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「まぶしいドライブ」/読者のミステリー体験

「ムー」最初期から現在まで続く読者投稿ページ「ミステリー体験」。長い歴史の中から選ばれた作品をここに紹介する。

選=吉田悠軌

まぶしいドライブ

高知県/大村正子(14歳)
 昭和58年5月、私が中学3年生になったばかりのころです。
 新しいクラスで親しくなった友達K子、M子、T子の3人と、T子の兄とその友達のHさんの計6人で、ゴールデンウィークを利用してドライブに行きました。Hさんの運転する車で、2泊3日の予定でした。行き先は別に決めず、おもしろくなかったら途中からでも帰ってきてしまおうということにしていましたので、学校が休みになるのを待っていた私たちは、わりと気楽に出発したのですが……。

 高知から、高松方面へ向かっているときのことでした。
 地図の通りに進んでいるのは確かだったのですが、街を少し抜けたあたりから急に寂しい山道に入り、何とはなしに私たちは不安を感じはじめていました。もう午前0時を過ぎており、外は真っ暗でした。前方を照らすライトの光が、やけに無気味に感じられ、Hさんもまるで何かから逃げるように、その山道に入ってからスピードを上げていました。
 そんなとき、M子が突然「怖いから戻ろうよ」といいだしたのです。今にも泣き出しそうな声でした。そして、そんなM子に困り果てたようにHさんが「もうすぐ町にでるから」と、いった瞬間です。

 いきなり前方のライトの光の輪の中に、フッと白い人影が浮かび上がったのです。

 キーッというものすごい音を立てて車が止まり、私たちは前につんのめりました。犬や猫にしては、あまりにも大きすぎました。それに私自身、あれはまぎれもなく人間に見えたのです。
 どうにも割り切れない不安を感じながら私たちは車を再びスタートさせました。Hさんをはじめ、みんな黙りこくってしまいました。スピードは、前にもまして上がっていました。

 そしてしばらく行くと、また白い人影が現れたのです。でも今度は少し距離があったため、Hさんは急ブレーキをかけることなく、その人影の数メートル手前で車を止めました。ところが、そのとたんです。ライトの中に浮かび上がっていたその白い人影が不意にスッと消えてしまったのです。私たちは、危うくパニックに陥るところでした。

 もちろんHさんは、すぐに車をスタートさせました。車のスピードはますます上がりますが、車内のだれひとりとしてHさんを注意する者はいませんでした。全員がその二度にわたる不可解な出来事を、一刻も早く忘れたがっているようでした。
 もうすぐ町に出ると思っていた道は、さらに山奥へと続いていました。道を間違えようにも、地図によれば、目的地へ向かう道はその1本だけで、間違うはずはないのです。でももう1時間近くも走り続けています。それでもなお、私たちは山の中から抜け出すことができなかったのです。だれもが胸のうちに恐怖をつのらせ、重く押し黙ったまま、ただぼんやりと前方を見つめていました。
 と、突然ライトの中に、また人影が浮かびました。でも今度は、はっきりとそれが女の人であることがわかりました。Hさんは、あわてて車を止めました。あるいは今度も消えてしまうのではと思いましたが、女の人は車が止まっても、後ろ向きのままボーッと立っていました。

 そして、彼女が私たちのほうを振り向いた瞬間でした。
 いきなり前方から、ものすごい光が私たちめがけて差し込んできたのです。

 思わず私たちは目を閉じてうつむきましたが、Hさんだけは、それでもなお女の人を見ようとしたらしいのです。ワーッという、Hさんの悲鳴が聞こえ、驚いた私たちが目を開けると、あの光も、女の人の姿もすでに消えており、Hさんが運転席で気を失っていました。

 私たちの懸命の呼びかけで、ようやくHさんが意識をとりもどしたのは、それから数分後のことでした。Hさんは無言のまますぐに車をスタートさせましたが、しばらく行くとやがて街の灯りが見えました。その灯を見て安心したのか、Hさんがさっきの出来事を私たちに話してくれました。

「光そのものは、少しまぶしいかなという程度でたいしたことはなかったんだけど、驚いたのは、その光の中にあの女の人が、ドロドロ溶けていったんだ。それにあの女の人、ぼくのほうをものすごい血走った目でにらんでいるようだった!」

 あんな出来事があった後でなかったら、きっと私たちもそのHさんの話は信じられなかったでしょう。

 そしてーーそれから約1週間ほど後のことです。
 あのHさんが、突然、失明してしまったという知らせが私たちにもたらされたのです。Hさんの失明が、あの事件に関係しているかどうかは、私たちにはわかりません。でも……⁉

(ムー実話怪談「恐」選集 選=吉田悠軌)


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