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土蔵に侵入した盗人が遭遇した人影は……/あなたのミステリー体験

海水浴やマリンスポーツ。海ならではの開放的で楽しいひととき。半面、大自然を前に海で命を落とす人たちもいる。
こんなはずじゃなかった……。なぜ自分が……。
成仏できない悲しい魂は今もこれから先もこの海に。

イラストレーション=不二本蒼生


夜の海からゆらゆらと

◆Tさん(36歳)/栃木県

 2年前の夏、僕はつきあっていた彼女のYと、夜の海を見にドライブに出かけました。
 海岸に沿った駐車場に車を入れると、すぐに気持ちのよい波の音と潮の香りがしてきました。ただ、夜の海だというのに、暗い波打ち際のほうから“キャッ、キャッ”という子供のはしゃいだ声が聞こえてきたのです。
 こんな時間に子供がいるなんておかしいとは思いましたが、あまりそういうことをいうとYが怖がるかもしれないと思い、彼女にはそのことには触れずに黙っていました。

 僕たちはふたりで手をつなぎ、だれもいない砂浜に降りていきました。
少しロマンチックな気分になって波打ち際に立ち、どこまでも続く暗い海を黙って見つめていました。
 すると、不意にYがまっすぐに腕を伸ばして海のほうを指さし、「あれ何? 黒いものがふたつ動いているでしょ」
 よく見ると確かに黒い塊……大きな塊と小さな塊のふたつの物体が、海面から浮かびあがるように並んでいます。暗闇のせいで距離ははっきりしませんが、30メートルほど沖にいったところだったと思います。

 ゆらゆらと波に揺れながら、それはゆっくりゆっくりと、こちらに近づいてくるように見えました。

「な、なんなの!?」

 Yが震える声でつぶやきました。直観的にここにいてはマズイと思った僕は、彼女の手を取るとゆっくり後ずさりをして、数歩下がったところで一気に駐車場に向かって駆けだしました。
 車に乗りこむ手前で振りかえってみると、黒いふたつの塊は波打ち際まで来ていました。さっきまで僕たちがいた場所です。
 するとこの塊は次第に形を変え、まるで紙を人型に切りぬいたような影へと変化したのです。

「あんなもの初めて見た! 幽霊なの!? 」
「いや、ちょっと待てよ、あれだけじゃないぞ!!」

 まるで砂の中からわきでたかのように、砂浜のあちこちからいくつもの黒い影が立ちあがり、ゆらゆらと揺れはじめたのです。
 大きいもの、小さいもの、男のようなもの、女のようなもの、老人のようなもの、子供のようなもの……。
 影の集団は揺れながら僕たちのほうへ近づいてきます。

 僕たちはあわてて車に乗りこむと、もと来た道をスピードを上げて戻りました。
 とにかくこの場からできるだけ早く遠くへと逃げなければ。それしかありませんでした。人が見たら何事かと思うほどの必死の形相だったと思います。本当にそれほどに恐ろしかったのです。

 後になって聞いたのですが、僕が最初に聞いた、はしゃぐような子供の声は、実はYにも聞こえていたそうです。こんな時間に子供がいるなんてと思いながら砂浜に降りたときに、子供どころか人影もなかったので不思議だなと思ったのだとか。あの声も黒い影たちと関係していたのでしょうか?
 それにしても僕たちが目撃したあの黒い影はいったい何だったのか。
今、思いだしても身震いするほどの恐怖体験でした。あれ以来、夜の海には近づかないようにしています。 
 あの闇の中に何が棲みついているかわからないのですから……。

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未来の自分からの警告

◆Iさん(52歳)/静岡県

 ドッペルゲンガーという現象をご存じでしょうか。もうひとりの自分自身を目撃したり遭遇すると、もうじき死ぬとか死期が近いなどといわれている都市伝説のひとつです。

 私は現在、教員としてある学校に勤めていますが、これは以前、同じ職場だったT先生がこのドッペルゲンガーに近い体験をしたと話してくれたものです。

 T先生が担任していた生徒にM君という男の子がいました。彼は特に特徴がある子供ではなく、どこにでもいるようなふつうの少年でした。
 そのM君がある日、
「もうひとりの自分を見た! 自分がこちらをじっと見ていた!」
 と、興奮気味に話してきたのです。T先生はもともと心霊現象や非科学的なことは信じていなかったため、「ふ~ん、不思議なものを見たね」と、適当に流してしまいました。
 ところがその2日後、何とM君が亡くなってしまったのです。交差点で彼の乗った自転車が大型ダンプカーに巻きこまれるという不幸な事故でした。担当している生徒の突然の死に、T先生はたいそう落ちこんだそうです。
 それからしばらくして、T先生は自宅で急に胸が苦しくなり、そのまま意識を失って救急車で病院へ運ばれてしまったのです。生死をさまよう重篤な状態。気がつくと何とT先生は自分が幽体離脱をして、上からベッドに横たわるもうひとりの自分を見下ろしていたそうです。

 最初は単なる夢かと思いましたが、周囲であわただしく意識のない自分に救命処置をする医師や看護師たち、泣いている奥さんがはっきりと見え、あまりのリアルさにこれは現実に起こっていることではないかと思いはじめました。
 そして生気のない自分の姿を見ながら、もう自分は助からないかもしれないと悟り、なぜそう思ったかはわからないのですが、“過去の自分にこのことを教えにいって警告しよう”と、思いついたそうです。
 すると次の瞬間、数日前の自宅の洗面所へ移動していたのです。そこではまだ元気な自分が顔を洗っているところでした。
 すぐ目の前にいる自分自身に声をかけましたが、まったく聞こえていない様子です。体に触ろうとしても手が体を通過してしまいます。自分の存在に気づいてもらおうと必死になっていると、過去の自分が何かの気配を感じとったのか、ふっとこちらを見ました。そして目が合い、やっと今の事態を知らせることができると思った瞬間、目の前が真っ暗に。同時に体が重苦しくなり、強烈な胸の痛みを感じました。
 目を開けると、そこは病院のベッドの上。心停止状態に陥ったT先生を、医師が電気ショックによって生還させた瞬間でした。
 心停止は1分程度のことでしたが、幽体離脱は数時間にも感じられたということです。また、数日前の洗面所での出来事はまったく記憶にはなかったようです。

 そんな体験をしたT先生は、その後からは超常現象を信じるようになりました。そして、ドッペルゲンガーというのは、実は未来の自分が、命にかかわる出来事に遭遇したときに過去の自分に警告しに姿を現す現象なのではないかと思うようになりました。
 交通事故で亡くなったM君が見たもうひとりの自分は、やはり事故のことを知らせにきたのでは……と。
 彼の話をもっと真剣に聞いておけばよかったと、大変後悔したそうです。

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盗人を威嚇する霊

◆Fさん(36歳)/石川県

 私は現在、刑務所に収監されています。10代後半から住居に侵入して窃盗を繰りかえしてきた結果です。この体験は、犯罪がらみの中で経験したものなのですが、今現在、罪を償つぐない反省していますので、不愉快になる部分もあるとは思いますがどうかお赦しください。 

 26歳のある夏のことです。その日は昼間も非常に暑かったのですが、真夜中になっても温度が下がらない熱帯夜でした。
 逃走用の車の運転手役の共犯者Aとふたりで、北関東の田園地帯の住宅を走っていました。しばらく行くと、山の麓に田んぼが広がり、ところどころ大きな家が点在している地域に着きました。車が見つからないように山影に停め、Aを車内に待たせて私ひとりで歩きながら今夜のターゲットとなる家を物色。
 時刻は深夜1時すぎ。車も人も通っていません。ふと空を見上げると、雲ひとつなく、大きな満月が出ていました。
 道の先にひときわ大きな家が見えてきました。塀に囲われた立派な門構えの屋敷でした。門をくぐると、広い庭と木造2建ての立派な日本家屋。何より目についたのは、白壁の大きな土蔵です。
 まずはここからと思い、土蔵の引き戸を開けようとしましたが、そこには長方形の巨大南京錠でがっちりロックされていて、どうやっても開きそうにありません。諦めて家屋のほうへ向かい、無施錠になっていた和室の掃きだし窓から侵入。一通り物色して金目の物を盗り、住人に気がつかれないようにそっと外に出ました。
 家の前に鍵付きの自転車があったので、それを拝借してAが待っている車まで戻ろうとしました。

 そのときです。生臭い異様な風が吹いたかと思うと、“ガタン!”と、何かが落ちたような音がしました。
 住人が起きてきたのかとあわてて音のするほうを振りかえると、そこには侵入を諦めた土蔵が。
 そして確かにがっちりとかかっていたはずの南京錠がなぜか外れて斜めにぶら下がっていたのです。しかも、引き戸が30センチほど開いているではありませんか! 
 土蔵までの距離は約7~8メートル。扉の隙間から見える土蔵の中は漆黒の闇のようでしたが、徐々にその闇から“何か”がこちらをじっと見ていることに気がつきました。
 しかもそれは、少しずつ蔵から這はいだしてきたのです。月明かりに照らされたその姿は、長い黒髪に白い着物姿、無表情の青白い顔をした30代くらいの女……。もちろん生者ではありません。
 そして、あまりの恐怖にその場から動けなくなっていた私と目が合った瞬間、目尻と口が“くわっ!”とつりあがり、般若のような顔になったのです。

 その後のことはあまりよく覚えていないのですが、とにかく震える足を何とか動かして自転車に飛びのり、Aの待つ車まで猛スピードで逃げました。

 この話には後日談があります。この日から8か月後、とうとう私は逮捕されました。そして刑事さんにこの家での窃盗と幽霊の話をしたところ、被害者の方に話を聞いてくれたのですが、この家では年老いた夫婦ふたりだけしか住んでいない。ただ、30代で亡くなった娘さんがいたということを教えてくれました。
 そして、「この家を護るために娘が怒って出てくれたのかな」と、つぶやいたそうです。

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小林世征の心霊相談室

 ドッペルゲンガーも幽体離脱もタイムスリップも、私はもとより「ムー」の読者ならよく耳にする話です。ただしTさんの投稿にあるT先生の体験は、とても希有なものであり私は初めて耳にしました。
 知らぬ間に幽体離脱していた……。思いがけずタイムスリップしてしまった……。このような話なら決してめずらしくありません。しかしT先生は生死をさまよう中、"過去の自分にこのことを教えにいって警告しよう"と自分で思い、実際にそれを叶えました。そんなことができる人がこの世にいるんですね。このことに私はとても驚いています。
 T先生はそのときよほど冷静だったのか? 人並み以上に生に執着していたのか? なぜこのようなことができたのか、私にはわかりません。ただT先生がめずらしい体験の持ち主であることだけは断言できます。
 T先生の体験に対し、Fさんの体験は、いってみればよくあるパターンです。亡くなった娘さんが年老いたご両親を窃盗犯から守るため、このような行動に出た。それ以外の何ものでもありません。
 恐怖におののきFさんは猛スピードで逃げだしました。これは正しい判断です。もしも女と対峙したり、強引に土蔵の中に入っていたら……。その後、収監される羽目にはなりましたが、今、命があることが何よりです。


すぐそこにある不思議

私の耳だけに響きわたる凄まじいほどの女の悲鳴
◆Tさん(41歳)/愛知県

 10年ほど前、当時つきあっていた彼女とドライブ旅行へ行ったときの話です。気持ちのよい晴天の下、山道を走っていると、上っているはずなのになぜか下っているような奇妙な感覚がして、30キロほどの低速度で慎重に走ることに。
「ギャーーッ! !」。いきなり聞いたこともないような凄まじい女性の悲鳴が右側の林から響きました。あわてて急ブレーキを踏んで停止。車外に飛びだしましたが、どうしていいかわからずウロウロするばかりです。すると助手席にいた彼女が、「急ブレーキなんか踏んで危ないじゃないの! !」と、かんかんに怒っています。信じられないことに彼女には悲鳴が聞こえていなかったのです。すぐ近くで耳をつんざくほどの絶叫に近い悲鳴。あれが聞こえていないなどありえません。
 3日後、自宅から仕事に向かうために車に乗ろうしたときです。自宅前の林からまたもや、「ギャーーッ! !」と、例の悲鳴が。震えました。あまりの恐怖に、近くのお寺に駆けこみ、手を合わせて祈りました。その後は何も起こっていませんが、あの凄まじい悲鳴は今でも記憶に残っています。
亡くなった愛犬が初七日まで毎夜、私の隣に……
◆Tさん(24歳)/神奈川県

 愛犬のポンはいつも私のベッドの布団の中に入って、私の腕枕で寝ていました。大型犬だったので場所を取りましたが、私の子供時代からずっとそれが当たり前。夏でもしばらくすると暑くなって出ていきますが、とりあえず1回は布団に入ってきます。それがポンのルーティンだったのでしょう。
 大型犬にしては長生きの14歳で天国に行ってしまいましたが、亡くなるその日まで私のベッドで過ごしました。
 ポンがいなくなってから初めての夜、もうあの温もりを感じることができないのかと寂しく思いながらベッドに横になり、電気を消しました。すると掛け布団をトントンと軽く押してくる感覚が。ポンの「布団に入れてください」という鼻でつつく合図とまったく同じ感覚です。私は無意識のまま布団をめくり、「どうぞ」と、ポンを入れてやりました。
 私の腕に頭を乗せ、少しだけ体を丸めます。その重さや触れた温もりは生前とまったく同じでした。この現象は1週間続きました。優しかったポン。
 悲しむ私のためにしばらくいっしょにいてくれたのでしょうね。


(月刊ムー2020年10月号掲載)


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