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岡山「魔法宮」に祀られるキュウモウは狸か狐か、南蛮の錬金術師か!?/高橋御山人

山陽の山深くに鎮座する、「魔法」を冠する珍しい神社。その祭神は、南蛮船に乗り渡来したという一匹の化け狸だ。自在に火を操ったという不思議な力や「サンヤン」という奇妙な口ぐせから、その意外な正体が見えてきた!

魔法宮に鎮まる化生狸の伝説

 岡山県中央部、吉備中央(きびちゅうおう)町の非常に山深い地に、「魔法宮火雷(まほうぐうほのいかづち)神社」という不思議な名の神社がある。

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岡山県吉備中央町の山深い地に鎮座する、魔法宮火雷(まほうぐうほのいかづち)神社の入口。

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魔法宮火雷神社境内の祠と狸の置物。

 そこには「キュウモウ」という名の狸が祀られており、詳しい由来が江戸時代に書かれた『備前加茂化生狸由来記(びぜんかもけしょうだぬきゆらいき) 』(以下、由来記)という書物に載っている。

 そのあらすじは以下の通りだ。

 戦国時代、南蛮の「合甚尾大王(ごうじんびだいおう)」が悪逆を企み、バテレン(宣教師)を日本に差し向けた。キュウモウは、その船に紛れて渡来した。渡来の目的は「神国」日本を訪ねるためであり、堺を経て、住吉大社へ参拝する。すると、社殿が震動したり大量の松が抜けるなどの異変が起き、朝廷に奏上される。怪異は南蛮による危機を神々が知らせるものとさ
れ、伊勢、春日、八幡の天皇巡拝が決定した。しかし、途中で行幸の車を曳く牛が動かなくなる。
 キュウモウはその牛の故郷を見たくなり、呰部(あざえ)(現在は岡山県真庭市)にやってくる。呰部周辺には岩窟が多数あり、長い年月そこに住んだ。しかしそこにはメスの狸がいなかったので、ムジナと交わって子を作った。
 江戸時代中期、加茂(現在は吉備中央町)の黒杭(くろくい)に銅山が開かれ、茶店や遊郭も作られて、空前の賑わいを見せた。キュウモウは鉱夫に化けてその銅山にやってきて、遊び回った。やがて銅山は閉鎖されたが、その廃坑に住みついた。

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「備前加茂化生狸由来記(びだいおうかもけしょうだぬきゆらいき)」に載る、江戸時代の魔法宮参詣の様子。牛馬を曳く参詣者が多数見られる。(資料提供:岡山県立図書館・電子図書館システム「デジタル岡山大百科」)

キュウモウの災いと魔法宮の創建

 キュウモウは黒杭に来てから、初めは大声でものをいうくらいで、特に悪さをしなかった。時折穴から出てきて、牛に引かせる犂(すき)を鉦(かね)がわり叩き「サンヤンサンヤン」といいながら山の中で遊んだ。しかし、やがて人に化けて人家に入ったり、人の行動をいいふらすといったさまざまな悪事を行うようになる。遊郭に出入りして、木の葉や小石を金に見せるなどして、人々を誑かしもした。
 ある家に、唐団扇(とううちわ)のようなものを置き忘れていったが、それは骨もなく、紙でも皮でもない不思議なもので、解読不可能な文字が書いてあった。家の者がこの唐団扇を隠匿したところ、火をつけられ焼死した。
こうした悪事、変事の原因がキュウモウであることがわかり、村人は退治しようとしたが、それを企んだ者は家に火をつけられたり、病気になったりした。あるとき、キュウモウを退治するため、村人が山に入ったが、深夜になっても見つからなかった。夜明けごろになると夥しい数の注連縄が山に引き渡されており、人々は恐れをなし、魔法宮を建てキュウモウを祀った。社の名は、もともと摩利支天の社が建っていたことに由来する。
 また、キュウモウは鉦を叩きながら、自分は大陸の長者の下に生まれ長い年月を送ったが、日本が神国だと聞いて移住し、敬虔な暮らしをして、善人に寄り添ってきたと語った。だから自分には飢餓も病気もなく、死も知らない。
 命ある限り、牛馬の難を助け、火難盗難を知らせ、善人を助けたい、と。そうして、魔法宮は火難盗難除け、牛馬の守護神として知られるようになり、縁日には多くの人が牛馬を引いて参詣し、大変賑わった。夜には花火が打ち上げられた。

吉備高原に広がる魔法信仰

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