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上野・御徒町の“電電怪談”/吉田悠軌・怪談解題

この秋、ムー編集部は五反田から上野・御徒町の新オフィスへと移転する。
というわけで、今回は引っ越し直前記念として上野・御徒町の怪談を特集。
震災や幕末動乱期の影を色濃く残すこの地には、今もあの悲劇の一団にまつわる話が眠っている。

文・写真=吉田悠軌 #怪談解題

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吉田悠軌(よしだゆうき)/怪談サークル「とうもろこしの会」会長、『怪処』編集長。今月の一枚は御徒町のシンボル、アメ横看板前にて。

怪談 電話局にあらわれる血まみれの武士

 御徒町の怪談といえば、NTT上野ビルを筆頭にあげるべきだろう。
 幾つもの時代をまたぐ話だが、まず1961(昭和36)年から始めたい。

 電話機の普及にともない、電電公社(現NTT)ビルの拡張工事が行われていた時のこと。現地局員と公社側とで、あるトラブルが発生した。工事の最中、敷地内にあった墓碑が撤去されてしまったのだ。片隅に置かれた、粗末なコンクリートの碑だったので、無用と判断されたのだろう。
「あの墓を壊すなんて、とんでもないことを」
 憤慨した局員たちが、なにも知らないお偉方に事情を説明する。
 この建物の改築は初めてではない。1925(大正14)年、関東大震災で壊れた下谷電話局(当時)の再建工事中、さまざまな異変が起こったというのだ。
 まず基礎工事の際、おびただしい数の白骨や刀の鍔・小柄が発掘される。さらに工事を続けると、作業員たちの事故があいついだ。作業員の振りあげたツルハシが、後ろの同僚の首に突き刺さり即死、足場が崩れて3名の作業員が転落、下にいたものも巻き込まれて重傷などなど……。そうした事故が、きまって毎月「17日」に西南の方向、つまり白骨や刀が掘り出された地点で起きたという。

 怪現象は、建物の完成後さらに拍車がかかった。夜中に宿直していると、どこからともなく馬の蹄の音が聞こえ、窓や扉が勝手に開く。そして武士の格好をした人間が、血まみれの姿で現れるというのだ。
「ひょっとしたらこの土地に、誰かが殺されて埋められているのではないか」
 そんな訴えが多数あがり、局員たちは調査を余儀なくされた。そこで、こんな事情が判明する。

 さらに年月をくだった幕末期、上野戦争の時である。寛永寺一帯、上野の山に集まった彰義隊が、新政府軍によって半日で壊滅させられたのは周知の通り。そんななか、御徒組の武士・藤田重之丞(ふじたしげのじょう)という隊士が寛永寺から逃亡。御徒町の屋敷に、妻(腰元という説も)や家来、愛馬ともども身を潜めていた。しかし2日後の旧暦5月17日、残党狩りへの密告によって、あえなく発見。屋敷ごと火をかけられ、一族郎党、馬までふくめ皆殺しにされたのだという。
 それがちょうど、このビルがたつ場所のようなのだ。となると掘り出された人骨も、彼らのものだったのか。恐怖におののいた局員たちは、人馬を弔うための墓碑を建立。すると怪事はぴたりと収まったらしい。

 ――そんな碑を撤去されたのだから、局員の怒りもむべなるかな。公社側への談判の末、ビル屋上へ墓碑を移転し、事務室内にも仏壇が置かれることに。さらに毎年5月17日には、蓮城寺(現・東上野五丁目)の住職を呼んで慰霊祭が行われる運びとなった。百回忌の1968年には、「藤田家諸霊供養塔」を新たに建立。藤田重之丞と妻ユキ、家来たち、そして愛馬の霊魂は、この通信施設の旧棟屋上に、現在も安置されているのだ。

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NTT上野ビル旧棟の外観。現在はこのビル屋上に藤田重之丞の供養塔が安置されている。

もうひとつの彰義隊士の墓

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