マグレガー・マザースが訳した「アルマデル奥義書」の効果

文=ヘイズ中村

高位の魔術師だけが使用できる!?

ひと昔前なら、魔術の奥義書は、噂や伝説を耳にするだけで、実物を手に取ることなど、かなわなかったものだ。

だが昨今では、奥義書の多くがインターネット上で公開されている。そのため、かつては謎に包まれていた奥義書の歴史なども解明が進んでいる。

だが、今回取りあげる『アルマデル奥義書』は、いまだに全貌が解明されていない神秘的な存在だ。作者の正体もわからなければ、どのように使われてきたのかも不明なのである。

この奥義書には、45体の天使や悪魔を呼びだすシジルが掲載されている。しかし、そのための手順や儀式次第が簡素すぎたり、逆に冗長すぎたりして、バランスが悪いのだ。また、さまざまな天使のシジルも、階級や対応惑星による整理がなされておらず、雑多な感じが強い。 aimadel1

こうしたことから『アルマデル奥義書』は、実力のある高位の魔術師向けに書かれた魔導書ではないかと推測されていた。つまり、情報のばらつきや未整理には、真意を隠すという意図があり、魔術師自身が知識と経験を駆使して解読&実践するというわけだ。

こうした伝説に拍車をかけたのが、この奥義書が日の目を見るまでに要した時間だ。

『アルマデル奥義書』の原本は、17世紀にドイツ語で書かれたことがわかっている。現在、市場に出回っているのは、魔術結社「ゴールデン・ドーン」の創立者マグレガー・マザースが、パリのアルスナル図書館に所蔵されていたフランス語写本を1890年代に英訳したものだ。

しかし、同じくマザースが訳出した『ソロモンの大鍵』などとは異なり、彼の死後60年以上が経過した1980年にようやく出版された。そのときを多くの魔術研究者が待ち望んでいたのだが、いざ出してみると、「なぜマザースは、この奥義書を翻訳しようと思ったのだろう」という、落胆まじりの評判が少なくなかったようである。

そのせいか『アルマデル奥義書』の魔術を実践したという報告も、あまり出てこなかった。

aimadel2-1
『アルマデル奥義書』を英訳したマグレガー・マザース。「ゴールデン・ドーン」の創立者として知られる。

では、『アルマデル奥義書』は何の役にも立たない代物なのだろうか?

安心してほしい。出版から約40年が経過した今では、さまざまな研究が進んできた。

まず、内容にばらつきがあるのは、この書の原本が、前述したアルスナル図書館に保存されている1冊しかないからだ。

奥義書は、世界にたった1冊だけ! というイメージが先行しがちではあるが、写本というものは、必ず複数のバージョンが存在するうえ、それぞれに抜けや書写の誤記があるのが普通だ。そのため、新たに1冊の本としてまとめる際には、できるだけ多くの写本や草稿を突きあわせ、抜けている部分を補い、矛盾点を解決するといった地道な作業が不可欠なのだ。

しかし、この書にはほかの写本が存在しないので、こうした補正作業ができなかった。そのためアンバランスな内容になったということが判明している。

つまり、わざと情報を秘匿したわけではなく、駆けだし程度の魔術師にも実践が可能だとわかったのである。

昨今のインターネット事情もあいまって、この奥義書のパワーをすでに多くの人が実感しているかといえば、ノーでもありイエスでもある。このような微妙な状態の裏には、少々複雑な事情がある。

つい最近まで『アルマデル奥義書』とは、アルマデルという魔術師が書いたものだろうと信じられてきた。そのため、魔術師アルマデルを捜し当てれば、原本に欠けている部分も発見できるのではないかと考えられ、そういう研究がなされた時期もあるようだ。しかし、見当違いだった。まったく別の事実が判明したのである。

 

それは、17世紀ごろには奥義書が、以下のように分類されていたということだ。

  • ・テリトミウス=発明の術
  • ・テオルギー=雄弁の術
  • ・アルマデル=気性の術
  • ・パウライン=発音の術
  • ・ルーリアン=記憶の術

 

これを見ればわかるように、アルマデルとは、利益を得たり、悪魔を呼びだしたりすることが目的ではなく、魔術師自身の性格を改善するという、地味だがとても重要な儀式の書なのだ。

古今東西、魔術師という人種は自己顕示欲が強く、見栄を張るのが常だ。そんな人間が「浪費癖を直す」「あがり症を改善する」といった目的をもって儀式を行い、望みどおりの効果を得たとしても、ブログなどを通じて世界に発信する可能性は限りなく低い。

そのため、『アルマデル奥義書』の儀式が有効だ、パワフルだ! といった実践レポートはゼロに等しかった。少なくともこれまでは。

最近になってようやく、熟年に達した魔術師たちが、実はあのとき……といったレポートを発表しはじめている。そこには「オカルトには詳しいが実社会にはなじめかった自分が就職できた」「孤独な魔術研究家だったが行動パターンを変えることで伴侶にめぐりあえた」「長年ぎくしゃくしていた家族と理解しあえた」など、とうてい他人事とは思えないような悩みと、それを解決した喜びが記されているのである。

 

つまり『アルマデル奥義書』は、一攫千金といった夢物語ではなく、現代社会で魔術を学ぶ者たちの欠点や問題点を本当の意味で解決するという、非常に珍しい効果を発揮する魔導書なのだ。

20180809jit

 

(ムー2018年9月号 実用スぺシャル「アルマデル奥義書 願望成就術」より抜粋)

文=ヘイズ中村

  • 1

関連商品

ムー 2018年9月号

ムー 2018年9月号

価格:820円
発行:学研プラス
発売:2018/08/09

この記事と同じトピックを探す

関連記事

編集部おすすめ

アクセスランキング

  • デイリー
  • ウィークリー
  • トータル