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深淵より突き立つ原始の陰力「三叉矛」/秘教シンボル事典

占術や魔術、神智学で用いられるシンボルを解説。今回は、ネプチューンやシヴァの持物としておなじみの「三叉矛」です。

文=松田アフラ

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ネプトゥヌス(ネプチューン、ポセイドン)が持つ三つ又の矛は、古代の海神の力を象徴する。

 三叉矛とは、その名の通り3つ叉の矛で、英語では trident である。この語はラテン語の tridens に由来しており、語源的には「3つの歯」を意味する。この形態の銛は古くから魚を突き刺すための漁具として用いられて来たもので、そのために海神ネプトゥヌスの持物とされていた。宗教学者ミルチア・エリアーデによれば、この形は元来、海獣の歯を表していたという。
 キリスト教ではこの三叉矛はサタンの持物ともされるが、それはおそらくキリスト教の悪魔が元来は落魄の古代神であったこととともに、三叉矛の形そのものが十字架を捻じ曲げたものであると解釈されたためであろう。
 インドでは、三叉矛は「トリシューラ(3本の槍)」と呼ばれ、破壊神シヴァの持物とされる。この場合、それぞれの矛はシヴァの持つ3つの機能である創造・持続・破壊、あるいは彼のシャクティ(性力)である欲望・行動・知恵を表す。また、左右の矛の先端がシヴァの左右の目、そして中央の先端は「第3の目」に対応しているという説もある。そこでシヴァ神の崇拝者たちは、自らの額に三叉矛の印を描いた。

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シヴァも3つの力を融合させたトリシューラを持つ姿で知られる。

 古代ローマでは「レティアリウス(網闘士)」と呼ばれる剣奴が漁網と三叉矛を武器として剣闘士と戦ったが、これは象徴的にいえば古代の海神、冥界神、深淵神の系統に連なる三叉矛と、英雄的な太陽神を表す剣との戦いであり、神界における新旧の神々の闘争を暗示している。
 ネプトゥヌスは無意識と罪の神であり、その支配領域は怪物や原始生命の住処である。ゆえに三叉矛は三位一体の地獄的な照応物ともなり、ケルベロスの3つの頭やヘカテの三相とも対応している。バーバラ・ウォーカーはこのヘカテとの対応に注目し、三叉矛は「三相一体の女神と交合するのがその務めであるすべての神が誇示する3本の男根を象徴する」と述べている。
 いずれにせよ三叉矛は無意識の中の原始的な、制禦不能な荒々しいエネルギーと深い繋がりを持つシンボルであるといえよう。

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三相一体のヘカテ。姿を変える女性に対応する男性性のシンボルが三叉矛ともいわれる。
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