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人間とも交わった北欧の妖精「トロール」/幻獣事典

世界の神話や伝承に登場する幻獣・魔獣をご紹介。今回は、北欧で人とも深く交流した妖精「トロール」です。

文=松田アフラ

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優しい巨人、また裏腹にイタズラ好きの小人というイメージもあるトロール。

 北欧諸国、特にノルウェーやデンマークの伝承に登場する妖精の一種であるトロール。通常は小人とされるが、まったく逆に巨人とされることもある。

 文学者ホルヘ・ルイス・ボルヘスによれば、元来はヨトゥンヘイムに棲み、戦神トールと戦った巨人族が「無骨なトロールに変えられた」という。かつての土着宗教における神々や崇高な存在が、新宗教との抗争の過程で不当に貶められるという話は、幻獣や妖怪のような存在には常について回る。

 民間伝承におけるトロールは親切で人付き合いがよく、人間との間で気前よく金を貸し借りするなど、友好的。ただし盗癖もあり、しばしば金品のみならず、女性や子供なども盗んでいく。また姿を不可視化したり、自在に変身したりといった魔力を使うこともある。さらに未来の出来事を予知し、人間に富を授けたり、また奪い去ったりすることもできるなど、さまざまな能力を持っている。

「分類学の父」と称される著名なスウェーデンの博物学者カール・フォン・リンネが、このトロールに関する報告を受けていたことは意外に知られていない。1764年、スウェーデン軍のアンデルス・スパルフェルト大佐が、スヴェン・イェンソンという兵卒に関する特別軍法会議の詳細をリンネに提供した。それによれば、このイェンソンは入隊以来、24年にわたって幾度となく軍務や行軍を抜けだしては、森の雌トロールと定期的に性交を繰り返していたというのである。このトロールは人間のような姿をしていたが、目が飛び出しており、毛のような長い尾を持っていたという。

 当時はまだスカンディナヴィアの奥深い森にこのようなトロールがよく出没するという話が広く信じられており、学者の中にすら、トロールこそが北欧の国々の先住民であったが、人間によって辺境に押しやられ、今ではこの実例のようにほんの少数しか生き残っていないのだ、と主張する者さえいた。だが、有尾人の存在自体は信じていたらしいリンネ自身も、この奇怪な話に関してはほとんど相手にせず、アカデミーの紀要に掲載することも拒否している。

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北欧の山中にあるトロール像。森に棲む巨人族(=先住民)というイメージも強い。
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