怪は子にも容赦なし/黒史郎の妖怪補遺々々

文・絵=黒史郎

妖怪補遺々々(ようかいほいほい)

ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々」! 連載第59回は、子供であろうが容赦ない怪を補遺々々します。

 

ヤンチャ坊主に起きた悲劇

京丹後市網野町には銚子山古墳があります。全長198メートルと日本海側では最大の古墳です。

この古墳の陪塚と考えられている寛平法皇塚の近くに1基の石塔があります。

ここには昔から「石塔に小便をかけたら命がない」といういい伝えがあります。

それゆえ、恐れて近寄る者はいなかったといいますが、その一方、この辺りは子供たちにとっての遊び場でもあったようなのです。
そういった子供たちの中にひとり、とてもヤンチャな男の子がおりました。

この男の子はあるとき、人生最大のヤンチャをやらかしてしまいます。

この石塔に登ってしまったのです

「そんなとこに登ったら大変だ!」

「おりろ、おりろ!」

他の子供たちは大騒ぎです。でも彼はヤンチャな性格ですから止めません。

「なにが大変だ、よし、小便をかけてやる」

あろうことか、タブーを犯すと声高に宣言し、ジャアジャアと小便をかけてしまいます。

他の子供たちは大慌てでその場から走って帰ってしまいました。みんな、祟りを恐れたのです。

 

翌日になって、村の子供たちは知ることになります。

あのヤンチャ坊主が、腹痛に苦しみながら死んでしまったことを。

 

「こわい、こわい」はこわいを呼ぶ

ヤンチャ坊主の次は、京都府宮津市の臆病な男の子のお話しです。

 

ある日、たいへん臆病な子供が親からお使いを頼まれました。

行き先は隣の村です。

臆病なので遠くへ行くだけで怖いのですが、親から叱られるのもまた怖いので、こわごわと向かいました。

すると途中で、こちらに背を向けて自転車の修理をしているおじさんがいました。

振り向いたおじさんは、それはそれは怖い顔をしていました。

臆病な子供ですから、その顔を見ただけで「怖い、怖い」となり、冷や汗をかきながら一目散に家まで戻りました。

「どうだった?」

親が聞きますと、子供は「怖かった」と答えます。

「何が怖かった?」

「怖い顔のおじさんがいた」

自転車を修理していたおじさんのことです。

「どんな顔をしていた?」

「怖くて、よく見ていなかったよ……」

「こんな顔をしていなかったか?」

そういったのは、自転車の修理をしていた、あの怖い顔のおじさんでした。

 

――というお話です。

怖い顔をしたおじさんは、おばけなのでしょうか。

それとも、先回りして臆病な子供の家に来ていた、ただのおじさんなのでしょうか。

 

<参考資料>

網野町教育委員会『ふるさとのむかしむかし』

宮津市教育委員会『みやづの昔話――北部編――』

 

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文・絵=黒史郎

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