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人気者にはハナがあるーー「かさおばけ」百面相/黒史郎・妖怪補遺々々

ホラー小説家にして妖怪研究家・黒史郎が、人々から“忘れ去られた妖怪”を資料から発掘する、それが「妖怪補遺々々」!
今回は、前回に続いて「かさおばけ」を補遺々々します。人気者にはハナがあるものです。

文・絵=黒史郎

なぜ「傘のお化け」なのか

「傘のお化け」は子供向けのコンテンツで扱われることの多いお化けです。
とくに昭和期は児童書、漫画、玩具などでよく、その姿を見かけました。
 絵本の1ページ、漫画の1コマ、映像のワンシーン、駄菓子の包装。お化けがたくさん描かれているその中に、当たり前のように三角の一本足がいるのです。

 でも、疑問に思いませんか? 有名なお化けはたくさんあるのに、なぜ「傘のお化け」なのか。そこは、小豆洗いでも、かまいたちでも、座敷童でもいいはずです。

 この需要の偏りは、メディアによる影響も大きいでしょう。「傘のお化け」は『妖怪百物語』(大映1968年公開)などの特撮映画に登場しており、妖怪ブームの波に乗ってソフビやプラモデルといった商品展開もされ、その後の子供向けコンテンツの「傘のお化け像」にも大きく影響を与えます。映像化は知名度を上げる、よいきっかけとなったはずです。

 江戸時代から、かるたなどの遊具に姿を描かれていた「傘のお化け」は、昭和に入ってからも活躍の場をどんどん広げていき、メディアの後ろ盾がなくとも、「お化けといえば、一本足の傘」といわれてもいいほどの市民権を得ていきます。

 子供向けコンテンツにおける、このお化けの需要の高さの理由とは。
 私は、その見た目・存在の滑稽さにあるのではないかと考えています。

お化けらしいお化け

 昭和に刊行された児童向けの怪奇系書籍に見られる妖怪は、恐ろしい形相のものばかりでした。今のように「子供が見るものだから……」とグロを規制したり、表現を緩くしたりはせず、怖いものは怖いものとして容赦なく叩きつけていたのです。本をめくれば、人間を殺す気満々の魑魅魍魎がひしめいている素敵な時代だったのです。
 そういう時代だからこそ、「傘のお化け」のような、滑稽で無害そうなキャラは目立ったのかもしれません。
 また、傘という道具の「お化けらしさ」も、使われやすい理由のひとつかもしれません。
 〝骨〟だけになって道に棄てられている傘。
 置き忘れられてポツンと残っている傘。
 傘はどこか物悲しいイメージがつきまとう道具です。その悲哀は、「物が化ける」という世界観には大切なものです。粗末に扱われた道具が人を恨んで化けるというのは、非常にわかりやすい「化ける」動機であり、「物を大切にしよう」という教訓にも繋がっていきます。

「傘のお化け」は、『お化けなのにあまりこわくない』――けど『お化けらしいお化け』なのです。

鼻がある傘

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