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UFO特集 アメリカ空軍公式UFO調査機関「プロジェクト・ブルーブック」の謎/並木伸一郎

1950年代から約20年にわたって「UFO研究」を行った実際の調査機関「プロジェクト・ブルーブック」。現在のアメリカ公式UFO調査に連綿と受け継がれる”未知との闘い”の歴史を、ここにひもといていこう。

文=並木伸一郎+磯部剛喜

ドラマ『プロジェクト・ブルーブック』

 CS放送の「ヒストリーチャンネル」のドラマ『プロジェクト・ブルーブック』が好評だ。制作総指揮が、かの名作映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の監督として知られるロバート・ゼメキスという注目の番組である。2019年にシーズン1が日本でも放送され、すぐに続編が制作決定。2020年6月には日本でもシーズン2が放送開始となる。

「プロジェクト・ブルーブック」とは、過去にアメリカ空軍情報部に設置されたUFO調査機関の暗号名だ。この番組は空軍科学顧問として実際にブルーブックの活動に加わった天体物理学者ジョーゼフ・アレン・ハイネックを主人公に据えた。この点を見ても、従来のUFOドラマとは一線を画している。ただし、同番組はあくまでドラマなので、史実とは異なる“見せ場”や実際とは違う“解釈”があったりするが、そこはいたしかたないところだろう。
 とはいえ、シーズン1ではブルーブックが直面した「ヒル夫妻誘拐事件」「ワシントンUFO乱舞事件」、さらには「ペーパークリップ作戦」やアメリカ軍が画策した軍事作戦といった事案に関する疑惑もテーマになっているので興味深い。そしてシーズン2では本来、ブルーブックが扱っていない「ロズウェル事件」もテーマになっていくという。

 ブルーブックが解散してすでに半世紀がたつが、その活動にはいまだに不透明な部分が少なくない。このドラマが同プロジェクトの秘められた歴史に、どのくらい踏みこんでいくのか大いに期待したいところだ。
 本稿では、アメリカ空軍のUFO調査機関の実態、それに翻弄されながらもUFO現象の真実を追ったハイネック博士の実像を明らかにしていく。併せてブルーブックが“未解明”としたUFO事案も紹介しよう。

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「プロジェクト・ブルーブック」シーズン2 日本初放送!
UFO事件を調査するアレン・ハイネック博士は、隠蔽されたロズウェル事件とエリア51の関係から、UFOの起源に迫っていく……。
第1話 6月28日(日)21:00、29日(月) 5:00放送/各話60分 (全10話)

UFO調査機関誕生と「アーノルド事件」

 1947年6月24日、UFO史上にその名を刻む重大な事件が起きた。「ケネス・アーノルド事件」である(参考)。同日午後2時すぎ、アメリカの実業家ケネス・アーノルドは自家用セスナでワシントン州チェハリスからヤキマに向かって飛び立った。途中、彼は消息不明の海兵隊機の捜索協力を求める無線を傍受した。そして、要請に応じたアーノルドがレーニア山上空約2900メートルの空域に達した午後3時ごろ、事件は起こる。彼の頭上に輝きを放つ9機の飛行物体が出現したのだ。機体は平たい半月のような形で、想像を絶する猛スピードで飛んでいた。急降下と急上昇を繰り返し、やがてジグザグに飛びはじめたそれは、どの飛行機の特徴とも一致しないものだった。

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アーノルドと彼が目撃した謎の物体。

 その後、アーノルドは、当時の様子を「まるで水面をスキップするように飛んでいた。その形は、コーヒーカップの受け皿を向かい合わせに重ねたようだった」と語った。これについては、水面に投げた皿が弾むような飛び方に似ているという表現における言葉を新聞記者がつなぎあわせ、“空飛ぶ皿=フライング・ソーサー”という言葉を創ったという説もある。いずれにせよ。同事件で空飛ぶ円盤の存在は瞬く間に世界に広まる。
 なお、この事件で重要なのは、これ以前に公式のUFO目撃報告がないことだ。それはつまり、アーノルドが前例の影響を受けていないということの証左となる。

 ちなみに、事件はこれで終わりではない。同年7月6日、彼の親友で日刊紙記者のデビッド・ジョンソンも同空域で円盤形物体を目撃した。さらに、付近の飛行場の職員やユナイテッド航空のスミス機長も同様の体験をしている。そう、同事件の真の姿は、未確認飛行物体が短期間に同じ空域に続けて出現し、複数の人間によって目撃されたUFOフラップ(集中目撃)だったのだ。
 このケネス・アーノルド事件をきっかけに、アメリカ各地で謎の飛行物体の目撃騒ぎが頻発し、空軍が多大な関心を示すところとなった。そして、その未知の飛行物体に関する公式調査機関が設置されたのである。

サインからグラッジへーー調査機関の変遷

 1948年1月、オハイオ州ライト・パターソン空軍基地内に、UFO調査機関として「プロジェクト・サイン(前兆)」が設置された。ただし、この名称は長らく秘密にされ、一般には「プロジェクト・ソーサー(円盤機関)」として知られていた。UFO=地球外起源仮説に魅了されたサインのメンバーに強い影響を与えたのは、1948年1月7日に起きた、ケンタッキー州軍航空隊のトーマス・F・マンテル大尉がUFOを追跡中に墜落死を遂げた、いわゆる「マンテル大尉事件」だった。

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マンテル大尉と発見された墜落機体の残骸。

 ついで7月24日深夜、テキサス州ヒューストンからジョージア州アトランタへ向けて飛行していたイースタン航空576便のクラレンス・チャイルズ機長らが、長さ15メートル近い炎を噴射しながら無音のまま飛行する、翼のない葉巻形物体と遭遇した「イースタン航空機事件」
 さらには10月1日午後9時、F15戦闘機での訓練を終えてノースダコタ州ファーゴ空軍基地に帰投中の州兵ジョージ・ゴーマン少尉が小型の発光体を追跡し、約30分近くドッグファイトを展開した「ゴーマンUFO空中戦」といったケースも加わる。

 サインはこうした内外の事例を分析し同年8月、非公式に「状況判断報告書」をまとめ、「円盤はどこかの惑星からやってくる宇宙船である」という説を示したが、これは最高機密とされ、空軍参謀総長ホイト・S・ヴァンデンバーグ大将の元に送られた報告書は「証拠に欠ける」として却下された。
 そして同年12月、空軍がUFO否定声明を出し、サインは解体される。

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「プロジェクト・サイン」のメンバー。

 1948年12月16日、新たに「プロジェクト・グラッジ(怨恨)」が設置されたが、これはUFO否定のためのPR機関に他ならなかった。グラッジには、当時UFO否定論者だったオハイオ州立大学天文学教授兼マクミラン天文台長のジョーゼフ・アレン・ハイネック博士が外部から参画していた。
 1949年8月、グラッジは多数の目撃事件に関して、天文学や心理学、さらには自然現象を加味して分析した結果「そのほとんどが合理的に説明づけられる」とするハイネック博士の手になる否定的な見解が提示された報告書を作成。同年12月に解散した。

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プロジェクト・ブルーブックのメンバーたち。

使命感に燃えた空軍大尉とブルーブックの関わり

 1951年9月、ニュージャージー州フォートマンマス上空で、ジェット練習機のパイロットたちが円盤と遭遇、地上のレーダーにも捕捉されるという事件が発生した。これが契機となってC・P・キャベル空軍情報部長はUFO調査機関の発動を決意した。そして10月27日、ライト・パターソン空軍基地のATIC(航空技術情報センター)長ジャック・ダン大佐に「グラッジ」の再起動を命じたのだ。
 ダン大佐によって、翌1952年3月、ATIC内に「プロジェクト・グラッジ」が再編された。初代機関長には、航空機ミサイル分析部のエドワード・J・ルッペルト大尉が任命される。グラッジは翌1952年3月、独立した特別機関に昇格し、暗号名も「プロジェクト・ブルーブック」と改められた。その正式名称は「空中現象グループ」(Aerial Phenomena Group)である。

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初代機関長となったルッペルト大尉。

 ルッペルト大尉は、円盤をはじめとする正体不明の飛行物体を、「UFO(Unidentified Flying Objects= 未確認飛行物体)」と呼ぶことを提唱。後に正式の空軍用語としたばかりでなく、正式な目撃報告要旨も作成した。大尉は空軍に寄せられたすべての報告を客観的事実と論理から分析し、正体が判明したもの、既知のものである可能性が高いものを除外し、そのほかの報告を「未知=アンノウン」のカテゴリーに入れ、さらにはUFOが肉眼で目撃されると同時にレーダーによっても捕捉された事例は“高質な報告”として分類したのである。さらにUFO事件の科学的な分析研究を重視、著名なシンクタンクである「バッテル記念研究所」に、それを委託した。

 こうした充実した研究体制を確立したルッペルト大尉が機関長に在任中の数年間は、アメリカ空軍におけるUFO研究の黄金期といえた。なお、天文学担当顧問だったハイネック博士は、この時点から最高顧問となっている。

CIAがUFO情報を封殺

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