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禁足地「第六天の森」の怪談/吉田悠軌・怪談解題

無気味なビジョンが浮かぶ部屋、伐採すると祟られる木、凄惨な自殺のあった陸橋。立てつづけに集まった3つの怪談・事件に共通する、あるひとつの地名。それは単なる「偶然」なのだろうか。それとも……。

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吉田悠軌(よしだゆうき)/怪談サークル「とうもろこしの会」会長、『怪処』編集長。写真は、移転させられた大六天橋の大六天社前にて。

怪談一 新居の和室で浮かぶイメージ

 5年前、真矢さんは娘の出産を機に、新宿区のとあるマンションに引っ越した。2LDKで12万円。地域相場にしては手ごろな家賃だ。

「ところが住みはじめたら、毎日ずっと物音や気配がすごくて……」

 だれかが玄関から入ってくる。夫が帰宅したのかとリビングで待つが、それは和室に入っていく。なんだろうと確認しても、廊下にも和室にも人の姿はない。そんなことがよく起こった。
 どこからか男の声が聞こえることもたびたびだ。「だれかしゃべってるよね?」夫も聞こえているようだが、やはり音の出所は不明。
 数か月たつと、和室に入るたび、脳内にあるイメージがわくようになった。和室の畳は、なぜか真ん中の一畳だけがぐにゃぐにゃと柔らかいのだが、その畳の上に男がいるという映像だ。

「また備品も次々に壊れて。窓ガラス、換気扇、給湯器、インターホン、洗面台の鏡……ひと通りダメになりましたね」

 傍から聞けば立派なお化け屋敷だ。私ならすぐ逃げ出すが、当時の真矢さんは自分でも不思議なほど、それら怪現象を気にしていなかった。

 ようやく危機感を持ったのは、娘がケガをするようになったからだ。まだ乳幼児なのに、2、3日に一回の割合で切り傷をつくる。しかもすべて、顔面に。それが10回以上続いた。

「子どもが顔をケガするってのは、ひどく縁起が悪いのよ」

 心配した母親から、よく当たるという「方位学の先生」を紹介された。
 真矢さんが相談にいったところ、先生は何も話さないうちに、家の間取り図にぴたりと指をあてて。
「この和室。ひどいわね。何がいるかはいいたくないし、いわないほうがいいだろうけど。とにかく、ひどいわね」
 その瞬間、「あっ」と真矢さんは声を上げた。毎日、和室に入るたび浮かぶイメージがくっきり脳内に結ばれる。と同時に、また別のことにも気がついた。

 ―—なんで自分は今まで、こんな光景を思い浮かべても平気でいられたんだ?

 ぐにゃぐにゃの畳の上で、男が首をつっている。男の体は腐って溶けて、黒い体液が畳へとしたたり落ちている。

「え、それって男の人ですか」「そう、男が宙に浮かんで」「はい、首をつって」「もう体が崩れているでしょう」

 先生と自分が同じイメージを共有しているのは間違いないようだ。ただ先生はそこで、驚きの目をこちらに向けてきた。

「あなた……それが見えてるのに、家に帰れるんですか?」
 確かに、もう無理だった。
「旦那を説得して、すぐ引っ越しました。でも不動産店やマンションの住人に聞いても、あの部屋では人が死んでないらしいのですが……」

 そこが事故物件でないとしても、建築に使っている木材で、過去に首つりがあったかもしれない。その念が残っていたのでは……先生からは、そういわれたそうだ。

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新宿の六天坂。かつて坂上にあった第六天の祠は、現在坂下に移されている(写真下)。

祟りなす強力な神「第六天魔王」とは

 新型コロナ流行という時節柄、私も家から出られない日々が続いていた。まあ、日本中こぞって外出自粛中なので、怪談の電話取材をしやすい期間ではあったのだが。真矢さんの体験談も、その中のひとつである。

 自分も新宿在住なので、当該マンションはよく前を通り過ぎており、近所の様子もよく知っている。マンションの近くには「六天坂」という第六天魔王の社を祀っていたことが由来の坂がある。そして、その祠はいつしか坂上から坂下へと「移転」させられていた。第六天魔王は、しばしば祟りをなす強力な存在とみられており、それにまつわるような怪談を、私は他にもいくつか取材している。
 いや、これはただの「偶然」だろう。この体験を「第六天の社を移した祟り」と結びつけるのは牽強付会に過ぎる。私がすべき作業は、怪異の因果関係を特定することではない。あくまで、その周辺の事情を調査し列挙するだけだ。

 ところが、この取材直後、なんとも興味深い現象が起きた。
 すぐ翌日のこと。私はまた別の人物からも「第六天の社を移した祟り」にまつわる話を聞いてしまったのである。これも、ただの「偶然」なのだろうか。

怪談二 ふたつの第六天の森

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