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半人半魚の予言獣たちーー「人魚」の正体に迫る‼/荒俣宏妖怪探偵団

紀州熊野の怪を歩いた妖怪探偵団。彼らは高野山山麓で「人魚」のミイラに出会った。哺乳類のような頭部と2本の腕を持つこの生物を、探偵団の鳥類学者・川上和人は「知能が高い未知なる生物ではないか」と推測した。
人魚とはどんな生物なのか、人々に警告を発す予言獣の正体を、探偵団が検証する!

文=森 一空

鳥類学者・川上和人による人魚の生態考察

 前回(ムー2019年9月号)、熊野への旅でわれら妖怪探偵団は、人魚のミイラと遭遇した。場所は、高野山山麓、和歌山県橋本市の西光寺(さいこうし)にある学文路苅萱堂(かむろかるかやどう)である。
 木箱に納められた人魚は、歯をむき出し驚いたような表情で、両頬あたりに添えるようにして腕を立て、尾を跳ね上げた格好をしている。荒俣団長いうところの人魚の「ムンク型ミイラ」だ。

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学文路苅萱堂に伝わる人魚(苅萱堂西光寺蔵)。

「いやあ、うまくできているね。身近な動物を使って作っているけれど、つくりものとは思えないリアルなミイラになっている」と団長。すると、鳥類が専門の学者、川上和人(かわかみかずと)が団長の見解に異を唱えた。
「いや団長、人魚は実在したんですよ。この標本がその証拠です」
 苅萱堂の人魚は、琵琶湖に注ぐ蒲生川(がもうがわ)で捕らえられたといわれている。
「まず、この標本の人魚の大前提として淡水性、ということがあると思うんですね。そして、他の魚と違うところはどこかというと、前肢があることですよね」と、川上が人魚の体を分析しはじめた。
「もうひとつは、口の位置が先端に付いていないことですね。魚が泳ぐときは、口を先頭にして前に進みますよね。ところが、苅萱堂の人魚の場合は、人間みたいな頭をしているので、泳ぐときには口は下向きになる。だから、獲物を襲うのに口を利用できないタイプだと思うんです」
「おお!」と、一同歓声。話はこれからどこへ進んでいくのか。期待を込めて見つめる団員たちの瞳。
「前肢が進化するための前肢の機能は何があるかというと、ひとつは体を支える支持の役目がある。次に運動のための推進装置、推進モジュールとしての役割。それから、武器。そしてモノを摑む、把握する。モノを扱うマニピュレータの役割がある。この4つだと思うんですよ」
 口から、前肢へ。川上は、野生生物を観察する視点で、この人魚の前肢の機能を検証していく。
「ひとつめの支持ですが、前肢が人魚の体を支えるのに役に立つかというと、たぶん役に立っていない。水中だからその必要もない」
 ではふたつめの推進装置としてはどうだろう。
「この人魚には水かきがありませんよね。水かきがなければ、推進装置にもなりません」だろう。
「たとえばネコ科であるとか、哺乳動物は鋭い爪で引っかいたり払ったり、前肢を武器に使っていますね。この人魚は爪が平爪(ひらづめ)なんですよ。ということは、これを武器に使ってはいないだろう」
 これも形態上の事実の下、却下。苅萱堂の人魚の手は、爪が平爪なので、武器にはなりえない。この人魚の前肢は、いったい何のためにあるのか。
「これはモノを摑むためと考えていいと思うんです。そう思って人魚の手を見ると、ちゃんと拇指対向性(ぼしたいこうせい)がある手をしているんですよね。他の指に対して拇指(親指)が対向しているので、モノを摑めるんです。人魚の手の機能はモノを摑む、です」

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高野山の麓にある学文路苅萱堂。

 川上の解説はまだ続く。そして、形態から見る人魚の生態が明らかにされていく。
「ここでたぶん、この人魚の手と口との関係が出てくると思うんです。小魚など餌を獲るには、口のサイズがあまり大きくない。しかし歯を見ると立派なんです。そして尖っているので、肉食は間違いないだろうということですね」
 見たところ、口も大きく開きそうにない。
「そうです。ほとんどの魚は体の先端に口があって、ガバッと開いて追いかけて獲ることができるんです。この人魚には、その狩りができない。もうひとつの狩猟方法として待ち伏せ型があります。でも、待ち伏せ型も口が大きくなければだめなんですよ。オオサンショウウオみたいにずっと隠れていて、何かがチラッと目の前に来たら、ガバッと吸い込んで食べる。だけど、この口のサイズでは無理です。というわけで、この人魚たちは八方ふさがりになってしまうんですけど」
 膨らんだ期待がしぼんでいく。気を取り直して続きを聞いてみよう。
「この人魚には、もうひとつ特徴があって、脳容量が大きいということなんですよ。非常に頭が大きく発達していて、おそらく脳の容量がすごい。つまり頭がいいと考えられます」

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