人類史上最古のパワーストーン ラピスラズリの魔力

文=高橋桐矢

王族に愛された最強の聖石

 

「ムー」2017年5月号の特別付録にもなっているラピスラズリは、人類史上もっとも古くから尊ばれてきた聖なる石です。紀元前4000年ごろには、その価値がすでに認められ、神々への捧げ物あるいは王権や霊力を象徴するものとされていました。また、それ以前の「はるかな超古代」には、アトランティスの礎石として用いられたという伝説もあります。

 

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ラピスラズリという名は、ラテン語で石を意味する「ラピス」と、ペルシア語の空や青を意味する「ラズワルト」という語に由来します。その深い青は夜空を、ところどころに交じった金の輝きは、夜空にきらめく星を表すともいわれています。

 

この石の価値を最初に発見したのは、初期のメソポタミア文明を形成したといわれる古代民族シュメール人です。今から6000年前、バダクシャン山地(現在のアフガニスタン)ではすでにラピスラズリの採掘が行われ、ペルシア砂漠を渡り、チグリス、ユーフラテス川流域に栄えていたシュメール人の都市国家の神殿に奉納されていました。貴重なラピスラズリを運ぶために整えられた交易路は、古代史研究者の間で「ラピスラズリの道」と呼ばれています。

 

シュメール神話には太陽神、月神、大地の神などが登場します。美しい夜空を思わせるラピスラズリは、金星の女神イナンナ(メソポタミア神話ではイシュタル)の石とされました。この女神は、愛と豊穣、さらには戦いと王権を司ります。

 

シュメール神話の女神イシュタル。
シュメール神話の女神イシュタル。

 

古代メソポタミアで生まれた世界最古の物語『ギルガメシュ叙事詩』によれば、女神イシュタルは、美しい英雄ギルガメシュに心を奪われ、「ラピスラズリと黄金でできた二輪車を贈りましょう」などと甘い言葉を囁いて誘惑したといいます。あいにくギルガメシュは、この誘惑に乗りませんでしたが、ラピスラズリが黄金に並ぶほど魅力的な石であったことは、イシュタルの言葉から推察できます。

 

また、ギルガメシュには振られたものの、イシュタルは120人もの愛人を持つ魅力的な女神で、欲するものすべてを手に入れようとする激しい女神としても知られています。ラピスラズリには、この女神の強大な力が宿っているのです。

 

王権を守護する霊力の高い石

 

イシュタルの力を宿したラピスラズリは、王権を守護する宝石として王冠を飾り、霊力の高い護符としても用いられました。その一例として、胴と羽がラピスラズリ、頭と尾が黄金で、獅子の頭を持つシュメールの霊鳥アンズーの護符が、シリア博物館に収蔵されています。

 

アンズー鳥の護符。頭と尾が黄金、胴体がラピスラズリ。シリア博物館蔵。
アンズー鳥の護符。頭と尾が黄金、胴体がラピスラズリ。シリア博物館蔵。

 

また、歴代のシュメール王は、ほかのどんな石よりも高価なラピスラズリを友好の証としてエジプト王に贈りました。

 

当然エジプトでも、ラピスラズリを身につけるのは王族や神官に限られていました。ツタンカーメンの黄金マスクにもラピスラズリが使われています。

 

また、王族の墓からは、心臓や目をかたどったラピスラズリ製の護符や、聖なる甲虫スカラベなどが数多く出土しています。なかでもラピスラズリと黄金で縁取られた「ラーの目」には、強い守護の力があると信じられていました。それらは死者の旅を守り、助けるために必要不可欠なアイテムだったのです。

 

また、前出の女神イシュタルは、夫を追って冥界に下った逸話でも知られています。死後の世界を重んじるエジプトで、イシュタルの石であるラピスラズリが重んじられたのは、ごく自然なことといえるでしょう。

 

ちなみにイシュタルの冥界下りは、死した妻イザナミを追って黄泉国へ下ったイザナキのエピソードとの類似性が指摘されています。

 

瑠璃光を放ち、この世を浄化する

 

日本には、少なくとも奈良時代までにラピスラズリが渡来したと考えられています。

正倉院には、ラピスラズリの原石が何個もあしらわれた「紺玉帯」と呼ばれる宝物があります。普通の貴族には手の届かないものであったため、聖武天皇その人が使われたのではないかとの見方もあります。

 

また、ラピスラズリの和名である「瑠璃」は、仏教では七宝のひとつとされ、薬師瑠璃光如来(薬師如来)や、その浄土である東方浄瑠璃世界(瑠璃光浄土)と深い関係があります。たとえば平安末期に後白河法皇が編纂した歌謡集『梁塵秘抄』には、次の歌が収録されています。

 

「瑠璃の浄土は潔し/月の光はさやかにて/像法てんずる末の世に/あまねく照らせば底もなし」

 

薬師如来が治める瑠璃光浄土は、清らかな月の光に満ち、その光が、末法の世といわれる現世をもすみずみまで照らし、清めてくれるというのです。

 

薬師如来のご利益といえば、心身の癒しに加えて、災禍の消去と衣食住の満足。興味深いことに、パワーストーンの世界でいわれているラピスラズリの効果と共通する部分があります。こうしたことからも、ラピスラズリに秘められた力が、たんなるファンタジーではないことがうかがわれるのです。

 

6000年以上の長きにわたって聖なる石とされ、富そのものであり、財と権力を守る護符としても用いられてきたラピスラズリは、今日でもなお人気が高く、その存在自体が伝説といってもいいほどです。

 

「ムー」2017年5月号は、ラピスラズリ・クリスタルを特別付録としラピスラズリの呪術的なパワーを引きだすための簡単な「魔法」をご紹介しています。そちらもご覧ください。

 

ツタンカーメンのマスク。頭部にはラピスラズリの粉末が、胸元にはカットした石がふんだんに使われている。
ツタンカーメンのマスク。頭部にはラピスラズリの粉末が、胸元にはカットした石がふんだんに使われている。

文=高橋桐矢

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