
オカルト短歌 第4回 「妖怪」
講評=笹公人
女心は不滅なのです。
<優秀作品>
VRゲームにうかれろくろ首いつのまにやら蝶むすび 【笛地静恵】
<佳作>
ばあちゃんの形見の本にメモがある「座敷童子はグラタンが好き」 【葛紗】
姿見の前にだらりと掛けられた一反木綿の尻尾たなびく 【鶏尾ねじ】
国境にぽつんと一人佇めるぬりかべの目にメキシコの町 【異能兄弟】
小田急は終日ダイヤ乱れおりデイダラボッチの線路塞ぎて 【中山一朗】
体型で妖怪呼ばわりしないでよ私古参の地縛霊です 【小川けいと】
笛地さんの歌。VRゲームに夢中になったろくろ首が上下左右に首を動かしていたら、いつのまにか首が蝶むすびになってしまっていたというオチです。定番の妖怪ギャグにVRという最先端のものを組み合わせたところが手柄です。妖怪のキュートな面を引き出しています。
葛紗さんの歌。ばあちゃんは、座敷童子の食事の面倒を見てあげていたのでしょう。単なるメモですが、「あとは頼んだ」という遺言にも思えてきます。座敷童子のその後も気になります。
鶏尾さんの歌。姿見と一反木綿の取り合わせが絶妙でした。姿見の前に座る女性は、それが妖怪だと気づいているのでしょうか。そのあたりも謎めいていてよかったです。
異能兄弟さんの歌。時事問題を妖怪にからめた意欲作です。妖怪まで利用するところにトランプ大統領らしさが出ています。
中山さんの歌。デイダラボッチとは、日本の各地で伝承される巨人。山や沼を作ったという伝説を聞きますが、線路を塞ぐのはやめてほしいですね。あぐらでもかいているのでしょうか。相模原市のデイダラボッチ伝説も有名なので、小田急にも説得力がありました。
小川さんの歌。たしかに太っている霊は妖怪っぽく見えますよね。なぜ霊が怖がられ、妖怪が親しまれるのか、このあたりに秘密が隠されていそうです。そして、地縛霊になっても女心は不滅なのです。
次回、6月号掲載のお題は「星」。 夜空の輝きからカリスマタレントまで、憧れの存在への思いのたけを! 締め切りは4月5日(水)必着です。
応募方法は下記にて。
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郵送:〒141-8691 東京都大崎郵便局私書箱67号 学研「ムー」編集部 オカルト短歌 係
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笹師範をうらなせる名作、怪作をお待ちしております!
選者 笹 公人(ささ きみひと)
「未来」選者。現代歌人協会理事。歌集『念力家族』(NHKで連続ドラマ化)、『念力図鑑』、『抒情の奇妙な冒険』、編著『王仁三郎歌集』などがある。
(「ムー」2017年4月号より転載)
講評=笹公人
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