「宇宙と芸術展」で人類の「エイリアン遺産」が再検証される!

うつろ舟=宇宙船という発見

本誌読者なら周知であろう、「うつろ舟の蛮女」。享保3年(1803)、常陸の国の鹿島郡京舎ヶ浜に、幅5.5メートルの鉄釜のような舟が漂着し、中から青白い肌と赤毛の異国人のような女性(蛮女)が現れた事件だ。奇妙な遭遇はお上の耳にも届けられたが、まともに取り調べられることなく、蛮女は再び舟に押し込められ、海へ帰されたという。

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「うつろ舟の蛮女」(滝沢興継 作、屋代弘賢 編『弘賢随筆』より)/1825年(江戸時代)/所蔵:国立公文書館。

 

今でこそ、うつろ舟は地球外から飛来した宇宙船であり、蛮女は異星人ではないかと「江戸時代のUFO事件」として解釈されている。だが、当時は「奇妙な漂着物」としてしか記録されていない。当然だ。すでに地動説や万有引力の法則は日本に紹介されていたものの、空の遙か向こうに広がる世界、空間について、ましてやそこに自分たちと同じ人間のようなものが存在することは、江戸時代の想像を超えていたからだ。

つまり、ロケット技術と宇宙船によって人類が地球外に広がる宇宙を認識したとき、はじめて、うつろ舟がやってきた海の向こうの異界が宇宙となり、うつろ舟は宇宙船となった、ということだ。

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「常陸国鹿島郡京舎ヶ濱漂流船のかわら版ずり」/1844年(江戸時代)/所蔵:船橋市西図書館。

 

来たる宇宙時代へ想像力で備える

現在、東京・六本木の森美術館にて開催中の「宇宙と芸術展:かぐや姫、ダ・ヴィンチ、チームラボ」は、宇宙と対峙した人間によるアート展である。「竹取物語」で描かれた月の世界と死生観、天文学史を通じて記述されてきた宇宙像、そして地球外に生きる生命に、来たるべき宇宙旅行時代に見える世界まで、人間が「宇宙」をどう捉えようとしてきたかを一望できる。

探査機が到達した月面や火星地表の風景に、宇宙望遠鏡が写した数百万光年先の星雲の姿などを、われわれ人類は科学の目を通じてそれらを見ている。見えたところを起点として、宇宙への想像力は歩を進める。

新たな起点から振り返ることで、かぐや姫の物語を異星人との交流譚として読むことが可能になるように、宇宙を知ることは、人間にとって、内面を見つめ直すことと同義だ。

「宇宙と芸術展」において、生命をテーマに活動を重ねる作家パトリシア・ピッチニーニによる宇宙人像「ザ・ルーキー」を見逃すことはできない。揺り籠に包まれた赤子のような肉体は、宇宙空間に適応したものとして提示されている。無気味さを覚えるのは、生々しいディテールによって生物がこのような姿になるべき、あるべき状態を想像してしまうからだ。

将来、宇宙への深い接触を果たした時代において、この作品は異なる意味合いを持つことになるだろう。ある種の予言だったものとして、あるいは、作家自身を含めたコンタクティ事例として。

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「ザ・ルーキー」(パトリシア・ピッチニーニ 作)/2015年/作家蔵//Courtesy:トラルノ・ギャラリー、メルボルン、ロズリン・オクスレイ9・ギャラリー、シドニー、ホスフェルト・ギャラリー、サンフランシスコ。

 

宇宙への入り口は、ロケット発射場だけを意味しない。望遠鏡や探査機によって穿たれた異世界への突破口は、人類共通の叡智をもたらし、人類を進化させる。「宇宙と芸術展」は、宇宙が空の彼方ではなく、あなたの内に燃えていることを知らしめるだろう。

「宇宙と芸術展 かぐや姫、ダ・ヴィンチ、チームラボ」

曼荼羅図からガリレオ・ガリレイの手稿、隕石、宇宙遊泳体験ができるインスタレーションまで〝人間と宇宙〟の関わりを象徴する作品や資料約200点を展示。

  • 会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)
  • 入館料:一般1600円(前売り1400円)
  • 会期:開催中~2017年1月9日(月・祝)まで *会期中無休
  • 開館時間:10:00-22:00(火曜のみ17:00まで)
  • 問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • URL http://www.mori.art.museum/contents/universe_art/

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