後も、ワークショップのたびにプラーナ摂取率を確認した。すると、2010年には100パーセント以上、2012年には200パーセント以上、2014年には500パーセント以上という結果となった。

現在では、食べる・食べないにこだわらず、楽しく生活しているというが、そんな秋山氏は途方もなくエネルギッシュだ。睡眠時間は2時間もあれば十分、100メートル走をすれば10年前より好タイムで、マチュピチュやアマゾンへ行けば現地のガイドより速く歩く。

 

地獄へ行って人生観が変わる

実は、秋山氏は地獄を見ている。3度目の司法試験に落ちたとき、無茶な試験勉強も手伝って心身がボロボロになり、ある日、人事不省に陥ったのだ。

気づくと、秋山氏は底知れない暗闇の中にいた。「ここが地獄の1丁目か」--なぜか、そう納得した。

残酷、絶望、凶暴、悲しみ。そんな暗黒のエネルギーが、圧迫感をもって強烈に伝わってきた。あたりには異臭が漂う。ヘドロの腐敗臭を何万倍にも刺激的にしたような悪臭だ。闇に慣れてくると、人とも獣ともつかぬ存在たちが争いあう姿が見え、叫び声や罵声、爆弾の音、殴りあう音などが、耳をつんざいた。

このとき、なんと秋山氏は、圧倒的な絶望と虚無の中で、徐々に開き直った。闇や悪臭、恐怖、絶望にも少しずつ慣れ、最終的には地獄そのものにも慣れた。すると、地獄には地獄のよさがあるとわかってきた。強者が弱者を倒すのは正義で、頭を使って相手をだますのは知恵。それなりの秩序と規範が見えた。

「地獄で暮らすのも悪くない」

そう思った瞬間、目の前の景色が一変した。秋山氏は、アパートの自室で倒れ、友人に介抱されていた。

この後、秋山氏の人生は激変した。人は時間さえかければ、どんなものにでも慣れることができると、身をもって知った。「慣れる」とは、適応力といってもいいだろう。秋山氏は、地獄にすら慣れるという体験を経て、人間の潜在的な適応力に目覚め、常識に縛られるのをやめたのではないか。それが不食を可能としたように思われる。

 

(ムー2016年6月号より抜粋)

文=文月ゆう

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