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「天井板」/読者のミステリー体験

「ムー」最初期から現在まで続く読者投稿ページ「ミステリー体験」。長い歴史の中から選ばれた作品をここに紹介する。

選=吉田悠軌

天井板

神奈川県/緑川正明(19歳)

 5年ほど前、祖父が他界するまでの約1か月間の出来事です。

 祖父はパーキンソン病で寝たきりの生活をしていました。
 ある日、祖父が私を呼ぶので行ってみると、いきなり「お前は、おれが死んだらどうする?」と聞かれました。
 私は両親の都合で、祖父の家の養子になっていました。そこで、母のほうに行くしかないんじゃないかと答えると、祖父は「そうか」と、ひとこといって眠ってしまいました。それまで寝たきりであっても、まだまだ元気だった祖父に変化が起きはじめたのは、その日からでした。

 それから3日後の、深夜2時ごろでした。祖父が大声で呼ぶので行ってみると、豆電球ひとつの部屋で祖父がソファーに座り、「ベッドに寝かせてくれ」というのです。祖父はひとりでは起き上がることもできないはずです。不思議に思いながらも私は何もいわず、ソファーから祖父を抱き上げてベッドに寝かせました。

 次の夜も、やはり2時ごろ、私は祖父の大声で呼ばれました。行ってみると、祖父が薄暗い部屋で天井を指さし、「そこにだれかいる!」というのです。 
 見ると、ちょうど祖父のベッドの真上の天井板が50センチほど開き、真っ暗な屋根裏をのぞかせていました。祖父は、見知らぬ男が天井板を外し、そこからのぞき込んでいたというのです。すぐに屋根裏を調べてみましたが、人が入った形跡などまったくなく、私は祖父に安心するようにいって天井板を直して、その夜は寝ました。

 ところが次の夜また2時ごろ、悲鳴に近い声で祖父が私を呼んだのです。行くと、恐怖にひきつった顔で祖父が天井を指さしています。それを見て、さすがに私も今度は驚きました。昨夜、確かにきちんと直したはずの天井板が、また開いていたのです。

 祖父は、そこから男が上半身を出して逆さまにぶらさがり、自分を見ているといいます。もちろん私の目には何も見えません。祖父は、しかし「そこにいる、気をつけろ!」と叫び続けます。あまりいうので、私がそのぽっかり穴をあけた天井の下を手で払ってみせ、だれもいないといい聞かせると、祖父は、私が手を伸ばしたときに消えたといいます。

 私は、天井を閉め、自分の部屋に戻りました。が、その夜はやはり眠れませんでした。それから数日間、同じようなことが続きました。そのたびに天井板が開かれ、私が直しました。

 そして、そんなある夜です。
 やはり祖父に呼ばれて行くと、いつものように天井が開いていたのですが、祖父はベッドの横の押し入れを指さして、その中に背の低い女がひとりと背の高い女がふたり入っていったというのです。その3人は天井から現れ、祖父を連れていこうとしたそうです。そして祖父が私を呼ぶと、そこへ入っていったとのことです。

 私は押し入れを開いて、祖父に見せました。中にはギッシリと物が詰まっていて、まさに猫の子一匹、入る余地はありません。が、それでも祖父は、確かに3人の女が中に入ったといいはるのでした。

 翌日、母に電話して祖父のことを話すと、母は大変驚いていました。

 私がまだ3歳ぐらいのころだったそうですが、私には曽祖母にあたる人が、今の祖父が寝ているのと同じ部屋で、まったく同じ体験をしたというのです。そして、そんなことがあって、何日もしないうちに他界したと……。祖父の容態が急に悪化して、ついに入院することになったのは、それから7日ほど後のことでした。

 祖父が入院している間も、天井は閉めても閉めても気がつくと開いていました。しかし――10日ほどすぎた朝、母から祖父の死を知らされて以来、天井は開かなくなりました。


(ムー実話怪談「恐」選集 選=吉田悠軌)


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