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「かえる女性」/読者のミステリー体験

「ムー」最初期から現在まで続く読者投稿ページ「ミステリー体験」。長い歴史の中から選ばれた作品をここに紹介する。

選=吉田悠軌

かえる女性

秋田県/佐藤紫穂(13歳)

 その日、私は学校で友人と時間を忘れるほど夢中になって遊んでいたため、帰るのがいつになく遅くなってしまいました。ひとりで帰ることには慣れていましたが、その日のように遅い時間には、それまで一度もその帰り道を通ったことはありませんでした。昼間でも人通りが少なく、電灯も途中にふたつくらいしかない淋しい道でした。自然、私の足は速くなりました。

 そのとき、私の目に、少し前を歩いていく女の人が見えました。白いワンピースに、黒いハンドバッグを持った髪の長い女の人でした。おつとめ帰りのOLといった感じの人でした。私は、知らない人でも一緒のほうが怖くないと思い、その人に声をかけようと走っていきました。

 ところが、あと少しでその人に追いつくというところで、その人が、私の目の前からスーッと消えてしまったのです。私は驚き、あわてて、あたりを見回しました。すると、私から少し離れたうしろのほうに、その人が立っていました。私は、不思議に思いながらも、あらためて声をかけようと、近づきました。

 その瞬間、私は思わず悲鳴をあげそうになりました。なんとその女の人には片方の腕がなく、しかもあちこちから血を流していたのです。白いワンピースは血に染まり、顔は、無残に崩れかけていました。肩や胸の肉が、皮膚と一緒にズルズルと落ちていくのが見えました。

 私はその場で飛び上がり、とっさに逃げ出しました。うしろを振り返る勇気など、とてもありません。あと少しで、その細い暗い道が終わるというところまで、私は夢中で走りました。

 と、そんな私の目の前に、ドサッと何かが落ちました。思わず足を止め、見ると、それは何と人の腕でした。真っ赤な血に染まり、まだ人の体についているように、指だけがピクピクと動いています。

 私は、悲鳴を上げ、その場から猛烈な勢いで走って逃げ、どこをどう通ったのかわかりませんが、ともかく気がついたら家に飛び込んでいたという状況でした。

 家族は、そんな私の姿に驚き、いろいろと理由を聞かれましたが、私のいうことは、だれも信じてくれませんでした。その夜、私は早々と布団に入りました。部屋の明かりをつけっぱなしにしておきました。眠れないだろうと思っていたのです。それでも疲れていたせいか、いつの間にかうとうと眠ってしまったようでした。

 そして、夜中にふと目を覚ましました。部屋の電気は消えていました。私は、母が消してくれたのだろうと思い、起きて電気をつけようと思いました。

 と、……体がピクリとも動きません。金縛りです。
 とたんに布団が急にググッと重く感じられました。見ると、ちょうど腹のあたりにだれかが乗っています。

 ……あの女の人でした。

 肉の崩れた顔に目はなく、それでもなお足などからは、肉がズルズルと落ちています。
 私は、声を上げたかったのですが、その声が出ません。
 結局、明け方近くになって、その人がついには骨だけになって消えるまで、私はただ必死に布団の中でもがきつづけるしかありませんでした。

 翌朝、私は懸命に、昨夜から今朝までのことを両親に説明し、なんとかわかってもらいました。そして父と一緒に近くのお寺に行って、おはらいをしてもらい、お札をもらってきました。

 その結果でしょうか、翌日の朝、何気なく自分の部屋の窓を開けようとすると、その窓ガラスに、外側から〝かえる〞という文字が書いてあるのを見つけました。以来、あの女の人は現れません。自分の帰るべきところに帰ったのでしょうか⁉


(ムー実話怪談「恐」選集 選=吉田悠軌)


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