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大宮氷川神社の「八咫烏」襲来事件と見沼ミステリー/吉田悠軌・オカルト探偵

さいたま市にかつて存在した、巨大な沼地。その跡地でささやかれる怪談には、昭和の凄惨な事件と古き神々の秘密が隠されていた?

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吉田悠軌(よしだゆうき)/怪談サークル「とうもろこしの会」会長、『怪処』編集長。写真は、噂検証のために参拝中の門客人神社にて。

調査依頼① 大宮の「アベック山の幽霊」

 怪異にまつわる悩みや疑問を抱えている人は意外と多いのだろうか。私の「オカルト探偵」なる怪しげな肩書きの下にも、ひょっこり依頼が来たりする。先日は、埼玉県在住の怪談好きの若者、H君から連絡が入ってきた。
 探偵依頼はふたつのスポットにまつわる奇妙な怪談についてで、どちらも大宮エリアに位置していた。
 ひとつ目の依頼は楽なものだった。
アベック山という心霊スポットが埼玉にあるのですが、そこの場所がどうも意見が割れているらしく、わからないのです」
 スポットを特定してほしいという希望がひとつ。また、そこでささやかれている怪談の由来を知りたくもあるらしい。
「どうやら、やけに男女カップルの幽霊を見るという目撃談が多いらしくて。でもその原因が調べてもわからないんですよね」

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(上下)現在は広々とした空き地となっているアベック山周辺。かつては雑木林が茂り、夜は暗闇に包まれていたという。見沼用水の流れだけが当時と変わらぬ姿を残している。

 たとえばH君は、こんな怪談を採集している。

 20年ほど前のある夜、アベック山近くに住んでいる家の玄関が激しく叩かれた。家人がおそるおそるドアを開くと、真っ青な顔の若者がひとり。助けて、助けて、としきりにつぶやいている。何があったか聞いたところ、震える声で次のようなことを語った。
 先ほど、彼は川沿いの道を歩いていた。小川の反対には鬱蒼たる雑木林が茂っており、あたりには街灯もない。ふと気づくと、そんな暗闇の脇に、男女のカップルがうずくまっている。ふたりともかなり具合が悪そうで、無視するのもしのびない。
「大丈夫ですか」
 女性の肩を叩こうとした若者は、そのまま前につんのめった。自分の手が女の体をすり抜けてしまったのだ。なんとか転ぶのをこらえた、その低い姿勢から思わず振り返る。うずくまった男女とちょうど目が合ってしまう。顔も体も血まみれの彼らが、こちらをぼんやり見つめていたという。

「カップルだけが交通事故を起こすなど、他にもいろいろな噂があります。場所としては見沼の自然公園という人も、K町だという人もいるんですが……」
 この依頼の場合、「アベック山」というキーワードが確かだったので、詳細な現場も怪談の由来も、すぐに特定することができた。1963年6月18日夜に起きた「大宮アベック連続殺傷事件」が背景になっていると考えて間違いない。

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アベック山の殺人事件を伝える当時の新聞記事。犯人Sは白い子犬を連れ、首には鎖を巻き、携帯ラジオとジャックナイフを持っているという異様な風体だった(「読売新聞」1963年6月19日朝刊)。

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